「抗がん剤治療で髪が抜けたら…」NYの乳がん患者支援日本語プログラム”SHARE”

文=堂本かおる
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「抗がん剤治療で髪が抜けたら…」NYの乳がん患者支援日本語プログラムSHAREの画像1 SHARE日本語プログラムの勉強会「抗がん剤治療で髪が抜けたら…」参加者 中央、薄黄色のシャツが代表のブローディ愛子さん 男性はゲスト・スピーカーの田中広祐医師 http://sharejp.org/

「抗がん剤治療で髪が抜けたら…」NYの乳がん患者支援日本語プログラムSHAREの画像1
SHARE日本語プログラムの勉強会「抗がん剤治療で髪が抜けたら…」参加者
中央、薄黄色のシャツが代表のブロディー愛子さん
男性はゲスト・スピーカーの田中広祐医師
http://sharejp.org/

 SHARE(シェア)はマンハッタンのミッドタウンに本部を置く、乳がん・卵巣がんの患者支援団体だ。1976年に乳がんを専門とする医師が声を上げ、12人の女性が集まったことから始まっている。のちに卵巣がん患者のサポートも開始し、ニューヨーク市内の各地で患者が集まる定期ミーティングのほかに電話相談、個人面談、ウエブセミナーなど幅広い活動をおこなっている。

 現在、SHAREには日本語によるプログラムもある。乳がんのサバイバーであるブロディー愛子さんが代表となり、ニューヨークおよび近郊在住の日本人を対象に支援活動を展開している。

 がん患者支援に限らず、多人種・多民族都市ニューヨークではあらゆることに多様性が必要となる。移民が多く、人々の英語力にばらつきがある。サービスを受けるだけの英語力がない人もいれば、英語上級者であっても内容によっては母語のほうがうまく話せることも多い。加えて人種・民族によって文化や生活習慣、さらには身体特徴や体質も異なるため、同じ言語、同じ人種や民族による集まりや行政サービスが必要となる。

 SHAREも設立後かなり早い段階でラティーノ対象のスペイン語プログラムが立ち上げられている。のちにアフリカ系アメリカ人対象のプログラムも誕生。アフリカ系アメリカ人は英語話者ではあるが、がん治療の一環として重要な食事も含めた生活習慣にユニークなものがあるためだ。また、ラティーノも黒人もそれぞれ居住コミュニティがあり、患者が参加しやすいようミーティング会場はコミュニティの中、または近隣となっている。日本人も同様に言葉だけでなく、文化、習慣に独自のものがあり、日本人同士の集いが患者には大きな助けとなる。

抗がん剤治療で髪が抜けたら…

 6月11日、SHARE日本語プログラムは初の勉強会「抗がん剤治療で髪が抜けたら…」を開催した。ミッドタウンのSHARE本部に3人のスピーカーを招き、がん治療ではなく、治療によって髪を無くした際のケアについて学び、語り合う会だった。代表の愛子さんによると、治療を担当する医師はがん治療に専念し、女性にとって非常に繊細な問題である「髪を無くす」ことにはそれほどのケアがなされないとのこと。そのため、多くの女性患者ががんという深刻な病と対峙しながら、自分自身でウィッグ、スカーフ、帽子、さらにはシャンプーなどについて情報を集め、試行錯誤を繰り返さなければならない。今回の勉強会はそうした現状をふまえて専門知識を持つ人たちをスピーカーに迎え、20人以上の参加者が体験談や工夫をシェアし合った。

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ウィッグについて説明するハーティーしのさん
ヘアメイクアップ・アーティスト
Salon Wave http://www.salonwaveny.com/

 最初のスピーカーは、ヘア/メイクアップ・アーティストのハーティーしの氏(サロン・ウェイブ)。人毛と人工毛のウィッグを実際に手に取りながら、それぞれの手入れ法と、スタイリング、ヘアダイ、カットの方法などをレクチャー。

 続いて自身もがんサバイバーであるキャッツ洋子氏(ファッション工科大学経済学助教授)がスカーフの巻き方、自作の帽子の紹介をおこなった。

 最後のスピーカーは田中広祐医師(メモリアル・スローン・ケタリングがんセンター博士研究員)。専門は肺がんだが、抗がん剤によって髪が抜けるメカニズムを解説した。

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