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厚生労働省が2017年度の労働紛争に関する調査結果を今月27日に発表した。この調査は、労働者と事業主との間で、労働条件や職場環境などを巡るトラブルを未然に防止し、解決を図るための「個別労働紛争解決制度」の施行状況を調べたもの。「個別労働紛争解決制度」に基づいた総合相談の件数は110万4758件で、10年連続で100万件を超え高止まりが続いている(「平成29年度個別労働紛争解決制度の施行状況」を公表します)。
調査によれば、民事上の個別労働紛争相談件数は25万3005件と昨年に比べ1%減少している。一方で、民事上の個別労働紛争の相談件数、助言・指導の申出件数については、「いじめ・嫌がらせ」が昨年より2%近く増加し、ここ数年トップのままでいる。あっせんの申請件数についても、昨年より減少しているものの、「いじめ・嫌がらせ」に関するものがトップ。「いじめ・嫌がらせ」には、パワーハラスメントなどが含まれる。
なお、民事上の個別労働紛争とは、労働基準法等の違反に関するものを除いた、労働者と事業主との紛争のこと。「いじめ・嫌がらせ」のほかに、「自己都合退職」「解雇」「労働条件の引下げ」「退職勧奨」「雇止め」など様々ある。「助言・指導」は、紛争当事者に対して、話し合いを促進したり、問題を指摘し、解決の方向性を示したりするもののことだ。
「いじめ・嫌がらせ」の他の相談内容の多くは若干の減少傾向がみられたが、「雇止め」は昨年から15.5%増の1万4442件。これは、有期労働契約が更新され、通算5年を超えたとき、労働者の希望によって無期労働契約に変更できる「無期転換ルール」が今年4月から本格的に適用されるになったことを見越して、事前に契約更新を打ち切る例が増えていたと考えられる。
厚労省は、「いじめ・嫌がらせ」の相談件数が増えた背景に、「パワハラへの関心が高まり、労働者が積極的に相談しようという雰囲気が高まっているのでは」と話す。確かに、この1年の間に、政治、報道、芸能、スポーツなど様々な分野でセクシュアル・ハラスメント、パワーハラスメントに関するニュースが日々流れていた。相談件数の増加は、それらニュースが特別なことではなく、一般社会に当たり前に存在してきたことを明らかにしたものだろう。労働者が、相談できるようになったということを歓迎するだけでなく、事前にハラスメントを防止する対策こと必要ではないだろうか。