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安室奈美恵が語った、親としての責任とこれからの人生

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 安室奈美恵(40)が6月3日にラストツアー『namie amuro Final Tour 2018 〜Finally〜』を終えた。同ツアーは、単独歌手として国内最高となる約75万人を動員した。安室奈美恵は今年916日をもって引退することを発表している。ツアーの模様は早くもDVD化され、829日リリース予定だが、すでにAmazonランキングで上位を独占している。

 ツアー終了直後の64日に放送された『ニュースウォッチ9』(NHK)では、近年ほとんどテレビ出演をしてこなかった安室奈美恵が単独インタビューに応じた。インタビューで安室奈美恵は今回のファイナルツアーについて、<自分の中では、きちんと「さよなら」が言える場所を設けてもらえたってことにすごく幸せを感じているので、それに対して感謝の気持ちでいっぱい>だと語っている。

 ファイナルツアーのステージで、安室奈美恵は全30曲、時間にして3時間歌い踊り続けたのだが、そのパワーについて聞かれると<やっぱり好きなことだったりするので、たぶん30曲歌っても40曲歌ってもきっと50曲歌っても楽しい。で、その中で自分の中でのこう……テンションを、いいバランスを保てるように曲順を並べたりとかもしているので、わりとこう……楽しかったりするので、あっという間です>。

 4050曲踊ろうと思えばできるのかを聞かれれば、<できると思います><うまく自分のできる範囲での組み合わせと流れとがあれば、たぶんどこまででもいけるはず>。これらの言葉からは、自分自身の内面をどこまでも見通した上で、自分という人間が最良のパフォーマンスを見せるにはどうすればよいのか、プロとして見極めていることがわかる。自分を俯瞰したうえでの主体的な姿勢を彼女は貫いてきた。

 14歳でデビュー、紆余曲折を経て、音楽界の頂点に立った安室奈美恵。ヒット曲を連発し、彼女のファッションを真似るアムラーブームが起こるなど、若い女性のカリスマ的存在になった。当時の彼女は『THE夜もヒッパレ』(日本テレビ系)や『HEY HEY HEY!』(フジテレビ系)といった音楽番組に出演するなどメディア露出の機会も多く、『Myojo』(集英社)のようなアイドル雑誌に登場することもあった。

 メディア露出を控えコンサートに力を注ぐようになったのは、<自分に合っているものは何か、自分に必要なもの、自分が定めたゴールに対して必要なものは何か、必要でないものは何かで引き算していった結果>だったという。また<「歌いながら踊る」ってことはシンプルに変わってない>とも。実際、コンサートでしか見られなくなった安室奈美恵のパフォーマンス、圧倒的な歌唱力とダンスには多くのファンが魅了され、チケットはいつも入手困難な状態だった。

 安室奈美恵が歌手活動を1年休業したのは、まさに人気絶頂だった20歳の時。結婚と妊娠の発表、そして出産のため“歌わない1年”を過ごした。インタビューでは、この“歌わない1年”こそが、安室奈美恵にとって歌手活動の大きなターニングポイントになったことも明かされた。

 休業中、安室奈美恵は<嫌っていうほど>、そして<初めてとことん自分と向き合った>という。自ら「1年休業させていただきます」と言った時は何の迷いもなかったが、いざ本当に休んでいる間には不安や焦りが生じることもあり、しかしその一方で<でもあの1年がなかったら……そういう焦りだったり不安だったりっていうのを、自分であの時感じて、調節できる自分になれたのがその1年間だったので><休んだ1年間がなかったら、その先に不安や焦りが出たときに、自分に自分のことを信じてあげることができなかったりとか、ブレーキをかけてあげることができなかったりしていたと思う>と、20年前を振り返る。

 この“歌わない1年”であった1998年に誕生した安室奈美恵の息子は現在20歳。子育て中の母親は仕事の時間より子供との時間を大切に、という価値観は今も根強いが、安室奈美恵の場合、息子が子供の頃にガンガン働いて、息子の成人と同時に歌手活動を引退するのだから、ある意味一般常識とは真逆だ。

 しかしインタビューで安室奈美恵は息子について、<(存在は)大きいですね。何するにも息子がいての考え方だったので>と話し、歌詞を作る際も変な言葉や英語でのスラングがないよう<本当に注意>していたのだという。また、<私が何かしてしまうと、彼が後ろ指さされてしまうって思いながら、きちんといつか「ママの息子でよかった」って言われるには、どういう仕事の姿勢でいけばいいのか>考えてきた。親としての責任をしかと受け止め、実践していたのである。その姿勢はファンにも伝わっていたはずだ。安室奈美恵のファンでいて良かった、と誇りに思うファンは多いのではないか。

 安室奈美恵は現役歌手としてトップに立つ存在であり、絶頂期での引退を惜しむ声は少なくない。しかし彼女にとって、歌うことが人生の全てではない。25年間の歌手活動を、すごく情熱を注いだ<大切な時間>とする一方で、けれど<人生の中で考えたとすれば通過点>と、やはり俯瞰で見ているのだ。彼女の人生において、歌手活動は“通過点”。それは音楽そのものやファン、スタッフを軽視しているわけではもちろんない。けれども寿命80年以上が当たり前の世の中で、現在40歳の彼女にとってまだまだ人生は長く続いていく。自ら区切りの判断をつけた彼女は、流されず主体的に生きる術を知っているのだろう。その姿勢そのものが、生き方に迷う多くのファンを勇気づけているはずだ。

中崎亜衣

1987年生まれの未婚シングルマザー。お金はないけどしがらみもないのをいいことに、自由にゆる~く娘と暮らしている。90年代りぼん、邦画、小説、古着、カフェが好き。

@pinkmooncandy

バナナ&ストロベリー

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