お母さんと赤ちゃんのための相談室というより、母乳教のための母乳指導? 母乳育児の魅力を伝えるどころかネガティブな印象にしてしまっては、商売あがったりになりそうですけど。
そして疲れきったOさんにさらに追い打ちをかけるのは、施術後に授乳していたときのこと。
O「うちの子、げっぷが下手なんですよね。そこへ早く帰りたいという焦りもあり、授乳が終わった子どもの背中をちょっと強めにトントンしていたんです。そうしたら、次の人を施術していたその助産師が手を止めてすっ飛んできて、『そんなに強く叩かなくていいッ!』と大声で怒鳴るんです。母乳がまずいとけなされるわ怒鳴られるわで、不覚にも帰り道泣いてしまいました」
その相談室へは、二度と行くまいと決心。しかし翌週に再び痛みが出てきたので、次はタクシーで気軽に行かれる距離の、別の桶谷式母乳相談所へ足を運ぶことに。なぜまた桶谷へ? というツッコミは横に置いておきましょう。
O「次の相談所はHPもあり、とてもきれいな店内でした。1回目の相談所でのことを訴えたからか初回は丁寧でやさしい対応でしたね。ところが2回目の施術で、また違和感が。おっぱいの詰まりが、あまり改善されてなかったんですよ。すると『言いつけを破って、ケーキとか甘いものを食べたでしょう!』と」
母乳最高! という価値観
O「『いえ、言われたとおり魚と野菜しか食べてません!』と答えると『おかしいわね……じゃあ、体を冷やす服装をしているからよ!』と、なぜか決めつけ(笑)。私はいつもボトムはロング丈のパンツですし靴下も履いているし、肩を出しているわけでもないし、ごくごくノーマルな服装なんですけど」
あらゆる不調を〈冷え〉のせいにするのって、大変お手軽な対応という印象。「冷え」「愛情不足」「便利なものに頼りすぎ」は、これを繰り出せばとりあえずママたちの罪悪感を刺激しつつ、それっぽく説教できる定番の便利ワードになるつつあるのでは。
その母乳相談室も前回と同様、マンションの1室。自分の前後に来店しているお母さんと施術者のやりとりが筒抜け状態で、そこで見た次のようなやりとりもなかなかのパンチがあったと話すOさん。
O「順番を待っている間に見たのは、〈今スグ断乳したい〉という女性です。保育園も始まるし、自分的にも体力の限界なので、もう明日にでも授乳をやめたいと訴えている話が聞こえてきました。ところが施術者は『いつくらいが目安?』とトンチンカンな対応。今すぐって言ってなかったっけ?」
ほかに適切な相談室があれば
O「その女性が改めて『だから、明日にでも!』と言うと、ありえないという勢いで『ええええ!?』とのけぞっていました。乳房管理的に無理があるというニュアンスではなく、『こんなに出てるのにもったいない』という感じ。そして『やめる前に、授乳している写真を撮っておきなさい!』とか、乳房管理とは別問題だろうという指導へ。授乳写真……私ならちょと無理です(笑)」
結局マッサージを受けると一時的に楽にはなるものの、母乳最高教のような価値観と、根拠のよくわからない食事指導が苦手で、Oさんはその後、〈桶谷式〉には一切近寄らないようになったそう。
現在は順調に離乳食も進み、乳房が痛くなりそうなときは〈積極的に母乳を飲ませる〉という方法で乗りきっているとのこと。しかし桶谷式に不信感を持ちながらも、通っていたときは指導された「キャベツ湿布」※を律儀に続けていたというのですから、Oさんの真面目なお人柄がにじみ出ています。
※熱を盛った乳房に、キャベツの葉を張り付けるという民間療法。その弊害は、過去記事参照。