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兵庫県明石市は25日、元産業文化振興部長(59)が、2016~17年度の間に男女の部下9人に暴行やセクハラを繰り返していたと発表。市は同日付で停職6カ月の懲戒処分を下し、元部長は同日付で依願退職した。
報道によれば、元部長は、男性1人の頬を平手で叩き、女性1人の顔に向けて殺虫剤を噴射。懇親会などで部下の男女3人にプロレス技の「ヘッドロック」をしたり、女性5人の頭や肩を撫でたりなどのセクハラ行為をした。これらの行為の大半は飲酒中で、元部長は「酒の席で意識せずに行った。(暴力行為は)スキンシップだった」と釈明しているようだ。
顔に殺虫剤を噴射されたら最悪、失明する恐れもある。上記の行為はどれも暴力であり、スキンシップと捉えられるようなものはひとつもない。にもかかわらず、市の下した停職6カ月という判断は果たして妥当といえるのだろうか。
市によれば、2014年度にも被害を受けたという申告があったという。当時、どのような対応がとられたかはわからないが、最近までハラスメント行為が続いていたとなると、適切な措置がされていなかった可能性がある。部長という役職に“忖度”が働いたのか、あるいは職場でのパワハラ・セクハラを関知しても対策部隊が機能していなかったのか。
パワハラやセクハラは、学校や職場などで「上司から部下へ」「元請けから下請けへ」といった上下関係を背景に発生しやすい。上役からハラスメント発言をされても、今後の関係性を考慮し、下役が素直に「やめてください」「嫌です」と声を上げられない構造がある。また、被害を訴える声を上げても握りつぶされたり、被害者がかえって理不尽な目に遭う可能性もある。被害が発生したとき、立場の弱い人間であっても声を上げられる仕組みや環境が整い、事実の検証と公正な判断をする第三者委員会が適切に機能することが重要だ。
そもそもパワハラやセクハラを発生させないためには、上役のコンプライアンス認識を徹底する必要がある。無意識のハラスメントも防止すべく、まずは自分が「権力や影響力がある役職に就いている」ことを正確に認識し、意識的に部下や下請けに配慮しなければならない。
また、明石市の事件で元部長は「酒の席で意識せず行った」と釈明しているが、アルコールは何の言い訳にもならない。“酒の席は無礼講”と言われるが、それは下役に向けられた言葉ではないだろうか? アルコールが入ると気持ちが大きくなり、他者への配慮が散漫になりやすく、飲み会は最もパワハラやセクハラが起きやすい環境と言える。もし、飲み会が“ハラスメントのバーゲンセール”になっているなら、酒ありきのコミュニケーションにも制限をかけなければならなくなるかもしれない。