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介護現場からの“#MeToo”運動 利用者だけでなくその家族からも7割がハラスメント被害

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Thinkstock/Photo by Halfpoint

 つばを吐きかけられたり、噛みつかれそうになったり。ケア中にアダルトビデオを見せつけられたり、はたまた抱きつかれ、ベッドに押し倒されたり――。介護職員の労働組合「UAゼンセン・日本介護クラフトユニオン(NCCU)」は2018年6月21日、介護職員の74.2%が、利用者または家族からのセクハラもしくはパワハラを経験しているとするアンケート結果を公表した。

 NCCUは4月10日、組合員約7万8000人に、「ご利用者·ご家族からのハラスメントに関するアンケート」と題する調査票を送付。翌5月末の締め切りまでに、介護従事者2411人(女性2107人、男性293人、性別無回答11人)から回答を得た。それによれば、回答者全体のうちの74.2%(1790人)がセクハラ、またはパワハラ等なんらかのハラスメントを受けたと回答したという。

「セクハラを受けたことがある」と答えた女性職員は685人(32.6%)、男性職員は30人(10.2%)。「どのようなセクハラに遭遇したか(複数回答)」を見ると、「サービス提供上、不必要に個人的な接触をはかる」(53.5%)、「性的冗談を繰り返したり、しつこく言う」(52.6%)、「サービス提供中に胸や腰などをじっと見る」(26.7%)と続いた。

 一方、パワハラを受けたことがある」と答えた女性職員は1488人(70.6%)、男性職員は193人(65.9%)。パワハラの内容(複数回答)は、「攻撃的態度で大声を出す」(61.4%)が最も多く、次いで「『○○さんはやってくれた』等他者を引き合いに出し強要する」(52.4%)、「サービス契約上受けていないサービスを要求する」(34.3%)と続いた。

 ハラスメントを受けた職員の関わっていた介護サービスを見ると、訪問介護が51.3%と圧倒的に多い。サービスを提供する場が利用者の自宅であり、人目につきにくく密室状態となる訪問系介護職員に、ハラスメントが集中している実態が明らかとなった。

 このように介護現場のハラスメントの大きな特徴は、一般的な職場におけるものと同様の上司や同僚などによるハラスメント以外に、サービス利用者や家族によるハラスメントの存在が大きいことが挙げられよう。介護職員にとって利用者、そしてその家族は顧客に当たるため、セクハラもパワハラも、なかなか表沙汰になりにくいというわけである。

 認知症等などの疑いがある利用者が体を触るなどの事例とは別に、今回特に目を引いたのが、正常な判断力を有するはずの利用者家族による介護職員へのセクハラ、パワハラが少なからず存在するという実態である。ハラスメントの具体的な内容を示す自由記述欄では、「掃除機をかけている時に、利用者の50代の息子に後ろから抱きつかれた」「入浴介護中に利用者の息子からお尻を触られた上、言葉によるセクハラを受けた」「利用者の息子から『いくらもらっているの? 俺が面倒見てやるよ』と言われた際に相手にしなかったら、後で事業所の方に、『○○さんはやり方が母に対して冷たい。来させないほしい』と連絡された」等々、利用者家族による数々のハラスメントの実例が寄せられた。「訪問介護のスタッフが利用者の家族からレイプされた」など、セクハラの域を超え、性犯罪としか呼べないような事例の記述さえあったという。

上司・同僚に相談しても、改善されないハラスメント

 セクハラを受けた者のうち79.4%、パワハラに関しては75.1%が上司や同僚に相談したが、それで改善されるケースは多くない。相談後も状況が「変わらなかった」と回答した人がセクハラでは48.5%、パワハラでは43.5%を占めた。

 セクハラ被害を誰にも相談しなかったのは19.0%、パワハラ被害を相談しなかったのは22.8%。相談しても解決しないと思った理由には、「介護職は我慢するのが当然という風潮」「ハラスメントを受けるのも業務のうち」「性的ハラスメントは恥ずかしく言えなかった」などが挙げられた。

 こうした状況について、今回の報告を行ったNCCUの村上久美子政策部門長は、「ハラスメントを受けた介護職員が最初に相談するのは上司、同僚が多い。労働組合への相談はほとんどない。やはり、身近にいる人のほうが相談しやすいのだと思う。だから、上司、管理職の対応次第で相談後の状況も変わってくる。管理職の人が何もしないで『受け流しなさい』と言ってしまったら何も変わらない」と述べ、今後は管理職らを対象に、部下がハラスメントを受けた時にどう対応すべきかの啓蒙活動を実施すべきだとした。

 また、単独で利用者の自宅を訪問するために利用者や家族からのハラスメントの犠牲になりやすい訪問系介護職員については、「2人体制、複数名での訪問にすべき」「男性を加えるべき」との意見も寄せられた。

 現状の介護保険制度においては、利用者や家族の同意がない限り、複数訪問では一人分の報酬しか出ない。自治体レベルでは兵庫県が、高齢者の自宅を訪れる訪問介護職員が利用者や家族から暴力を振るわれているケースが続出しているのを受け、2017年度から2人目の人件費の一部を県が補助しているなどといった例はあるものの、まだ全国的な広がりは見せていないという。

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ロボティア編集部

人工知能(AI)、ロボット、ドローン、IoT、ブロックチェーンなど、テクノロジー関連のニュースを配信する専門メディアを運営。国内外の最新技術動向やビジネス情報、カルチャー・生活情報なども各メディアに寄稿中。

サイト:ROBOTEER

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