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『ザ・ノンフィクション』非婚シングルマザーの生き方を否定も肯定も出来ない理由

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『ザ・ノンフィクション』公式webページより

『ザ・ノンフィクション』公式webページより

 世の中には、離婚でも死別でもなく「非婚」で子供を産み、育てる女性が存在する。私もその一人で、母ひとり子ひとり暮らしている。だが、事情はそれぞれだ。617日放送の『ザ・ノンフィクション あっちゃんと翔平』(フジテレビ系)の主人公“あっちゃん”こと櫨畑(はじはた)敦子さんも非婚のシングルマザーだった。櫨畑さんがメディアに登場するのはこれが初めてではない。かねてより、「非婚」で、友人らと共同生活を営んでいるとしてインタビューなどに応じていた。『ザ・ノンフィクション』放送直前にも、ハフポストでのインタビューが公開されている。

 私は自分自身が非婚出産したこともあって、櫨畑さんがどのように考え、現在どのような環境で子育てを行っているのかに多少なりとも興味があった。櫨畑さんは、ワンオペ育児とは対極の、さまざまな人の手を借りた「共同子育て」をしており、彼女の住む長屋には多くの人が訪れる。かなりオープンな印象だ。子育てするにあたって周囲を巻き込み、協力や助言を得られる環境は基本的に好ましいことであり、特にシングルマザーにとっては心強くもあるだろうが、反面、プライベートをオープンにすることに抵抗を持つ自分には合わない環境だと思った。「おせっかいおばちゃん」なる存在が心強く思える人もいれば、ただただストレスでしかないという人もいるということだ。

 だから、同じ「非婚シングルマザー」ではあるけれども、櫨畑さんのスタンスに特に共感するわけではない。単純にいち視聴者として『ザ・ノンフィクション』を視聴した。放送後から、非婚出産を選んだことをメディアでオープンに語る櫨畑さんに対して、ネット上のみならず、櫨畑さん自身の元にも多くの批判が寄せられているという。人生にも育児にも明確な正解など存在しない以上、現時点では否定できるものでも肯定できるものでもないと思うが、どのような放送だったのか振り返りたい。

心変わりは仕方ない

 『ザ・ノンフィクション あっちゃんと翔平』では、櫨畑さんが結婚に否定的な理由、非婚出産するまでの経緯、大阪の長屋での共同子育て、そして櫨畑さんの子供の生物学上の父親である男性・翔平さんとの関係などについてスポットが当てられた。

 現在31歳の櫨畑さんは、20代後半で“結婚はしたくないけど子供は欲しい”と考え、実際に行動に移し、20179月に第一子となる女児を「非婚」で出産した。つまり、自ら非婚出産してシングルマザーとなる道を選んだということだ。

 シングルマザーというと「ワンオペ育児」「女手一つ」のイメージで苦労とセットで語られがちだが、前述のように大阪府の長屋で暮らす櫨畑さん親子の周囲には協力的な友人が多く、櫨畑さんの子供は「共同子育て」によって育てられている。仲間とみんなで子育てをしていきたいと考えていた櫨畑さんにとってそれは理想的な環境なのだろう。

 非婚出産に理解・協力してくれる相手を「めちゃくちゃ探した」という櫨畑さん。お見合いや妊娠目的の契約結婚、同性愛カップルからの精子提供も検討したがそれらはうまくいかず、最終的に見つけたのは、東京で日雇いの仕事をしながらプロの写真家を目指す井口翔平さんだった。

 櫨畑さんは翔平さんに“一目惚れ”して、何度か会ううちに、子供が欲しいこと、ただし認知・同居・養育費は求めないことを伝えた。最初は戸惑った翔平さんだが、ふたりは関係を持ち、櫨畑さんは妊娠・出産。

 いざ子供が生まれると、櫨畑さんと翔平さん、それぞれに気持ちの変化が起きた。翔平さんは思いがけず子供を「かわいい」と感じ、成長過程を見たくなった。櫨畑さんは、子供をかわいがる翔平さんへの愛しさが高まり、自分の精神的支えになってほしいと望み、大阪に来ないかと誘った。しかし翔平さんは悩んだ末に「まだ東京にいたい」と断り、結婚だけでなく恋人と「ふたりきり」で過ごすことに苦手意識のある櫨畑さんも「それなら私が上京」という選択はしなかった。

 番組で焦点を当てられていたのは、翔平さんの身の振り方だった。翔平さんが他の女性と恋愛関係になったことを知った櫨畑さんは、それを「裏切り」と受け取った。結婚や恋人関係に苦手意識がある櫨畑さんだが、だからといって恋愛感情を抱かないわけではない。連絡を取り合い、出産にも立ち会い、子供にも対面した翔平さんのことは単なる精子提供者という位置付けではなく、自分のパートナー的存在のように捉えていたようだ。一方、翔平さんは、子供への愛情を持っているが、櫨畑さんへの恋愛感情とはまた別だったのだろう。他の女性との関係を持ったことについて「浮気なのか?」「俺悪いんですかね?」と困惑する。話し合いの末、翔平さんは櫨畑さんのパートナーにも子供の父親にもなれないことを告げ、子供とは会いたい時に会うことになった。

 たとえばだがAID(第三者の精子提供による人工授精)を利用しての非婚出産であれば、このような軋轢や葛藤は生まれなかったかもしれない。人間関係を継続していく中でそれぞれに気持ちの変化が生じるのは、ある意味「仕方のないこと」で、「よくあること」と言える。今回の櫨畑さんと翔平さんの場合もそういったひとつのケースに過ぎないと私は捉えたのだが、ネット上には櫨畑さんに対する「約束が違うだろう」という批判、そして翔平さんへの同情が寄せられている。「子供がかわいそう」という声もあるし、それ以前に非婚出産の経緯に嫌悪感を抱く声もあった。

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中崎亜衣

1987年生まれの未婚シングルマザー。お金はないけどしがらみもないのをいいことに、自由にゆる~く娘と暮らしている。90年代りぼん、邦画、小説、古着、カフェが好き。

@pinkmooncandy

バナナ&ストロベリー

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