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リオネル・メッシが“天才”を否定する理由

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写真:AP/アフロ

 リオネル・メッシは、2018FIFAワールドカップ ロシア大会を「最後のチャンス」だと見立てているようだ。326日付けのスペイン紙「マルカ」は、メッシが大会後にアルゼンチン代表の引退を示唆する内容を伝えていた。現在、メッシの年齢は30歳。W杯開催期間中に31歳の誕生日を迎える。所属するFCバルセロナで、数々のタイトルをとってきたメッシだが、W杯ではいまだ優勝トロフィーを掲げていない。

 メッシはサッカー界の歴史を彩るスーパースターのひとりだ。しかし、その歩みは決して順風満帆だったわけではない。メッシが残した名言からは、彼が決して生まれながらのスーパースターではないことがわかる。彼が発する言葉は、誰もが抱える悩みや苦難にいつも勇気と希望を与えてくれる。

「乗るべき列車は一度しか通らない」

 メッシは、アスリートとして決して恵まれた体を持ち合わせていたわけではない。FCバルセロナが発表している、メッシの身長は170cm。プロのサッカー選手としては小柄な部類だ。これには理由がある。メッシは、母国アルゼンチンで5歳からサッカーを始めていたが、10歳の頃、成長ホルモン欠乏症により、治療なしでは低身長のままであることが判明した。所属していた地元のクラブでは高額の治療費を工面できず、アルゼンチンの名門リバー・プレートへ移籍することもかなわなかった。

 メッシに転機が訪れたのは13歳のとき。メッシは、スペインリーグのFCバルセロナの入団テストを受けた。当時の監督カルロス・レシャックは、メッシの類まれな素質を見抜き、すぐさま契約に結びつけたという。FCバルセロナが提示した条件には、バルセロナへの移住と、治療費の全額負担が入っていた。そこで、メッシがアルゼンチンを発つときに残した言葉が「乗るべき列車は一度しか通らない」だった。

 「乗るべき列車」とは、チャンスのことだろう。本物のチャンスが自分の前にくるのは一度しかない、という意味だ。その頃のメッシがどのような気持ちであったのかは、想像の域を出ないが、将来に対する不安も少なからずあったはずだ。13歳のメッシの身長は143cm。治療によって、プロサッカーの世界で耐えうる体格を手に入れる保証はなかった。メッシの言葉には、必ずチャンスをつかんでやるという強い意志がうかがえる。おそらく、メッシは帰りの列車のことは、まったく考えていなかったと思う。

「努力すれば報われる? そうじゃないだろ。報われるまで努力するんだ」

 メッシがFCバルセロナで公式戦初ゴールを決めたのは17歳のときだった。これは当時のクラブ史上最年少得点記録である。その後の活躍は華々しいものだ。スペインリーグでの優勝9回、得点王5回。欧州クラブチームのNo.1を決めるUEFAチャンピオンズリーグでは、優勝5回に、得点王5回。ヨーロッパの年間最優秀選手に贈られるバロンドールを5度受賞。これは、クリスティアーノ・ロナウドと並んで、歴代最多である。また、アルゼンチン代表として同国通算最多の61ゴールを決めている。2008年北京オリンピックでは金メダルに輝いた。

 そんなメッシに対して、ファンだけでなくサッカー関係者までもが「天才」と呼んでいる。当然だろう。メッシは記録にも、記憶にも残る、21世紀のスーパープレイヤーだ。そんな周囲に向けて、メッシが語った言葉が「努力すれば報われる? そうじゃないだろ。報われるまで努力するんだ」だった。メッシは、報われない努力を否定しているのではない。常人離れしたプレーを支えているのは、日々のたゆまぬ努力であることを伝えたかったのだろう。努力なくして、今のメッシは存在していなかったと。

「僕は生まれながらの天才じゃない。努力の人間なんだ」

 また、メッシは、このような言葉も残している。「僕は生まれながらの天才じゃない。努力の人間なんだ」。努力を積み重ねたからといって、誰もがメッシになれるわけではない。ただ、現在のメッシを形づくっているのは、昨日の自分を乗り越えるトレーニングを繰り返してきた賜物だ。人間は弱い生き物である。つい、自分への言い訳を考えたり、自分を甘やかすような環境に置きたがるものだ。それが、普通の人間である。メッシの言葉は、安易な方向に流れていきがちな、普通の人たちに強いメッセージ性をもって響いてくる。

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