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優秀な人材獲得に新手法 労働者に理不尽を押し付けない合理的な働き方改革を

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Thinstock/Photo by opolja

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 6月11日放送の『クローズアップ現代+』(NHK系)が、就職活動戦線を特集した。人材獲得に力を入れる企業による“逆求人サイト”の利用が拡大していることに注目し、人手不足の日本社会で今、どのような人材争奪戦が繰り広げられているかを見ていく内容だった。

 番組では、株式会社i-plugが運営する「OfferBox」を紹介。OfferBoxとは、従来の就活サイトとは真逆で、企業側が学生にオファーをする“逆求人サイト”のことだ。学生はこれまで、応募する企業に合わせて何枚もエントリーシートを書く必要があったが、OfferBoxだとPRシートを1枚書くだけでOK。それを見た企業が、学生に面接を申し込み、採用面接へと移行するらしい。優秀な人材を獲得するため、企業側は従来の「待ちの採用」ではなく「攻めの採用」へと意識を変えているようだ。

 企業が多様な採用方法を取り入れている背景について、雇用や労働を研究している千葉商科大学専任講師の常見陽平氏が、「これから若者が減ってきますので、それに対する危機感が非常に強まっています。従来の手法の限界は見えていまして、こういった様々な手法をなりふり構わず取り入れている」と解説。今後も人手不足は続くという危機観が、敏感な企業の意識を変えつつあるという。

 また、常見氏は「今どき若者に、平成も終わって昭和も終わって大分経つんだから、昭和的価値観・昭和的若者像を押しつけるなって言いたい」と、人手不足を解消するためには年配者の意識改革が不可欠だと語る。いわく、最近の若者は「楽しく働きたい」「個人の生活と仕事を両立させたい」と考えているため、そういった若者の仕事観を尊重すべきだと強く求めた。

 さらに番組中、「若者が労働環境を求めるのは、労働者としてまともなこと。そこに真っ当に答える人事や経営者が求められる」と口にした常見氏。至極当然の話だが、労働者に年功序列で終身雇用し家族を養う賃金を与えるかわりに、サービス残業や転勤など滅私奉公を求めてきた日本型企業にとっては、「いまどきの若者は甘い」と言いたくなる話なのだろうか。

すでにいる社員の働きやすさから

 サイボウズ株式会社は、2015年の離職率が28%だったが、2014年では4%まで減らした。社長の青野慶久氏は「100人いれば、100通りの人事制度があってよい」と考え、働き方の見直しに着手。「育児・介護休暇制度」や「子連れ出勤制度」などを設け、従業員の働きやすさを実現し、離職率を下げることに成功した。

 飲食業界の離職率は3割とかなり高く、人手不足が最も深刻な業界と言える。そんな飲食業界の中でも、低い離職率を誇るのがロイヤルホストだ。ロイヤルホストは昨年1月に全店舗で人手不足で深夜の人員が揃わないことや従業員のワークライフバランスを重視することを理由に24時間営業を停止。従業員に寄り添った柔軟な働き方改革を続けて、離職率はここ数年5%以下を記録している。

 人手を増やすことも大切だが、まずは今いる社員を大切にすることから始めなければ状況は改善されない。これを意識し、実行できている企業に自然と応募者が集まり、同時に人手不足のリスクから逃れられる好循環を生むのだろう。

仕事量が多すぎて残業

 そもそも人手不足を引き起こしている主な原因のひとつには、社員数に見合わない膨大な仕事量がありそうだ。インターワイヤード株式会社が運営するネットリサーチの「DIMSDRIVE」は2017年、1343人の「正規社員として働いている人」を対象に「長時間労働」に関するアンケート調査を実施。その結果、「あなたが残業をする理由はなんですか?」の質問に、44.5%が「仕事の量が多すぎる」と回答した。

 ただ、「仕事の割り振りに問題がある」が21.7%、「無駄な打ち合わせが多い(打ち合わせ時間が長い、不要な参加者が多い等)」が20.3%と、現行の業務改善を企業が図れば、人員を補充する必要はない企業もあるかもしれない。

 これから若者人口が減少することは確定しており、人手不足は今後も続きそうだ。最近では「人手不足倒産」も話題となっており、利益を求めるならばこそ、従業員の働きやすさから目を背けてはならないことは明らか。冷静に合理的な判断をすべき時期に来ている。

宮西瀬名

フリーライターです。ジェンダーや働き方、育児などの記事を主に執筆しています。
“共感”ではなく“納得”につながるような記事の執筆を目指し、精進の毎日です…。

twitter:@miyanishi_sena

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