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月組公演『BADDY』に、宝塚“タブー破り”の悠久の歴史を学ぶ

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めくるめく展開となる『BADDY』の中詰めシーン。珠城りょう(左)と愛希れいか(右)。(阪急コミュニケーションズ「Le CINQ」2018年3月表紙より/著者提供)

【ヅカヲタ女医の「アモーレ!宝塚ショー」】第1回
『BADDY(バッディ)―悪党(ヤツ)は月からやって来る―』

 宝塚ファンの女医、wojoです。宝塚の舞台の素晴らしさを、勝手ながら医師という視点からアツく語ってまいりましたこの連載ですが、今回からwezzyさんに異動になりました。心機一転、がんばる所存です。引き続きよろしくお願いいたします。

 そして本業のほうも、新年度が明けて間もないこんな時期なのに、医局人事により6月にほかの病院に異動になりました。なぜ6月なんかに……。しかしそんなことより重いのは、宝塚人事。なんとなんと、5月の東京宝塚劇場公演を最後に、おひげがお似合いだった美しく素敵な男役さん・貴澄隼人様が宝塚を退団され、今、心にぽっかり穴が開いている状態なのです。

 貴澄様の退団公演となったのが、月組公演『ミュージカルプレイ カンパニー―努力(レッスン)、情熱(パッション)、そして仲間たち(カンパニー)―」と、『ショー・テント・タカラヅカ BADDY(バッディ)―悪党(ヤツ)は月からやって来る―』(以下、『BADDY』)です。大好きな男役さんがもう宝塚の世界には存在しない……という喪失感に加えて、演目自体もそれはもう素晴らしかったものですから、私、ショー『BADDY』ロスにもなっていまして。

『BADDY』は本当に、これまでの宝塚のショーとは一線も二線も画する素晴らしいものでした。「近未来の地球を舞台にしたSF仕立て」という奇抜な設定もさることながら、音楽の中毒性、登場人物それぞれのスピンオフが見たくなるほどのストーリーの重厚さ、等々……。なんだかものすごいものを観て、2月の初演からの3カ月過ごしてしまったと、まだまだぼんやり感が抜けない今日この頃です。

 演出は、この公演がショー作家としてのデビュー作となる上田久美子先生。大学卒業後、製薬会社勤務を経て宝塚に入団した、異色の経歴を持つ演出家です。

 まず舞台が開くと、とにかく多彩な人々がステージ上にいるのですが、一番目を引くのが、なぜか一人だけいる巨大な宇宙人。かつて消費者金融のCMに出てきた「むじんくん」そのもの! これは、95期(2009年3月入団)の長身な男役・輝月ゆうま様です(余談ですが輝月ゆうま様は、2007年の日本テレビ系バラエティ『学校へ行こう!』において、V6に宝塚受験を密着されていた方のおひとりでした)。「夢の世界・宝塚に、こんなすんごい、まんま宇宙人みたいなメイクで出ていいの!?」などと度肝を抜かれていると、全世界が禁煙となり、103年間犯罪発生件数ゼロが続いている地球に、犯罪者の巣窟である月からバッディたちがやってくる……というとんでもない展開に。

 主人公は、トップスター・珠城りょう様演じる、ヘビースモーカーでワルだがカッコいいバッディ。とにかくタバコを吸いまくる彼が、ワルい仲間たちを連れて地球にやってきているのです。その中には、地球の王女様と恋に落ちてしまい良心の呵責に苦しむバッディの仲間がいたり、地球に来てからは食い逃げや駐車違反といった小さな犯罪ばかりを繰り返しているバッディに対して「もっと悪いことをして!」と歌うバッディの恋人がいたり(バッディは男性ですが、恋人も男性という設定のようです)、一方でバッディに憧れる地球の王子様がいたり……と、1時間のショーでよくぞここまでと思うくらいの、登場人物の密度の高さ。とにかく、宝塚では見たことがないような、そして宝塚以外でもあまり見たことがないような、ぶっとんだ感じ満載なのです。

 善と悪が対照的に描かれており、「悪いことはだめ!」「善か悪か、さあどっちなの!!」という極端な考え方に貫かれつつも、一貫してシニカルかつコミカルな描写がなされております。「これってもしかして、1971年に初演された奇才・鴨川清作先生のショー『ノバ・ボサ・ノバ―盗まれたカルナバル―』を当時の宝塚ファンが初めて見た際に感じたのと同じ感覚……?」などと、さすがのwojoもまだ生まれていない遠い時代の宝塚に思いを馳せたりもしました。そう、『ノバ・ボサ・ノバ』もストーリー仕立てのショーで、善と悪、白人と黒人、金持ちと貧乏、等々、社会のひずみの原因となっている要素がシニカルかつコミカルな視点で描かれたショーで、高い評価を得て、その後何度も再演されているのです。でも潔いほどメッセージ性が強いので、初めて見た人はびっくりされたのではないでしょうか……。そんな演目が、今や宝塚の「古典」のひとつとなっているのです。

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wojo(ヲジョ)

都内某病院勤務のアラフォー女医。宝塚ファン歴20年で、これまでに宝塚に注いだ“愛”の総額は1000万円以上。医者としての担当は内科、宝塚のほうの担当は月組。

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