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2018FIFAワールドカップ ロシア大会の開幕がすぐそこに迫っている。まずはグループリーグを突破することが、日本代表チームの目標だ。日本が入ったのはグループH。コロンビア、セネガル、ポーランドと戦う。グループリーグを勝ち抜けるのは2チームだ。日本は決勝トーナメントに進出できるのか? 過去のFIFAワールドカップを振り返り、その可能性を探った。
日本の現状を知るには、国際サッカー連盟(FIFA)が発表している国別のランキングが手っ取り早い。5月17日に出されたランキングで、日本は前々回(2018年3月)よりも5つ順位を落とした前回同様、60位となっている。
ロシアW杯に出場する国の現在のFIFAランキングは、次の通りになる。
1位 ドイツ(グループF)
2位 ブラジル(グループE)
3位 ベルギー(グループG)
4位 ポルトガル(グループB)
5位 アルゼンチン(グループD)
6位 スイス(グループE)
7位 フランス(グループC)
8位 スペイン(グループB)
10位 ポーランド(グループH)
11位 ペルー(グループC)
12位 デンマーク(グループC)
13位 イングランド(グループG)
14位 チュニジア(グループG)
15位 メキシコ(グループF)
16位 コロンビア(グループH)
17位 ウルグアイ(グループA)
18位 クロアチア(グループD)
22位 アイスランド(グループD)
23位 スウェーデン(グループF)
25位 コスタリカ(グループE)
28位 セネガル(グループH)
35位 セルビア(グループE)
36位 イラン(グループB)
40位 オーストラリア(グループC)
42位 モロッコ(グループB)
46位 エジプト(グループA)
47位 ナイジェリア(グループD)
55位 パナマ(グループG)
60位 日本(グループH)
61位 韓国(グループF)
66位 ロシア(グループA)
67位 サウジアラビア(グループA)
この順位だけを見ると、日本の勝ち上がりは厳しいように感じられる。でも、諦めてはいけない。ランキング上位国がW杯のグループリーグを突破できるかどうかは別の話だ。ロシアがこの順位(66位)になっているのは、今回のW杯開催国であり、W杯地区予選を戦っていないせいもある。FIFAランキングでは、試合の重要度が定められており、大きな大会での勝敗が順位に影響しやすくなっている。
過去3大会で、ランキング下位国ながらベスト16入りを果たした国を見てみよう。FIFAランキングは大会直前の順位だ。なお、2006年7月にFIFAランキングの算出方法が変更されている。その影響も少なからずあり、それ以降のW杯では、グループリーグ突破をしているランキング下位国が毎回存在しているのだ。
▼2014FIFAワールドカップ ブラジル大会
グループA
1位 ブラジル(FIFA3位)
2位 メキシコ(FIFA20位)
グループB
1位 オランダ(FIFA15位)
2位 チリ(FIFA14位)
グループC
1位 コロンビア(FIFA8位)
2位 ギリシャ(FIFA12位)
グループD
1位 コスタリカ(FIFA28位)
2位 ウルグアイ(FIFA7位)
グループE
1位 フランス(FIFA17位)
2位 スイス(FIFA6位)
グループF
1位 アルゼンチン(FIFA5位)
2位 ナイジェリア(FIFA44位)
グループG
1位 ドイツ(FIFA2位)
2位 アメリカ(FIFA13位)
グループH
1位 ベルギー(FIFA11位)
2位 アルジェリア(FIFA22位)
グループFのナイジェリア(FIFA44位)は、初戦のイラン(FIFA43位)とスコアレスドローで引き分けるも、ボスニア・ヘルツェゴビナ(FIFA21位)では1-0の勝利をおさめ、アルゼンチン(FIFA5位)には負けたが、勝ち点4でグループを2位通過した。
▼2010FIFAワールドカップ 南アフリカ大会
グループA
1位 ウルグアイ(FIFA16位)
2位 メキシコ(FIFA17位)
グループB
1位 アルゼンチン(FIFA7位)
2位 韓国(FIFA47位)
グループC
1位 アメリカ(FIFA14位)
2位 イングランド(FIFA8位)
グループD
1位 ドイツ(FIFA6位)
2位 ガーナ(FIFA32位)
グループE
1位 オランダ(FIFA4位)
2位 日本(FIFA45位)
グループF
1位 パラグアイ(FIFA31位)
2位 スロバキア(FIFA34位)
グループG
1位 ブラジル(FIFA1位)
2位 ポルトガル(FIFA3位)
グループH
1位 スペイン(FIFA2位)
2位 チリ(FIFA18位)
