能年玲奈から広瀬香美まで、芸能プロ“独立・移籍トラブル”はなぜ起こる?

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2016年に発表された広瀬香美のアルバム『25th プレイリスト』(ビクターエンタテインメント)

 2018年5月28日、降ってわいたように巻き起こった歌手・広瀬香美の事務所移籍騒動。でもそういえば最近、芸能プロダクションからの独立騒動・移籍騒動って多くないですか……? 芸能マネージャーが芸能ニュースの裏側をちょっぴり教えちゃう本連載。記念すべき第1回は、所属プロダクションからの移籍・独立問題について解説を加えていただきます!

 はじめまして、こんにちは。わたくし、芸能吉之助と申します。おそらく読者のみなさんの大部分はご存じないであろう“X”という小さな芸能プロダクションで、タレントのマネージャーをやってます。なんの因果か、本来は芸能人の敵といってもいいこの「wezzy」というウェブメディアで、連載を始めることになりました。なぜかというと、株式会社サイゾーが運営するこの「wezzy」をはじめ、日々ウェブメディアに掲載される芸能ニュースに、いつももどかしい思いを抱いていたからなんです。

 以前よりずいぶんマシになったとはいえ、ウェブメディアに掲載される芸能ニュースには、本当に取材をしたのかアヤシイような記事も実に多い。どこの誰だかわからない「芸能関係者」が、テレビや映画のキャスティングの仕組みや内情を知っていたら絶対にあり得ないようなことばかり語っています。もはやネットスラングといってもいいほどよく指摘される「大手芸能プロダクションのゴリ押し」にも、実はきちんとした背景や意味があるんだけど、その構造を知りもしないで、どこかの週刊誌に書いてあることを元ネタにして、適当な記事を量産してはいませんか?ってね。

 もちろん芸能界はキレイゴトだけではないし、「政治」、ぼくらの用語でいうところの「ギョーセイ(行政)」でタレントの配役が決まる場面も多々あります。だけどその裏側には、有能なマネージャーによる緻密な戦略と売り込み、そしてそれをあえて受け止めるテレビ局プロデューサーの計算や野望みたいなものが入りまじった、実に複雑な構造があるんですよ。

 もちろん、メディアに躍る芸能ゴシップ記事だって、一方的に悪いとは思いません。ぼくだって有名人のスキャンダルには興味があるし、そういった下世話なものも含めて成立しているのがタレントの「人気」ってやつなので、我々芸能界の内側の人間のすべてがそういうゴシップ記事を嫌悪しているわけではないし、むしろそういう報道を利用している側面だってある。だけど、「その書き方はちょっと違うんじゃないか……」なんて思うケースが多いことも、また事実なんです。

 というわけでこの連載では、「世間を騒がせたアレやコレやの芸能ニュースを芸能界の内側から眺めるとどういうふうに見えるのか?」ということについて、徒然なるままにお話ししていこうと思っていますので、どうかお付き合いいただければと思います。

能年玲奈「給料5万円」とNHKのギャラ

 さて、第1回目のお題はズバリ「芸能人の事務所移籍・独立」です。

 2015年1月の「週刊文春」(文藝春秋)報道がきっかけとなるSMAP解散騒動をはじめとして、いま、芸能人のプロダクション移籍や独立をめぐる問題が大きなニュースになることが増えています。

 スターダストプロモーションを2015年に退所した中谷美紀、同じくスターダストの柴咲コウや山田孝之はなかば“社内独立”に近い形で別の会社を作っています。ソニー・ミュージックアーティスツの二階堂ふみも、信頼できる社外スタッフにマネージメントを任せて、ほぼ独立状態という情報もある。

 2018年3月にユマニテから独立した満島ひかり、それからこの4月の関ジャニ∞・渋谷すばるのジャニーズ事務所退所騒動、そして、ヒラタオフィスからヒラタインターナショナルなる“新会社”への宮崎あおい、多部未華子、松岡茉優の“社内移籍”騒動も、記憶に新しいところですよね。

 もちろん昔から、芸能人の移籍・独立は珍しくはありませんでした。1960年代から1970年代にかけて芸能界に一大帝国を築いた渡辺プロダクション、1970年代から1980年代にかけて『スター誕生!』(日本テレビ系)からキラ星のようなスターを続々と輩出したホリプロ、そして現在でも男性アイドルでは他社の追随を許さないジャニーズ事務所。そんな大手事務所からも、いろんな事情でタレントは独立しています。

 渡辺プロダクションからは、森進一や小柳ルミ子、ホリプロからは石川さゆりや森昌子、ジャニーズ事務所から郷ひろみや本木雅弘といった、今でも第一線で活躍するタレントが独立しています。

 昔は、タレントが独立すると、ましてや大手プロダクションからのトラブル絡みの独立だったりすると、前事務所からの“圧力”でしばらくは仕事を干されるとか、それまでの芸名は使えないとか、そういう嫌がらせを受けるケースも多かったようですが、最近はあまりそういった話は聞きません。

 そんな中、久しぶりにソレっぽい大トラブルとなったのが、2016年に世を騒がせた、いわゆる“バーニング系”の一角を占める大手芸能プロ・レプロエンタテインメント(以下、レプロ)の社長と大喧嘩して揉めに揉めた、あの能年玲奈のケースでしょう。「週刊文春」が能年玲奈の後見人的な演技指導の女性を味方につけて、当事者でないとわからないような若手女優の“内情”を洗いざらい記事にしちゃいましたよね。

 その時に出てきたのが「朝ドラに出演していた頃、給料は月5万円だった」「担当マネージャーが仕事を入れてくれなかった」みたいな話。これ、マネージャー目線で申し上げると、言いたいことたくさんあるんですよね……。

 まず、いくら将来性のある女優さんとはいえ、彼女が『あまちゃん』に出ていた2013年頃って、まだまだドラマでも脇役ばかりだった時代で、CMのギャランティも低かったはず。だから会社的に考えれば、たぶん年間でもそこまでの売り上げはなかったと思います。だいたい5万円とはいっても、それで生活しろってことじゃなくて、それ以外に会社が負担している部分は多岐にわたるんですよ? おそらくそれまでの数年間、寮を兼ねたマンションの家賃やレッスン費などさまざま費用は事務所が負担しているでしょうし、そもそもNHKのギャランティってびっくりするくらい低いので、純粋なお給料の部分が月5万円って、この年代の若手女優さんとしてはきわめて妥当な額だと思います。レプロが大手プロで、能年玲奈も『あまちゃん』が大ヒットしていきなり有名人になっちゃったから、あれだけのオオゴトになっちゃいましたが、役者系の小さな事務所だったら、もっともっと経済的に厳しく、お給料ももっと低かったと思います。でも、雑誌を読む一般の方に、そういった内側の事情はなかなか理解してもらえないんですよね……。

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