映画/アニメ:アジア系キャラクターの「紫のメッシュ」が意味するもの

【この記事のキーワード】

日中韓俳優のハリウッド進出

 ツイート主 @nerdyasians はアジア系の男性のようだが、13人のキャラクターは彼が観た作品の中で印象に残った「メッシュのアジア系女性キャラクター」だろう。したがって興行成績や認知度調査に基づくものではないが、多くのアメリカ人に知られる人気作、有名作が並んでいる。

 上記はその13キャラクターを年代順に並べている。すると2018年公開のハリウッド最新作、しかも大作の2本『デッドプール2』『パシフィック・リム:アップライジング』にアジア系アメリカ人ではなく、日本人の忽那汐里と菊池凛子が出演しているではないか。もっとも、忽那汐里は日系オーストラリア人転じてのオーストラリア系日本人ではあるが(日本の法に従って豪州籍を放棄し、現在は日本国籍のみ)。

 数年遡ると中国人のファン・ビンビン、日本人の福島リラ、韓国人のペ・ドゥナの名もある。他には韓国系アメリカ人、インドネシア系アメリカ人、カンボジア系カナダ人、フィリピン生まれの日/中/フランス系アメリカ人などが並ぶ。

 2010年以前を見ると、アジア系キャラクターの吹替を白人声優がおこなっている。テレビアニメの声優は同じ番組内の複数のキャラクターを、人種を問わずに担当することが多い。しかし、つい先日、『シンプソンズ』のインド人キャラクター、アプーを白人声優がステレオタイプに演じていたことが大きな批判を呼び、現在、声優はアプー役の降板を希望している(*)。

(*)炎上『シンプソンズ』のインド人キャラクター・アプー:「ステレオタイプ」vs.「人種差別」 

 2000年の劇場アニメ『タイタンA.E.』では、アキーマ・クニモトという日系キャラクターを有名な白人女優のドリュー・バリモアが吹き替えている。このパターンは近年のハリウッドではすでにタブーとなっている。

ユニークな背景を持つアジア系俳優

 女優や声優たちのバイオを読むと、彼女たちの半生が非常にユニークなことに気付く。

 ジェナ・アウシュコウィッツは韓国生まれだが、生後間もなくアメリカ人夫婦の養子となっている。アウシュコウィッツが『グリー』で演じたティナ・コーエン=チャンも同様に養子という設定。アウシュコウィッツ、コーエン、共にユダヤ系の名字であり、ジェナ自身と役柄のバックグラウンドを合致させてあるのだ。

 エレン・ウォンはカナダの女優だが、両親はカンボジアからカナダに移住した中国系カンボジア人。両親の移住時期は不明ながら、エレンが1985年生まれであることから、カンボジアで圧政と大虐殺がおこなわれたクメール・ルージュ時代(1968-1996)に難を逃れての移住だったのではないかと思われる。

 カナダで生まれ育ったエレンは成人後にカンボジアを訪れ、カンボジア系としてのアイデンティティを強めたと言う。2017年に出演したネットフリックスのドラマ『GLOW』に、エレン演じる女性レスラー、ジェニー・チェイが白人男性から「オリエンタル」と呼ばれ、「私はカンボジア系だ」と言い返すシーンがある。

 メイ(メイリン)・メランソンは日/中とフランスのミックスであること、アジア諸国と欧州で育ち、アメリカを基盤に活動していることから幅広い役柄を演じている。

 最も驚くべきバックグラウンドを持つのは、アメリカの女優/声優のタニア・グナディだろう。インドネシア生まれだが、高校時代に米国の「グリーンカード(永住権)宝くじ」に当選(*)。アメリカ移住後、まず無料の英会話スクールに通い、その後に大学に進んでいる。

(*)「永住権宝クジ」はテロリストの輸入?〜移民国家アメリカの危機を招くトランプの強硬策

 大学では会計士の勉強をしながら演技も開始。会計士の試験当日、試験会場を途中で抜け出してディズニー・チャンネルのオーディションを受け、見事合格。飛び抜けた語学の才能があったと見え、この時点で英語の訛りはまったく無くなっていた。以後、俳優/声優として活躍している。

 タニアは公立高校を舞台としたドラマ『ボストン・パブリック』(2000-2004)に生徒役で出演した際、脚本ではベトナム移民だったものをインドネシア移民に変更している。不法移民として苦労する生徒を演じ、その家族や同胞移民も出演する筋書きだったがインドネシア系俳優がほとんどおらず、タニアは実の家族や知人のインドネシア料理店の店員などを総動員したと言う。

「その日本語、ヘンですが?」

 近年、アメリカの映画やドラマにアジア系の役が増えているとはいえ、全体数からみるとまだ少ない。また、東アジア人、東南アジア人は外観が似ている。そのため日本人役を中国系アメリカ人の俳優が演じるなど、実際のオリジンと役のオリジンが一致しないことがある。すでにアメリカナイズされたキャラクターなら問題ないが、アジア系キャラクターは移民の設定であることも少なくない。祖国の文化を保ち、とくに母国語や母国語訛りの英語を話す移民役を他国系の俳優が演じると、これはまったくもって悲惨なことになる。

 そもそも東アジアと東南アジア、合わせて17カ国あるにもかかわらず、常に「アジア系」と十把一絡げにされることに不満もある。それは演じる俳優だけでなく、アジア系の視聴者も同様だ。

 つまり「アジア系の女性キャラクターの紫のメッシュ」に不満の声が上がり続けるのも、「アジアを全部一緒にするな」――これが理由なのである。
(堂本かおる)

1 2

「映画/アニメ:アジア系キャラクターの「紫のメッシュ」が意味するもの」のページです。などの最新ニュースは現代を思案するWezzy(ウェジー)で。