famliy

目黒虐待死での加害者叩きに虐待サバイバーが懸念、「“親子は一緒にいるのが当然”という空気」こそ変えて

【この記事のキーワード】
meguro

Thinkstock/Photo by moodboard

 東京都目黒区で起きた、船戸結愛(ゆあ)ちゃん(当時5歳)が虐待死した事件は、国政を動かすほどに人々の心を揺さぶっている。

 2018年3月2日、充分な食事や医療を受けさせてもらえなかった結愛ちゃんが、低栄養などが原因の肺炎で搬送先の病院で命を落とした。6月6日には、すでに傷害罪で起訴されていた義父の船戸雄大容疑者(33歳)が保護責任者遺棄致死の疑いで再逮捕、実母の優里容疑者(25歳)も同じ容疑で新たに逮捕された。

 覚えたての平がなで結愛ちゃんがつづった反省文に、テレビ番組で涙するアナウンサーやコメンテーターの姿は記憶に新しい。また、雄大容疑者が「モデル体型にしようとして」食事を制限していたことや、「勉強するように言ったが寝ていたので暴行した」など、子どもの人権を一切無視した蛮行も明るみになり、いまもネット上では「あんなの人間じゃない」「親失格」などと“良識ある人たち”の怒号があふれかえっている。

 また一部では、一家の転居元である香川県の児童相談所が、虐待が発覚したにもかかわらず充分な保護措置を取らなかったことや、転居先である東京の品川児童相談所や警察との連携が不十分ではなかったことを批判する声もある。

 しかし、加害者叩きや児童相談所への批判を複雑な想いで見つめている人たちがいる。ほかでもない、結愛ちゃんと同じく虐待を受けてきた「当事者」たちだ。

 虐待を生きのびてオトナになった人たちを「虐待サバイバー」と呼ぶ。筆者もその一人だ。今回の事件や世間の反応について、当事者たちはいったいどう感じているのか? 筆者の知る、複数のサバイバーたちに率直な想いを聞いてみた。

実は被害者を追いつめている「親叩き」発言

「もしかしたら、あの両親もまた“親の愛情”を知らずに育ったんじゃないですかね」と語るのは、実母から暴力と育児放棄を受けてきたという、ゆうさん(関東在住・27歳)だ。筆者の家庭もそうだったが、親自身もサバイバーだったというケースは決して珍しいことではない。彼女はいま、心を痛めている。

「わたしはこれからの人生を安らかに生きていくために、親をもう責めないと決めました。なのに……最近Twitterで、結愛ちゃんの親を叩くコメントが流れてくると、心が乱れて無力感にさいなまれてしまうんです」(同)

 また、今回のような「親叩き」の風潮が強まることで、サバイバーの間では「かえって虐待の隠蔽が進んでしまうのでは」という危惧も高まっている。ママ友やご近所からのバッシングを恐れた親たちが追いつめられ、誰にもカミングアウトできなくなるからだ。母親の優里容疑者が「自分の立場が危うくなるから」と転居先の東京では児相との関わりを絶ったことは、結果的に虐待に加担することになってしまった。その二の舞が起きることは充分予想できる。

 ネット上やメディアのコメンテーターの発言は、善意からくるものも多いはず。しかし、よかれと思ったことが、「彼らが一番助けたい人たち」をおびやかしている部分もあるとすれば、実に皮肉なことではないだろうか。

 さらに、母親から性的な虐待を受けたという飯田さん(千葉在住・32歳)は、こう漏らす。

「みんな国と児童相談所の責任ばかり求めている気がして、やっぱり他人ごとなのかなぁ。それに“親のクセに!”と怒る人たちは、“親は子を愛すべき”という倫理観を盾に、怒りを発散してスッキリしたがっているだけのようにも思えます」

 虐待をしてしまう親は、決して無責任な人ばかりではない。「子どもには手料理を食べさせなければ」とか「言うことを聞かせなければ」「わが子を愛さなければ」など、子育ての「~ねばならない」に押しつぶされて、わが子にも「~ねばならない」を強要してしまう。結愛ちゃんが書かされた反省文もその表れなのかもしれない。

1 2

帆南ふうこ

1980年生まれ。世界で一番緊張する場所が「家の中」だった虐待サバイバー。ここ数年はライターとして、サバイバー仲間に取材をしながら親交を深めている。「虐待がフランクに語られ、被害者も加害者も相談しやすくなる世の中」を野望に、日々種まき中。

twitter:honami_fuko

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。