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女性記者の排除に繋がる懸念がある、政府の「セクハラ緊急対策」

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Thinkstock/Photo by Professor25

 政府は12日に開かれた「すべての女性が輝く社会づくり本部」で「セクハラ緊急対策」をまとめた。福田淳一前財務事務次官によるセクハラ問題を受ける形で発表された対策だが、セクハラ防止対策としての実効性を問う声と、女性記者による取材が制限されるのではないか、という懸念が聞こえる。

 安倍晋三首相は、12日自身が本部長を務める「すべての女性が輝く社会づくり本部」にて、「セクシャル・ハラスメントに対する対策強化も決定しました。誠に遺憾ながら、先般のセクハラ事案の発生を受け、野田大臣に緊急対策の取りまとめを指示したものであります。セクハラは明白な人権侵害であり、あってはならないことであります。各閣僚におかれては、この緊急対策を速やかに実行に移し、被害の予防・救済・再発防止に万全を期してください」と明言した。

 「セクハラ緊急対策」には、

・各省庁の課長級職員および幹部職員の研修の義務化
・セクハラ防止について厚生労働省が事業主に周知
・各省庁の相談窓口を外部にも周知
・取材現場で女性記者が阻害されないための環境整備
・取材環境について記者クラブと各省庁が意思疎通する場の設定

などが盛り込まれている。麻生太郎財務大臣は福田前次官のセクハラ問題の際、「セクハラ罪という罪はない」などの発言をし、セクハラへの認識不足が問われていたが、今回の緊急対策に大臣や副大臣などは研修を受ける義務があるとはされていない。

 また先の騒動では、財務省が福田前次官からセクハラを受けた女性記者に対し名乗り出ることを求めたことが問題になっていた。記者クラブと意思疎通を行う場を設けることによって、省庁が記者や報道機関の情報把握・特定に繋がる可能性もあるのではないだろうか。

 同会合で発表された「女性活躍加速のための重点方針2018」にも、セクハラ対策の必要が説かれているが、「被害の防止や被害が発生した際の対応、再発防止のための措置が適切に行われるよう、プライバシーの保護を始めとする被害者への配慮、セクシュアル・ハラスメントの行為者に対する事業主による厳正な対処、研修等の実施による法令等の周知、相談窓口の整備等の対策を徹底する。また、セクシュアル・ハラスメント対策の実効性確保のための検討を行う」と書かれているのみで、法整備を検討するなど、具体的な対策に向けて動くことは明記されていない。

 セクハラ緊急対策および女性活躍加速のための重点方針2018」を発表した野田聖子総務大臣は記者会見の場で、セクハラ対策の法整備について問われると、「新たな法律の整備を排除しているわけではない」としつつ、法律の整備には時間がかかること、規制によって報道機関が萎縮し女性記者が取材現場から排除されるような作用も考えられるため、まずは現行の法制度等に定められている内容を徹底し、実効性を高める措置が重要である、という見解を述べた。

 「明白な人権侵害」であるセクハラの防止に政府がどれだけ本腰を入れるか、今回の緊急対策が、むしろ報道機関や女性記者を萎縮させる方向に利用されないか、注視する必要がある。

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