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ずさんなデータに基づいた「働き方改革関連法案」が可決 法案の是非を問う以前の行政機関

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Thinkstock/Photo by grinvalds

 安倍政権が今期の通常国会の重要法案としていた「働き方改革関連法案」が、今月31日に衆議院本会議で採決された。自民党、公明党の他、日本の維新の党、希望の党などによる賛成多数で可決し、64日には参議院に審議入りされている。働き方改革関連法案とは、「雇用対策法」「労働基準法」「労働時間等設定改善法」「労働安全衛生法」「じん肺法」「パートタイム労働法」「労働契約法」「労働者派遣法」の8本の労働法の改正に関する法案の通称のこと。関連法案の中でも特に注目されているのが、労働基準法が定める「裁量労働制」に関する改正について、だ。

 日本では、8時間を超えた労働に対しては残業代を支払うことが義務付けられているが、裁量労働制の場合、8時間を超える労働にも8時間分の賃金の支払いでよい、としている。現状では裁量労働制を取れる対象は「専門業務型」と「企画業務型」に限定されているが、改正案は「企画業務型」の対象を拡げるものになっている。

 しかし、拡大対象は「高度な専門知識を必要とする業務」とされているものの、範囲や対象が具体的には示されておらず、曖昧だ。また法案成立後に、さらなる拡大の懸念もなされており、「働かせ放題になるのでは」「過労死を助長させる」といった批判が起きていた。

 その上、今年129日に安倍首相が「裁量労働制のほうが働く時間が短いとするデータがある」という答弁に対し、根拠とされていた「平成25年度労働時間等総合実態調査」に様々な問題点があることが判明する。

 はじめは調査内容や方法の問題点が指摘されていたのだが、野党が答弁とデータの内容が一致しないことを指摘。さらにデータにもおかしな点が多数あることが発覚し、政府側はデータの精査をすると答えていた。

 厚生労働省は323日に、データの裁量労働制に関する部分の撤回を表明をするが、さらに改めて精査した結果、すべてのデータのうち約2割を削除することを今月15日に公表。しかし25日に再び、野党の指摘を受け、6つの事業所のデータについて、外部機関に集計を委託する際に、原票だけでなくコピーも渡してしまったために二重に集計していたことを厚労省が認めた。

 30日には、「原票ではなく、(いくらでも修正することが可能な)コピーに基づいて集計するのは、調査のきほんの『き』がなっていない」と批判し、コピーがどのくらい存在するのか等の質問をした立憲民主党の尾辻かな子議員に対し、政府は回答をはぐらかし、精査の必要はないと考えていた。

 法案の根拠ともなっていた調査がずさんであったこと、そして次々に問題点が指摘されている調査の精査もしない。財務省が森友学園の決算文書の改ざんを認めるなどしたばかりであるにもかかわらず、である。そんな状況で、法案を採決するのは、法案の是非や中身を議論する以前の、行政・立法機関の問題ではないか。

 長時間労働の抑制など、働き方改革関連法案には裁量労働制以外の重要な法案も含まれている。64日には参議院に審議入りするとされているが、行政機関としてのきほんの「き」を果たしてもらいたい。

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