結婚適齢期を迎えていく、内親王や女王たち
では今後、皇室の婚姻トラブルの政治による解決は期待できるのかというと、残念ながらできそうにない。
「本来なら、内親王や女王が自分の将来を自分で決められるよう、政治家が法制度を整えなきゃいけない。しかし、男系男子を貫くならその線でしっかり議論すればいいのに、それもやっていない。一方で女性天皇問題も依然としてくすぶっています。悠仁親王が将来の天皇になると100パーセント決まったわけではないし、仮に天皇になったとして、そのあと男子が生まれるかもわからない。それ以前に、悠仁親王の妃候補については考えてもいない。あるいは旧宮家を復活させ、そこから皇位継承者を連れてくるにしても、それを国民に納得させるだけの論理と法的根拠を築き上げなければいけないのに、まったく話が進んでいない。さらに、皇族女子が結婚後も皇室にとどまる女性宮家の議論も棚上げされたまま。この10年間、本当に何もしていないんです」
皇室の将来に向けていくつかの選択肢はあるものの、それが放置されたまま、刻々と時間だけが過ぎていき、内親王や女王がどんどん結婚適齢期を迎えていく……これが皇室の現状であり、このままでは眞子内親王と同種のトラブルが、佳子内親王や愛子内親王の結婚に際して起こってもなんら不思議はない。
男女を問わず、皇室の婚姻に関して議論をし、政治がきちんとした結論を出すこと。それこそが、天皇・皇族の婚姻における無用なトラブルを避けることに繋がるし、ひいては皇室の安定につながっていくのではないだろうか。
(構成/須藤 輝)
小田部雄次(おたべ・ゆうじ)
1952年生まれの歴史学者で、静岡福祉大学名誉教授。専門は日本近現代史。皇室史、華族史などに詳しく、著書に『皇族―天皇家の近現代史』(中公新書)、『肖像で見る歴代天皇125代』 (角川新書)などがある。
【歴史学者・小田部雄次氏インタビュー 前編】
【歴史学者・小田部雄次氏インタビュー 中編】
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