グループBの韓国(FIFA47位)は、初戦のギリシャ(FIFA13位)に2-0で完勝。前半7分の先制ゴールがきいた結果となった。アルゼンチン(FIFA7位)には完敗したが、最終戦のナイジェリア(FIFA21位)に引き分けて勝ち点4で2位通過した。
グループEの日本(FIFA45位)は、初戦のカメルーン(FIFA19位)に1-0で勝利。ゴールを決めたのは本田圭佑だった。準優勝したオランダ(FIFA4位)に惜敗したものの、デンマーク(FIFA36位)には3-1で勝利。勝ち点6でグループリーグを突破した。
最も混戦となったのがグループFだった。パラグアイ(FIFA31位)は初戦のイタリア(FIFA5位)に1-1で引き分け、スロバキア(FIFA34位)は最終戦のイタリアに3-2で勝利した。
▼2006FIFAワールドカップ ドイツ大会
グループA
1位 ドイツ(FIFA19位)
2位 エクアドル(FIFA39位)
グループB
1位 イングランド(FIFA10位)
2位 スウェーデン(FIFA16位)
グループC
1位 アルゼンチン(FIFA9位)
2位 オランダ(FIFA3位)
グループD
1位 ポルトガル(FIFA7位)
2位 メキシコ(FIFA4位)
グループE
1位 イタリア(FIFA13位)
2位 ガーナ(FIFA48位)
グループF
1位 ブラジル(FIFA1位)
2位 オーストラリア(FIFA42位)
グループG
1位 スイス(FIFA35位)
2位 フランス(FIFA8位)
グループH
1位 スペイン(FIFA5位)
2位 ウクライナ(FIFA45位)
グループAのエクアドル(FIFA39位)は、初戦のポーランド(FIFA29位)を2-0、次戦のコスタリカ(FIFA26位)は3-0と連勝した。最終戦のドイツ(FIFA19位)には負けたが、早々と勝ち点6を得て、グループリーグを突破している。
グループFのオーストラリア(FIFA42位)は、初戦の日本に3-1で完勝。続くブラジル戦には0-2で負けたが、最終戦のクロアチア(FIFA23位)に引き分けて、グループリーグを2位で通過した。
グループHのウクライナ(FIFA45位)は、初戦こそスペイン(FIFA5位)に完敗したが、残りの2戦を勝利した。グループリーグで2得点をあげた大黒柱シェフチェンコの存在が光っていた。決勝トーナメントでもスイス(FIFA35位)に勝利してベスト8入りを決めている。
その他、日本と韓国で共同開催された2002FIFAワールドカップで、4位に入った韓国(FIFA40位)や、ベスト8入りしたセネガル(FIFA42位)、そして日本(FIFA32位)も戦前の予想を覆したチームといえるだろう。さらに、遡れば、1998FIFAワールドカップ フランス大会で、出場国中でランキング最下位だったナイジェリア(FIFA74位)がグループリーグを首位で通過している。
これらのグループリーグを突破したチームの共通点は3つだ。
1つ目は、初戦を負けていないこと。2006FIFAワールドカップ ドイツ大会でのウクライナを除くチームがこれに当てはまる。たとえ、相手が強豪国であっても、勝ちか引き分けが求められる。
2つ目は、チームの中心選手がいかに活躍するか。2010FIFAワールドカップ 南アフリカ大会の韓国は、ギリシャ相手の初戦で朴智星(当時、マンチェスター・ユナイテッド所属)が追加点を決めて勢いづいた。
3つ目は、ラッキーボーイの存在がある。2014FIFAワールドカップ ブラジル大会のコスタリカは、21歳ジョエル・キャンベルのゴールがウルグアイ戦の先制点となり勢いづいた。
2018FIFAワールドカップ ロシア大会でも、日本がこれらの条件に当てはまれば、ダークホースとして躍進する可能性がある。初戦のコロンビア(FIFA16位)戦を最低でも引き分け、実績のある本田や香川あたりが得点を決め、これまでの代表戦ではそれほど目立っていなかった選手が活躍する……というシナリオは都合が良すぎるだろうか。
しかし可能性はゼロではない。過去にはこのような試合があった。1990 FIFAワールドカップ イタリア大会の開幕戦だ。マラドーナ率いる前回優勝国のアルゼンチンが、カメルーンに0-1で敗れた。戦前は、誰もがアルゼンチンの勝利を疑っていなかった。この試合は、W杯史上最大のジャイアントキリングと呼ばれている。
10試合して1試合勝てるかどうかの相手であっても、その1試合がW杯になればいい。よく言われることだが、強いチームが勝つのではない。勝ったチームが強いのだ。試合は終了のホイッスルが鳴るまで何が起こるかわからない。
奇しくも日本代表の新監督には西野朗氏が就任。西野監督といえば、1996年アトランタオリンピックで、ブラジルを敗り「マイアミの奇跡」を起こした名将だ。西野ジャパンには、2018FIFAワールドカップ ロシア大会で、再び奇跡を起こしてほしい。