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宇多田ヒカルの言葉へのこだわり。新作『初恋』では「パクチー」から「セックスレス」まで幅広く自由に

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宇多田ヒカル『初恋』

 本日(630日)の2210分より放送される『SONGS』(NHK)に、宇多田ヒカルが出演する。宇多田ヒカルは627日にニューアルバム『初恋』をリリースしたばかり。番組では、アルバム収録曲から「初恋」「Play A Love Song」「あなた」の3曲の歌唱が披露される。

 この番組では、宇多田ヒカルの「言葉」に着目。宇多田の指名により、芥川賞作家・又吉直樹との対談も実現し、「言葉」をテーマに語り合う予定だ。

 宇多田ヒカルにとって「歌詞」は表現における重要なファクターである。“最”重要ファクターと言ってもいいのかもしれない。彼女は、<トラックやメロディは、コードにテンションがあって変わったところに飛んでも、特に日本語の曲においては歌詞さえ伝わればなんとでもなると思っているんです>(「SWITCH20185月号/スイッチ・パブリッシング)と語ったことすらあるからだ。

 彼女の「言葉」へのこだわりは、小袋成彬の証言からも明らか。小袋は『初恋』でも、「Too Proudfeaturing Jevon)」では編曲に、「パクチーの唄」では作曲に関わっており、その音楽センスは宇多田ヒカルの信頼を得ているようだが、その一方、彼は『分離派の夏』(宇多田がプロデュースを務めている)の制作において、「歌詞」の面で宇多田からかなりダメ出しをもらったと証言している。ウェブサイト「Real Sound」では、<宇多田さんは歌詞にすごく厳しい方で、僕がメロディを適当にごまかしたり、歌詞の表現がユルいと、バシバシ指摘してくるんですよ。「これは最後まで考えてるの?」と聞いてくるんです。僕は完成したと思って聴いてもらっても「まだ」と言われたり。そういう押し問答がずっと続いて、嫌いになるんじゃないかという時期もあったんですけど(笑)>とのエピソードを語っていた。

 昨年12月、彼女は自身の歌詞を一冊の本にまとめた『宇多田ヒカルの言葉』(エムオン・エンタテインメント)という歌詞集を出版している。その「まえがき」のなかで彼女は、キャリアを通して歌詞の捉え方が変わっていったと自己分析し、自ら三つの時期に分類している。

<初期は「自分の無意識にあるものを表面にすくい上げる行為」を無意識にしていた。それを意識的に行うようになり、すくい上げるというより潜りに行くようになったのが第二期で、表現の密度も増して物書きとして新しい段階に入った手応えがあった。第三期では、活動休止とともに一個人としての止まっていた時計が動き出し、自らに課していたさまざまな検閲を取り払うことで表現の幅が広がり、それまでになく己をさらけ出すような作品もそれまでになくフィクション性の高い作品も登場する>

 前掲「SWITCH」で宇多田は、<最近は『Fantôme』で獲得することのできた、創作における新しい自由を楽しんでいる時期なのかも>と語っているが、今回のアルバム『初恋』では、確かに、検閲を取り払った「第三期」の自由を感じることのできる作品も多い。たとえば、「Too Proudfeaturing Jevon)」では“セックスレス”をテーマにしてみたり(彼女自身オフィシャルインタビューで認めている)、ファンの間で「ぼくはくま」を思い起こさせると話題の「パクチーの唄」では<パクチー ぱくぱく/パクチー ぱくぱく/パクチー ぱくぱく/パクチー ぱくぱく/ぱくぱく パクチー>と歌ってみせたりしている。

 今夜の又吉との対談で、彼女は「言葉」についてどのように語るのか。そこで語られる証言を得た後に聴く『初恋』は、また違った味わいをもつはずだ。

(倉野尾 実)

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