「日本は女性にとって安全な国」か 痴漢や暴行、相談できず表面化しないケースも

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Thinstock/Photo by ronniechua

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 英トムソン・ロイター財団が626日、「女性にとって最も危険な10カ国」を発表。専門家548人を対象に「医療アクセス」「経済的差別」「女性差別的な文化」「性的暴力」「非性的暴力」「人身売買」の6つの観点から調査し、1位にインドが選出された。以下、アフガニスタン、シリア、ソマリア、サウジアラビア、パキスタン、コンゴ民主共和国、イエメン、ナイジェリア、アメリカの順となった。

 インドが「女性にとって最も危険な国」だと評される理由として、残忍な性暴力事件の報道を連想する人は多いかもしれない。生後21ヶ月の赤ちゃんが近隣住人の男性にレイプされた事件、襲われた際に抵抗したら顔に硫酸をかけられた事件など、その内容も言葉にできないほど過激な事件報道を耳にして衝撃を受けた経験はあるだろう。さらに、性暴力の加害者に対する裁きが軽すぎるという印象を持つ人もいるのではないか。たとえば16歳の少女をレイプした2人の男に対して少女の家族が被害の声を上げたが、地元の村議会は容疑者の男達に対して腹筋100百回と5万ルピー(約8万円)の罰金を命じただけ――といった耳を疑うような事件報道もあった。ちなみに、この事件には続きがあり、男2人は報復で、少女の両親を殴打した後、少女に火をつけ殺害した。

 翻って、日本は女性にとって安全な国だと認識している人も多いだろう。同財団は昨年、人口が1000万人以上の世界の都市を対象に「女性が暮らしやすい都市」も調査しており、東京が2位に選ばれた(1位はロンドン)。特に性的暴力のリスクが最も低い都市は東京だとされ、インドのニューデリーは同調査でも性的暴力や嫌がらせのカテゴリで最下位。しかしこれは相対的な話であり、日本に改善点の必要がないかといえば全くそんなことはないだろう。

 女性が性的暴行をくわえられる事件報道は、日本でも決して少なくはない。今年4月に福岡で佐川急便の配達員だった男が、配達先の母子家庭の高校生の少女に性的暴行を加えたとして、強制性交等罪で逮捕、起訴された。男はこの家庭事情を詳しく知っており、計画的犯行だった可能性が示唆されている。昨夏は大学生による集団での性的暴行事件報道も相次いだ。電車内での痴漢被害もある。そして昨年、ジャーナリストの伊藤詩織さんがレイプ被害に遭ったことを告発したことは、現在に至るまで世界各国から注目を浴びている。同時に日本国内では、伊藤さんの告発を取るに足らないことだと決め付けたセカンドレイプも横行している。

 また、犯罪件数が低ければそれでOKということは決してない。警察庁は今年、性犯罪や児童虐待など潜在化しやすい犯罪の実態について、インターネットを通じてアンケート調査をおこなったが、それによれば「性的被害に初めて遭った際、誰にも相談しない人」が52.1%にものぼった。「他人に被害を知られたくない」「適切な相談窓口がわからない」などの理由から半数以上が声を上げることができなかったことを考えると、私達が普段目にするニュースは氷山の一角でしかないのだろう。犯罪の抑制に取り組むと同時に、被害者が声を上げやすい社会環境を作っていくことが重要だ。

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