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「今日、子宮頸がんワクチンを打ってきました」“予防できるがん”としての子宮頸がんを考える/ジャーナリスト村中璃子さんインタビュー

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インタビュー本文中の記述にある通り、取材当日に子宮頸がんワクチンを打ってきたという村中璃子さん

早期発見で子宮を失わなくても、おなかの赤ちゃんや性生活に支障を来す

――子宮頸がんは、検診で早期発見さえできれば、子宮も失わなくて済むと聞きますが……。

村中璃子 そうですね。先述の通り、前がん病変や早期のがんでは、「円錐切除」といって子宮の入り口の部分を円錐形に切り抜く手術を受けるだけで、子宮を温存することができます。しかしこの円錐切除をすると、早産・流産のリスクが高まります。子宮の入り口にメスを入れるので、おなかの赤ちゃんが出てきやすくなってしまうわけです。早産になれば当然、赤ちゃんも未熟で、低体重だったり死亡したりするリスクも高くなる。つまり子宮頸がんは女性だけでなく、おなかの赤ちゃんの命や健康もおびやかす病気なんです。

 もう少しステージの進んだがんになると、今度は広汎子宮全摘という手術をすることになります。これは文字どおり子宮を失うので、妊娠ができなくなります。子宮を摘出してもセックス自体は可能ですが、膣が短くなるため違和感や痛みを感じやすく、性的な満足度が下がるという報告もあります。放射線治療が適応になっても、照射の影響で膣の湿潤性が低下し、やはり性交障害につながります。

――つまり、「検診をしっかり受けて、早期発見すればよい」という単純な話ではないわけですね。

村中璃子 そうなんです。プライベートな話なのでなかなか表に出てきませんが、出血や痛みが気になったり、再発が怖くて、性生活がなくなってしまうケースも多いようです。また、セックスが原因となる病気だけに、男女共に「HPVを誰からもらったんだろう?」と疑心暗鬼になったり、夫のほうが「自分がHPVをうつしたのかもしれない……」と思い悩むケースもあります。海外のケースですが、初体験の相手同士だと言って結婚したのに、妻が子宮頸がんになり、互いに相手を信頼できなくなったという夫婦の話も聞きました。また、妻を子宮頸がんで亡くした男性の中には、「きっと、自分が妻にHPVをうつして死なせたに違いない」などと思い続ける人もいるようです。

子宮頸がん発症年齢は、低年齢化している

――かつて子宮頸がんは、「子宮を取ってしまえば治る病気」とされていたと聞いたことがあります。女性からすれば非常にショッキングな話ですが……。

村中璃子 それは、ちょっと誤解がありますね。以前は、出産を終えた高齢者に子宮頸がんの罹患のピークがあったため、そういう考え方もありましたが、今はそんなことを言う人はまずいません。先ほど述べた通り、患者は低年齢化しており、罹患のピークは子育て世代、働き盛りの女性です。その原因ははっきりとはわかっていませんが、初交年齢の低下が関係しているのではないかといわれています。

 子宮頸がんは検診率を100%にして早期発見に努めれば、死者を限りなくゼロに近づけられる病気です。しかし検診には見逃しもあり、たとえ検診で早期発見ができたとしても、罹患を防ぐことはできません。円錐切除で済めば、命や子宮を失うことはないとはいえ、妊娠・出産・性生活が犠牲になるリスクを伴い、再発のリスクも残ります。

 これまでにも私は、ワクチンを打ったほうがいいとか打たないほうがいいとかいう話をしたことはありません。しかし、これからもひとりの医師として、またひとりの女性として、科学的知識に基づく正しい情報が社会に届くよう、執筆を続けていきたいと思っています。

(構成/中田百合)

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【書籍紹介】
村中璃子『10万個の子宮 あの激しいけいれんは子宮頸がんワクチンの副反応なのか』(平凡社)

2013年4月に定期接種となりながら、その2カ月後、国が一転「積極的な接種勧奨の一時的な差し控え」を決定した、「HPVワクチン」こと「子宮頸がんワクチン」。その決定の背景には、「副反応」を指摘する声があったのだが、“被害者”である少女たちが訴えたとされる、けいれんや記憶力低下などの「副反応」はいったいなんだったのか? それは本当に、HPVワクチンの「副反応」なのかーー?

現役医師でもある著者が、“被害者”やその親、医療関係者などに対し膨大な取材を重ねた結果、見えてきた“真実”とは? 世界的に広がる「反知性主義」にまつわる諸問題ついても考えさせられる、衝撃のノンフィクション。

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