社会

かつて受けた数々のセクハラ。私に加害してきた人は、どんな心境だったのか?

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ーー実は、まだ表沙汰にはなっていないのですが、ある映画監督が長年にわたっていろんな女性に性暴力加害をしています。自分の作品にキャスティングしてそのあとに性行為を迫る。女優側は断れないですよね。がんばって断っても怒鳴られたり、人格を否定するようなことを言われたり。あれは性欲というよりは支配欲なんじゃないか、そして依存症の側面もあるんじゃないかと感じました。彼を見ていると私は「大丈夫なのかな?」と思います。もちろん大丈夫じゃないし、どんな理由があっても許されない行為ですけど、本人もあれはつらいんじゃないのかな、って。

ずっと加害行為をくり返していて、周りにもおかしいと思っている人はいるけれど、映画監督となると立場が強いので誰も何も言えないんです。

私はこの状況を何とかできないかと思っています。被害者もどんどんどんどん増えますし。彼はどんな意識でいるんでしょう? 自分が許されないことをしている自覚はあるのでしょうか?

斉藤:彼の加害行為は、権力関係のなかでこそ生まれるものですよね、対等な間柄では生まれない。立場を利用した性暴力は日常的にあって、いまいろんなところで議論されているセクハラの問題も同様です。しかし加害者本人は「立場を利用している」とは思っていないでしょう。くり返しているとその感覚が麻痺してくるんですよ。

加害者が「そんなつもりじゃない」という理由

斉藤:たとえばSNSやマッチングサービスを利用して不特定多数の人と性行為をしている人がいます。相手もちゃんと合意してセックスに至っている場合もあるのですが、それをくり返すうちに「SNSで出会った人はみんな自分との性関係を望んでいるんだ」という認識になっていきます。10人のうち1人が「そんなつもりじゃない」と拒否したとき、その人の世界観においては「いや、そうはいっても本当はセックスしたいんだろう」と歪んで認識されます。で、レイプに至ってしまう。

石川さんのお話に出てきた映画監督のような人であっても、最初の一回目があったはずで、そこからくり返すごとに学習をしていきます。こういうふうにやればうまくいくんだ、こういう女性は泣き寝入りしやすいんだ、など自分にとって都合のいいフレームで捉えていくんです。これを「認知の歪み」といいます。しまいには、「相手は自分とのセックスを望んでいる」という強い信念になります。

#Metooを見ていると、告発された側は「そんなつもりじゃなかった」という話をよく聞きますが、これと同じことが起こっているのだと思います。性犯罪加害者自身に気づかせるには、「逮捕」が一番インパクトがあります。これは彼らに共通することですが、逮捕されなければ気づかない、止まらないです。

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Thinkstock/Photo by Ljupco/Photodisc

ーー被害に遭った側が告発したり訴えたりするのは、なかなか荷が重いですよね。

斉藤:おっしゃるとおりです。が、誰かが発信しないとたぶん彼を止めるのはむずかしいと思います。あと、告発されても権力のある人だともみ消すこともあります。彼らは弱い立場の人の痛いところやツボを知っていて、被害者がこの業界で生きていけなくなるよう追い込む力を持っていますから。

日本の場合は女性蔑視や男尊女卑という、社会のなかで無意識のうちに前提とされている価値観があります。性加害をする人はその価値観から影響を受けた論理展開をして、弱い立場の人から反論されないようにしながら、どんどん追いつめていくんです。

そして被害者側に「自分も悪かったんじゃないのか」「落ち度があったんじゃないか」と思わせます。さらに、その価値観を多くの人が共有しているので、被害者側も社会からの視線を感じて「やっぱり自分が悪かったんだ」「だったら誰かに言うのはやめようかな」となってしまう。これこそが、「加害者のマジック」です。

力関係を把握するのに長けた加害者たち

斉藤:DVでも、知らないあいだに加害者のマジックに取り込まれ、「私にはもうこの生活しかないんだ」というあきらめや思い込みに囚われてしまって逃げられなくなることがあります。でも周囲からは、逃げないことを責められたりしますよね。日常的な暴力にさらされて、「この生活しかないし、逃げても私には幸せな生活はない」と洗脳されることを、学習性絶望感と言います。

加害者は被害者の力の奪い方をよく知っています。彼らには、力関係を瞬時に把握する独特な嗅覚があるんですよ。治療の現場でも、このクリニックで誰が権限を持っているかといったことを敏感に察知します。これらの能力は、彼らが加害行為を継続しながら生きていくうえでの「生活の知恵」なのでしょう。痴漢だったら、自分に対して抵抗してこない人や泣き寝入りしそうな人を見極める能力です。

ーーだから私は狙われたんだ、って思いますね。被害に遭っている当時、抵抗するなどの選択肢は自分のなかになかったです。でも加害者の人にしたって、その嗅覚をもっと違うことに活かせばいいのに。

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石川優実

1987年1月1日生まれのグラビア女優。
18歳より芸能活動開始。イメージDVD30本リリース。2014年にふみふみこ原作映画「女の穴」にて初主演、同時に写真集発売、2015年には高樹澪主演「誘惑は嵐の夜に」にて準主演。
以前から男女の性の認識の違いについて疑問を持っており、ブログで性やセックスについて積極的に発信していた。2017年末に自身が受けた芸能活動での性暴力を#metooとして告白し話題に。以降、性暴力や人権・男女平等などについて勉強中。本当の意味で「男女」という違いをより理解し、みんなが幸せに生きられるように活動している。

twitter:@ishikawa_yumi

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