
『二階俊博―全身政治家―』(日本僑報社)
自民党・二階俊博幹事長が今月26日で開かれた東京都内での講演で「この頃、子どもを産まないほうが幸せじゃないかと勝手なことを考える人がいる」と述べたことを共同通信が報じた(二階氏「産まない」は勝手な考え)。二階幹事長は「皆が幸せになるため、子どもをたくさん産み、国も発展していこう」「今は食べるのに困る家はない。こんなに素晴らしい幸せな国はない」とも述べていたという。
今年5月には同党の加藤寛治衆議院議員が、細田派の派閥総会で「結婚しなければ子供が生まれない。人様の子どもの税金で(運営される)老人ホームに行くことになる」「必ず新郎新婦に3人以上の子供を産み育てていただきたいとお願いする。いくら努力しても子どもに恵まれない方々がおり、そういう方々のために3人以上が必要だ」と、結婚披露宴で若い女性たちに話していることを明かし、批判が殺到したばかり。翌日には、「誤解を与えた事に対し、おわびします。決して女性を蔑視している訳ではありませんが、そのようにとられてしまうような発言でありましたので撤回します」とコメントしている。
結婚や子供を産み育てることこそが幸せであるという価値観を披露する政治家は少なくない。やはり自民党の山東昭子議員は昨年11月、党役員連絡会で「子どもを4人以上産んだ女性を厚生労働省で表彰することを検討してはどうか」と発言、朝日新聞の取材に対し「女性活躍社会で仕事をしている人が評価されるようになって、逆に主婦が評価されていないという声もあるので、どうだろうかと発言した」と答えている(山東昭子「4人以上産んだ女性を表彰」の発想は戦前にもあった。誰も国のために子どもを産んでいるわけではない)
2014年4月には、またも自民党の大西英男議員が衆議院総務委員会で、上西小百合議員に「まずは自分が子どもを産まないとダメだ」とヤジを飛ばしたこともあった。同年6月、都議会で塩原文香都議に対して、「早く結婚したらいい」「産めないのか」とヤジを飛ばした自民党会派の鈴木章浩都議は、当時勤めていた総務委員会の副院長を退任し、会派を離脱したが、自民党から離島はせず、2015年には復帰、2017年の都議会選挙で当選した後には同会派の政務調査会長い就任している。
古くは2007年、当時の厚生労働大臣だった柳澤伯夫議員が「…女性の数は決まっている。産む機械、装置の数は決まっている」という、いわゆる「産む機械」発言をして大問題になった。柳澤議員は、その後も「若い人たちというのは、結婚をしたい。それから子どもも二人以上持ちたいと、極めて健全な状況にいるわけです」とも語っている。
このように、結婚や出産・育児について、保守的な価値観に基づいた政治家の問題発言は数多い。その度に問題視され、批判的な指摘を受け、謝罪や釈明をしてきたにもかかわらず、二階幹事長のように、同様の発言を繰り返す議員は後を絶たない。こうした見解を正統なものだと認識する議員らのもとで、女性活躍や少子化対策が進められているわけだ。
結婚や出産は、国のためにするものではない。子供を産まないことは勝手なことではない。国にも他人にも強制されることなく、結婚したい、出産したいと思う人が選択すべきものだ。政治家の仕事は国民がそうした選択を取れるように現実に即した政策を検討し実施していくではないだろうか。