眞子さま婚約騒動に見る、皇室の女性たちを苦しめる“伝統”

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政治が“回避”した「女性天皇」議論

 また、明治期までは側室があり、皇位継承者たる男子はたくさん生まれていたため、継承者問題を議論する必要もなかった。いささか乱暴な言い方かもしれないが、「天皇は男でも女でもいいけれど、男がいるなら男のほうがいい」という、明確な根拠のない男系推しが続いた結果なのだ。あるいは、あえて根拠を挙げるならば、小田部氏のいう通り女性蔑視の考え方であろう。

「相撲でいう『女は土俵に上がるな』に似ていますよね。女相撲が存在するのに、あたかも女人禁制がもとから存在したルール、伝統であるかのような言い方をされるという点で。あるいは、『過去の女性天皇だって、中継ぎに過ぎなかった』などと文句をつける学者もいますが、中継ぎだろうといたことには変わりませんし、それを言ったら中継ぎの男性天皇だってたくさんいましたからね」

 小田部氏によれば、天皇という職能上、女性で困ることはないという。

「『女性には生理があるから儀式ができない』などという男系論者がいますが、儀式には代拝というシステムがあって、代々の天皇たちも体調が悪いときなどは代役を立てていました。また『生理の血が“穢れ”である』というのも、伝統といえばそうではあるかもしれませんが、現代的な価値観でいえばある種の迷信に近いもの。それをいま声高に主張すれば、それこそ大問題になりますよね。私にいわせれば、それを変えて何が悪いのか、と。結局は、「男系であるべし」を主張するための、まさに“ためにする議論”でしかないのではないか、と」

 2017(平成29)年5月、今上天皇の生前退位を受け、共同通信社が世論調査で女性天皇の賛否を問うたところ、賛成は86パーセントだった。また、同時期に毎日新聞が実施した同様の世論調査でも賛成が68パーセントと高いパーセンテージを示している。にもかかわらず、なぜ女性天皇の議論が進まないのか。

「2006(平成18)年に秋篠宮家に悠仁親王が誕生し、当面の男系断絶が回避されて以降、女性天皇をめぐる議論は下火になりましたが、それから10年以上まったく進んでいないですよね。特に近年における議論停滞の一因は、現政権である自民党の、もっといえば安倍晋三首相の重要な支持基盤の一つが、女性天皇に反対する保守層だからでしょう。逆にいえば、もし仮に安倍首相が退陣すれば、女性天皇の議論が活発化する可能性は高い」

 保守を名乗るのであれば、天皇という存在の重要性は十分に理解しているはずだ。しかし、その保守層が「伝統」とやらに固執するあまり議論を停滞させ、先細っていく皇室を蔑ろにする結果を生んでいるというのは皮肉な話である。今上天皇の生前退位にしても、多くの国民が支持していたのにもかかわらず、安倍内閣は非協力的だったことも記憶に新しい。

 以上を踏まえ、次回は眞子内親王の結婚延期問題の背景に迫りたい。

(構成/須藤 輝)

小田部雄次(おたべ・ゆうじ)
1952年生まれの歴史学者で、静岡福祉大学名誉教授。専門は日本近現代史。皇室史、華族史などに詳しく、著書に『皇族―天皇家の近現代史』(中公新書)、『肖像で見る歴代天皇125代』 (角川新書)などがある。

【歴史学者・小田部雄次氏インタビュー 前編】
【歴史学者・小田部雄次氏インタビュー 後編】

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