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6月13日放送された『マツコ&有吉 かりそめ天国』(テレビ朝日系)で、有吉弘行がネット上に書き込む行為への不信感を口にした。番組中、「ネットニュースやクチコミサイトにわざわざコメントする人の気持ちがわかりません。お二人は書き込んだことありますか?」という投稿が紹介され、有吉弘行は「(書き込んだことは)ないし、今後もそうなりたくない」とバッサリ。
マツコ・デラックスは書き込む人に対して「世間話をしてる感覚なのかな? 友達とかと」と疑問を口にし、有吉弘行は「憂さ晴らしでもあるだろうし、愚痴でもある。居酒屋で飲んで、仲間同士で話してることをここ(ネット)に書いてるってことでしょ」と分析した。するとマツコ・デラックスは「じゃあ世間話なんだろうね」と納得した様子を見せるが、有吉弘行は「書き込んでも良いし何やってもいいけど、僕はそうなりたくないな」と終始批判的だった。
ハーバード大学の社会的認知・情動神経科学研究所の研究チームは2012年、興味深い研究結果を米科学アカデミー紀要に発表した。研究チームによると、自分の感情や考えなどを他者に伝えると、脳内の快楽物質“ドーパミン”に関連する領域が反応するというのだ。つまり、ネット上の不特定多数が閲覧可能な場に文章を書き込むことは、快感を得ることにつながるということだろうか。
だとすればだが、その快感は日常的に得やすい手軽なものだ。ネット上に書き込むことをストレス発散の手段と自覚的に捉えてやっている人はあまりいないかもしれないが、知らず知らずのうちに、ネット上に書き込むことにカタルシスを見出し、頻繁に書き込みしている人もいるのではないだろうか。
非常に多くの人間が、スマートフォンなどのデバイスを通じてインターネット空間にアクセスし、ネットニュースや動画、そして誰かが匿名で書いたコメント群を日常的に目にしている現代。自分は閲覧専門で、TwitterやFacebookの投稿すらほとんどしたことがない、という人もいるだろうが、もうかなり前からインターネットは特殊な空間ではなく、日常生活を営む上で必須のインフラになった。
慶應義塾大学経済学部准教授の田中辰雄氏は、PRESIDENT Online掲載のコラム『炎上させるのは「バカで暇人」たちなのか』において、ネットに意見を書き込むのは、「ひきこもり」「低収入」「非正規社員」などネガティブな偏見が形成された時期もあったが、実際にはそうした偏りはないと述べ、ネット炎上に加担するユーザーを「(感想を一言書き添えるだけの)ライトな参加者は30~40代が中心で、個人年収や世帯年収が高いほど参加率も高くなる。子どもと同居している人も参加率が高い。(中略)いずれにせよ、炎上に参加するのは独身で貧乏、ストレスを抱えた人たちという見方は偏見だ」と分析している。
他方、有吉弘行がネットに書き込むユーザーを軽蔑しているような発言を繰り返すのには理由がある。2015年9月の出来事だが、AKB48の高橋みなみとTwitter上でやりとりしたところ高橋のファンが絡んできたことがあり、ネットニュースで「有吉、批判殺到で謝罪」と書かれた。有吉は当時、ラジオ番組『有吉弘行のSUNDAY NIGHT DREAMER』(JFN系)で、そうしたネットニュースに好き勝手なコメントを寄せるユーザーに腹が立つと述べ、「その記事にね、何か一言物申したい人ってクズじゃないですか」「クズのくせに『クズじゃない』って顔をして」と憤りを明かしていた。怒りたくなるのも当然の流れだが、それが今のネットカルチャーでもある。
有吉弘行にとっては「クズ」だが、TwitterなどSNSも含めれば、ネットニュースに反応してコメントを投稿するユーザーは相当いるわけで、ネットに書き込むことは、もはや日常的な行為なのかもしれない。