本日(6月9日)21時より、フジテレビ系にて、是枝裕和監督作品『海街diary』(2015年6月公開)が放送される。この作品は、長女(香田幸)を綾瀬はるか、次女(佳乃)を長澤まさみ、三女(千佳)を夏帆が演じるという豪華な女優陣のキャスティングでも話題となったが、そのなかで物語の中心となる腹違いの妹(浅野すず)を演じたのが、広瀬すずだった。
いまでこそ納得のキャスティングに思えるが、撮影当時の広瀬すずは演技の実力をほとんど認識すらされていない状態だった。その原石を見つけだしたのが是枝裕和監督である。
ウェブサイト「ツイナビ」に掲載されている是枝監督のインタビューによれば、『海街diary』のオーディションをやっていたのは2013年の秋ごろ。このとき是枝監督は、浅野すず役に合いそうな人に声をかけていたそうだが、広瀬すずもそのようにしてオーディションに参加することになったひとりだった。是枝監督は<彼女はそのとき、進研ゼミかなんかのコマーシャルに、ワンカット、ツーカットぐらい出ていて。それをテレビで見て「この子呼んでほしい」っていうふうにお願いをして、来てもらいました>と語っている。実際、オーディション当時の広瀬すずは、「Seventeen」(集英社)の専属モデルとして芸能活動はしていたものの、演技の経験はほぼゼロだった。
そんな状態だったので、『海街diary』の撮影現場に入った後は色々と戸惑うこともあったようだ。ウェブサイト「BEST TIMES」のインタビューではこんな初々しいエピソードを語っている。
<最初の顔合わせのとき、「なんで目の前に綾瀬はるかさんが!」て。……そのときは一般人感覚だったんで、心の中では呼び捨てだったんですけど(笑)。ビクビクブルブルって感じで。帰りたい帰りたい、話すことない話すことない。芸能人が本当に存在することを知った瞬間でした。『幻想的な世界の人たち』って思っていたから>
しかし、是枝監督は『海街diary』での広瀬すずの演技を高く評価。特に、三姉妹の母(佐々木都)役の大竹しのぶとのやり取りでも物怖じしなかった姿勢を例にあげながら<大物だなって思いましたね>(ウェブサイト「クランクイン!」是枝監督インタビューより)とまで語っている。
『海街diary』での演技は世間的にも高く評価され、この映画への出演が、彼女のその後の快進撃へとつながった。第40回日本アカデミー賞(2016年度)においては、『ちはやふる –上の句–』で優秀主演女優賞を、『怒り』で優秀助演女優賞をダブル受賞。そして、翌2017年度の第41回日本アカデミー賞では、是枝裕和監督作品『三度目の殺人』で最優秀助演女優賞を受賞するなど、順風満帆なキャリアを歩んでいる。
そんな彼女も今月19日で20歳を迎える。「日経エンタテインメント!」(日経BP社)2018年7月号に掲載されている連載コラムでは、20歳の節目を迎えるにあたり、これまでのキャリアとこれからの女優業について、このように語っている。
<親との複雑な関係に悩みながら、10代だからこその闇を抱えている役をやらせてもらいました。でも、これからは家族との関係だけではなく、より自分の人生を生きて、自分の心の中にあるものと向き合っていくことになると思うんです。そういったお芝居とか気持ちも、役として味わってみたいなと。毒のある役に挑戦できるようになるかもしれない。そう考えると、女優としても20代になることがすごく待ち遠しくなってきました>
確かに、『海街diary』をはじめ、『怒り』、『三度目の殺人』、ドラマ『anone』(日本テレビ)など、これまでの彼女は、親との葛藤を抱え、どこか「心の闇」を感じさせる少女の役柄が多かった。『ちはやふる』シリーズや『チア☆ダン〜女子高生がチアダンスで全米制覇しちゃったホントの話〜』のような明るい青春ドラマと、そういった作品の両輪で女優としての広瀬すずのキャリアは動いていたといえる。
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