乳腺炎で悩む女性が有名母乳相談室で体験した、壮絶な「母乳マウンティング」

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Thinkstock/Photo by evgenyatamanenko/Photodisc

「『あなたの母乳は冷たくてまずいから、赤ちゃんが飲まないんだ』と言われ、帰り道で涙がこぼれてしまいました」

 30代の主婦Oさんが、〈桶谷(おけたに)式母乳相談室〉を訪れたときの体験談です。Oさんは昨年冬に男児を出産。その後母乳とミルクで子どもを育てていましたが、子どもが3カ月になる頃、乳腺炎を患い、たまたま見つけた〈桶屋式母乳相談室〉へ駆け込んだのだとか。

Oさん(以下O)「出産でお世話になった病院にも乳腺外来はありましたが、触れるだけでも痛い状態の胸で3カ月の乳児と荷物を抱え、電車に乗るのはなかなかハードルが高くて。自宅から一番近いという理由だけで、桶谷式を謳う相談室なるとことろへ駆け込んだんです」

 桶谷式とは〈桶谷式乳房管理法〉という名称で、〈痛くない乳房ケア〉を謳う手技のこと。創立者は、第2次世界大戦中の満州で助産師活動をしていた桶谷そとみ氏。戦時中の栄養不足から母乳が出ず、命を失う赤ちゃんをたくさん見てきたという経験から、お母さんたちの母乳を出すための独自のマッサージを確立したといいます。

 世のママたちを困らせる「人間は哺乳類なんだから、必ず出る」「母親の食べるもので母乳の味が変わる」というお説は、おそらく桶谷式も源流のひとつ。代替品など手にはいらない戦時中の満州で子どもを育てるには、根性論で乗りきらねばならない場面もあったでしょう。でも、今の時代にそのエッセンスを残す必要ってあるのかな~と、思わせる要素満載の、ぶっちゃけクラシカルな母乳育児法です。

まずい母乳、おいしい母乳?

 Oさんが母乳相談室へ駆け込み、まずはじめに驚いたのは〈全身白づくめ〉という施術者の出で立ちと、室内の汚さだったそう。

O「アパートの一室にある相談室に入ると、出てきたのは、全身白づくめの貫禄漂う中年女性。思わず、猫にまで白い布を巻いていた某宗教団体……パナウェーブでしたっけ、それを思い出してしまいました。そして、ぶっきらぼうな対応や、雑然として古く汚い印象の室内の居心地の悪さも加わり、入った瞬間すでに失敗という言葉が頭に浮かびました。施術は背中が痛くなるレベルの硬いベッドに横たわり乳房のマッサージがはじまるんですが、マッサージ中に母乳が吹き出て施術者の手にも自分の顔にもかかるんですよ。そこでまず、『ほら‼ 冷たいのよ! 色も黄色くて、まずい! こんなおっぱいだから、赤ちゃんが飲まない』。だから乳腺が詰まる、というんです」

 出口周辺にたまっていた母乳は、〈今わきたて!〉という状態と比べればわずかにぬるいのかもしれませんが、体内にあったものがそこまで冷たいのか~!? 相談室の助産師(施術者)によって対応にバラつきがあるというのはよく言われることですが、納得しにくいお説を押し付けないよう、認定時に統一したほうがいいのでは。

Oで、マッサージしていると後半に出てくる母乳は作られたてだから、開始直後よりはほんのわずか温かいような気がする。すると、ドヤ顔で『ほら、これがおいしい母乳なのよ!』と」

帰り道、涙が…

 単純に「自分で少し絞ってから飲ませると、赤ちゃんがよく飲んでくれますよ~」程度の説明じゃいけないんですかねえ。わざわざ「まずい!」とママを貶めるパフォーマンスの意義がよくわかりません。まるで、母乳マウンティング。

 しかも赤ちゃんが、ほんのわずかな温度差で「まずい!」と拒否するという話。それが本当なら、常温で飲ませる〈液体ミルク〉を与えられたらどうなるのか。「女将を呼べ!」と激怒する海原雄山のごとく、取りつく島もなくなるのでは?

 また、〈乳腺炎になったから母乳がまずくなり赤ちゃんが飲まない〉のか、〈母乳がまずくて赤ちゃんが飲まず、乳が溜まって乳腺炎になったのか〉、まるでタマゴが先かニワトリが先かという話を聞いているような錯覚が……。

Oほかには『小麦粉禁止』『南のものは体が冷える」などの一部で有名な食事指導や、『あなたはがんばれば母乳だけでいけるはずだから、そうするべき!』とも強く言われましたね。生活サイクル的に必要だから粉ミルクも使っているのですけど、頭ごなしに母乳こそが正義! って感じで、とても疲れました」

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