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低所得者ほど家族の介護時間が長く、さらに抑うつリスクが高くなることが、国立長寿医療研究センターの調査によって明らかになった。所得額が318万円以上の世帯に比べて、130万円以下の世帯の「週36時間以上介護」「週72時間以上介護」リスクは、それぞれ1.43倍、1.79倍。生活保護受給世帯に関しては、「週72時間以上介護」のリスクが2.68倍にもなっている。また生活保護受給世帯については、抑うつリスクも3.1倍だった。
この分析は、「日本老年学的評価研究」により調査を用いて、65歳以上の介護者1.782名を対象に、世帯所得ごと4つのグループと生活保護受給者にわけて行われたもの。国立長寿医療研究センターのプレスリリースは、低所得の介護者ほど長時間介護や抑うつ傾向のリスクが高い可能性があると指摘。ただし抑うつリスクについては、非介護者と比較したところ、統計的に意味のある違いは見られなかったとし、所得による抑うつ傾向は、介護保険制度の枠を超えた対策が必要だとまとめられている(低所得者ほど重い介護負担 長時間介護リスクは約2~3倍、抑うつリスクは約3倍)。
今月15日、政府は「経済財政運営と改革の基本方針2018」を閣議決定した。この中では、人口減少・少子高齢化などの影響によって増大する社会保障費の抑制のために、医療や介護等で、利用者の負担を増やすような方針が打ち出されている。介護に関しては、介護保険を利用するためのケアマネージャーによるケアプラン作成の有料化や、地域支援事業への移行による介護保険サービス利用の抑制などが提言されていた。
ケアプラン作成の有料化については、介護保険サービスの利用控えに繋がるのではないか、と与党内でも批判があったものだ。国立長寿医療研究センターの調査で明らかになったのは、低所得者世帯ほど家族による介護時間が長い、ということだ。有料化によって、介護保険サービスの利用を控えたり、生活が苦しくなる世帯が増えてくる可能性がある。
また、介護保険サービスを自己負担ゼロで受けられる生活保護世帯が最も家族で介護を抱え込んでいる現状もこの調査で判明している。これは生活保護世帯が、介護保険サービスの内容について知らされていない、あるいは利用をためらってしまっているといった要因も考えられるだろう。
様々な課題を抱える中、国がとるべき方針は、社会保障費を抑制し、国民に自己負担を強いるのではなく、社会保障をより充実させ、国民の生活を安定させることなのではないか。一時的な社会保障費の増大は避けられないにしても、長い目で見てどちらが国家の成長に寄与するかは明らかだろう。