山本美月は『モンテ・クリスト伯』での熱演で代表作『桐島』を超えた

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山本美月 公式インスタグラムより

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 6月14日にいよいよ最終回を迎える、ディーン・フジオカ(37)主演ドラマ『モンテ・クリスト伯 ―華麗なる復讐―』(フジテレビ系)。最終回は2時間スペシャルだ。視聴率の面において苦戦を強いられることが非常に増えていたフジテレビ系『木曜劇場』枠で放送されている同ドラマは、やはり初回5.1%(ビデオリサーチ調べ、関東地区、以下同)と厳しいスタートを切った。しかし最終回直前の第8話では自己最高の7.4%を記録。結果的に初回視聴率が一番低くなっており、連続ドラマとしては理想的な視聴率の上がり方を見せている。

 このような視聴率の推移をするドラマは、視聴者からの満足度が非常に高く、実際に『モンテ・クリスト伯 ―華麗なる復讐―』にもSNSでは絶賛の声が飛び交っている状態。特に主人公が脱獄を果たし生まれ変わった第3話から怒涛の展開が続いており、初回脱落組が残念でならない。それほどにドラマとして抜群の面白さがある。綿密に練られたストーリーや刺激的な演出に加え、出演者たちの演技にも拍手喝采だ。

 主演のディーン・フジオカには今まで「顔はかっこいいのに…」との批評も少なくなかったわけだが、モンテ・クリスト・真海(柴門暖)はハマり役だ。謎の紳士であり、腹の中で何を企んでいるのかさっぱり読めないところも、実は怨念をたぎらせているところも、ミステリアスな雰囲気を持つディーン・フジオカにはピタッとハマった。

 そして悪役を演じる新井浩文(39)、関ジャニ∞の大倉忠義(33)、高橋克典(53)。新井浩文の巧さは言わずもがなで、とことんイヤ〜な男を絶妙なイヤらしさで表現しているが、爽やかジャニーズでありながら超弩級の卑怯者を演じた大倉忠義も良かった。かつて熱血サラリーマンであり筋肉セクシーガイでもあった高橋克典は、権力にとりつかれた巨悪(警察官僚)として顔芸まで極めた。

 さらに『モンテ・クリスト伯 ―華麗なる復讐―』では女優たちの輝きも素晴らしい。死産だと思っていた息子が生存していたと知り、強くズル賢く生き抜こうとする女性・稲森いずみ(46)。息子のことを「知る前」「知った後」で明らかに顔つきが違う。高橋克典の後妻役である山口紗弥加(38)は、仕事のデキる女性役もうまいが、不自然に目を見開いた奇妙なぶりっ子を演じさせたら天下一品。赤い小瓶に毒を隠し持つサイコパス若妻としてその魅力を存分に発揮している。

 ここまで列挙した面々のような強い特徴や異常性はないものの、真海のかつての婚約者・南条すみれ役で出演している山本美月(26)もまた、本作では目をみはる演技派ぶりだ。ともすれば流されやすいイヤな女に見えてしまいかねない役どころではあるが、可憐で芯が強く自立的な、しかし悲劇のヒロインとしてイキイキとしたキャラクターを作り上げた。

 すみれの役どころは非常に難しい感情表現が要求されたことだろう。物語は、結婚式の日に新郎の暖が無実の罪で異国の地に投獄されてしまうところからスタート。すみれは無実を訴える署名を集めるなど奮闘するが、暖の死亡が伝えられる。失意に暮れる日々を支えてくれた南条幸男(大倉忠義)の求婚を受けて結婚、幸男は人気俳優・すみれは人気料理研究家に出世し、娘ももうけて穏やかで幸せな日常を手にしていた。しかし15年後、暖が真海と名を改めて目の前に現れた。幸男が暖をハメた犯人だったと知らされる。幸せな生活は、裏切りの産物だった。すみれは幸男を殺したいほど憎むが、幸男との間にできた娘を想うがために殺せず、葛藤しているーー。複雑なストーリーの『モンテ・クリスト伯』の中でも、すみれはおそらく、もっとも感情が大きく揺れ動く登場人物だろう。

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