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スーパースターのイニエスタがJリーグでプレーすることの恩恵

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2018 FIFA W杯 スペイン対イラン戦でのアンドレス・イニエスタ 写真:AFP/アフロ

Jリーグ史上最高の年俸325000万円で神戸を選んだ天才プレイヤー

 524日、J1ヴィッセル神戸が、スペイン代表MFアンドレス・イニエスタを完全移籍で獲得したことを正式に発表した。イニエスタ自身から、スペイン・リーグ名門クラブ、FCバルセロナを退団する旨が明かされて以来、その去就には全世界のサッカーファンが注目していた。世界的トッププレイヤーがJリーグでプレーすることは、日本サッカー界全体に多大な恩恵を与えてくれるだろう。

 イニエスタの年齢は、この5月で34歳。1996年、FCバルセロナに入団し、生え抜き選手として同クラブに22年間在籍していた。スペインの国内リーグ優勝9回、ヨーロッパのNo.1クラブチームを争うUEFAチャンピオンズリーグ優勝4回など、同クラブで計32個のタイトルを獲得している。また、スペイン代表として、2008年、2012年の二度UEFA欧州選手権(EURO)を制覇、2010年にはFIFAワールドカップ 南アフリカ大会決勝のオランダ戦で、スペインの初優勝をたぐり寄せる延長での決勝点を挙げた。

 ヴィッセル神戸とイニエスタの契約は、日本円にして年俸325000万円の3年契約(推定)といわれている。Jリーグのチーム別年俸ランキングの1位はヴィッセル神戸だが、これは年俸6億円(推定)のルーカス・ポドルスキが在籍しているからであり、2位の川崎フロンターレ、3位の名古屋グランパス、4位の鹿島アントラーズを合わせた総年俸・約34億円で、どうにかイニエスタひとりの年俸に匹敵する。

歴代のスーパースターはJリーグでどれだけ活躍したのか?

 イニエスタの契約額は、Jリーグ史上、断トツのトップである。だが、イニエスタが年俸に見合う活躍をしてくれるかどうかわからないのもまた事実。これまでにも、サッカー界のスーパースターと呼ばれている選手たちが幾人もJリーグにやってきた。高額な金銭が動いたのにもかかわらず、期待を下回る成績となった選手も少なくない。

 2014年、セレッソ大阪が獲得したのは元ウルグアイ代表FWディエゴ・フォルラン。2010年のW杯 南アフリカ大会で5得点を決め、得点王とMVPFIFAゴールデンボール賞)に選ばれた。年俸は約6億円(推定)。だが、入団の年、セレッソ大阪はJ2に陥落した。フォルランが在籍中の1年半に決めたゴールは全17得点(内J210得点)であった。

  1993年、Jリーグ開幕時に名古屋グランパスエイトと契約したイングランド代表、ゲーリー・リネカー。1986年のW杯メキシコ大会では、ハットトリックを含む6得点で得点王に輝いた。年俸は約3億円(推定)。怪我の影響もあり、2シーズンで出場18試合の4得点に終わっている。

 また、2002年のW杯日韓大会でトルコを3位に躍進させる活躍をみせたイルハン・マンスズが、2004年にヴィッセル神戸と移籍金5億円、年俸35000万円の年契約を交わしたが、わずか4カ月の在籍で帰国してしまったようなケースもあった。高額な選手との契約は、サッカーに限らず、チーム側にとってある意味ギャンブル要素が高いことは否定できない。

Jリーグの発展に貢献したジーコの功績

 もちろん、成功例もある。その筆頭に挙がるのが、ブラジル出身の神様ジーコだ。ジーコは自国の代表として3度のW杯に出場。特に、1982年のW杯スペイン大会では、ソクラテス、ファルカン、トニーニョ・セレーゾと共に「黄金のカルテット」と呼ばれていた。そんなジーコが、1993年のJリーグ開催年に鹿島アントラーズの一員としてピッチに立ったことは奇跡だった。ジーコが来日当初に鹿島アントラーズと契約した年俸は約4100万円(推定)と言われている。その後、代表監督をはじめ、日本のサッカー界にもたらした功績を考えれば、超がつく破格値であった。

 ジーコが残した功績として第一に挙げられるのが、主に自国ブラジルを中心とした海外からの選手がJリーグに移籍したことだ。ジーコは、鹿島アントラーズでの相棒として、自国ブラジルからアルシンド・サルトーリを呼び寄せた。アルシンドは決して世界的に名前を知られた選手ではなかったが、Jリーグ初年度から大活躍。個性的な髪型などからメディアでも人気になり、CM出演するなど、Jリーグの盛り上げに一役買った。

 アルシンド以外で、ジーコがJリーグに誘ったとされるブラジル選手としては、現役ブラジル代表の右サイドバックだったジョルジーニョ、1994年のW杯で優勝した際のFWベベット、レオ様と呼ばれ人気と実力の両方を兼ね備えていたレオナルドなど。ジーコというビッグネームがいなければ、Jリーグへの移籍につながらなかったケースも多いはずだ。2017年シーズン、アルビレックス新潟から鹿島アントラーズへ移籍してきたブラジル人MFレオ・シルバも「鹿島アントラーズ? ああジーコがプレーしたクラブだろう」と答えている。現在でも、鹿島アントラーズには、ジーコが植え付けたブラジルのDNAが息づいている。

イニエスタはスペイン仕込みの「ティキ・タカ」をJリーグにもたらすか?

 長年、イニエスタがプレーしてきたFCバルセロナやスペイン代表が推し進めてきた「ティキ・タカ」と呼ばれる圧倒的なポゼッションサッカーは、日本でも人気が高い。フィジカル面で決して優れているといえない日本人には、学ぶべきことが多いスタイルである。しかし、サッカーは11人で行うスポーツだ。イニエスタひとりで、「ティキ・タカ」をヴィッセル神戸や日本のサッカー界に落とし込むのは難しいかもしれない。だが、イニエスタに対する期待として、「ティキ・タカ」が日本に定着することを望んでいるサッカー選手やファンも多いはずだ。もし、そうなれば、日本のサッカー界において、年俸以上の恩恵となり得るだろう。また、ジーコのようにイニエスタのおかげで、Jリーグへの移籍を視野に入れるスペイン選手が増える可能性もゼロではない。

 614日、2018 FIFAワールドカップ ロシア大会が開幕した。スペインがW杯に臨む23人のメンバーには、ヴィッセル神戸に移籍したイニエスタも、中心選手のひとりとして選ばれている。前回のW杯でスペインは、初戦でオランダに15と大敗を喫し、グループリーグで大会を後にした。年齢的に最後と噂されているイニエスタにとって、今回のW杯にかける思いはこれまで以上に強いはずだ。

 616日の初戦ではポルトガルとW杯史上に残るような熱戦を繰り広げ、先発したイニエスタは世界にその存在感を見せつけた。このまま、イニエスタが活躍し、スペインがW杯を勝ち進んでいけば、Jリーグの知名度も確実に上がっていく。日本代表の勝敗が気になるところだが、今回のW杯では、イニエスタのプレーにも注目したい。

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