過剰サービスを止める企業の勇気と、消費者の「求めない」姿勢

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Thinstock/Photo by comzeal

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 7月1日放送の『ワイドナショー』(フジテレビ系)で、この日コメンテーターを務めた小藪一豊が、日本における「過剰サービス」に噛み付く一幕があった。番組中、28歳の女性から寄せられた「最近、いろんなものを過剰に包装しすぎな気がします。配達物のダンボールはムダに大きいし、服や靴を買った時の大きい袋や箱もいらないと思うぐらいです。皆さんはどう思いますか?」という投稿が紹介されると、小藪一豊は消費者にも責任があるとの論を展開した。

「過剰包装は、受け手の個人的な問題だと思うんです。人によるから、いちいちこっち(消費者)が言うのはかわいそう」というのが、小藪一豊の意見だ。なるほど、確かに、過剰なほどの包装には、配達物の破損を防ぐ目的や商品を丁寧に梱包する意味などがあり、簡素な包装だった場合にクレームをつける消費者もいるのかもしれない。

 過剰包装に限った話ではないが、消費者に対する手厚いサービスが当然視されることにより、サービス供給側は疲弊していく。そのサービスが従業員の負担となり、本来受けられるはずだったサービスさえ受けられなくなってしまうケースもある。

 たとえば近年、インターネット通販の需要拡大により、運送サービス事業の負担増大が問題視されるようになった。昨年、ヤマト運輸で働いていた運転手が、ダイレクトメール約500通を配達せず、林の中に捨てるという事件も発覚した。運転手の言い分は「荷物の量が多くて配達しきれない日があった」。国土交通省は2015年、トラックドライバーの約1割の約9万人分に相当する労働力が再配達に費やされていると発表している。この運転手の行動は許されるものではないが、再配達という過剰サービスに追われ続け、正常な判断力を見失ってしまった可能性はある。

 ただ、近年では、ブラックな現状を脱却すべく、運送業界は様々な改革を実施している。佐川急便は昨年、一部地域で正社員のドライバーに週休3日制の導入を発表。ヤマト運輸は今年に入り、「当日再配達締め切り時間」と「一部の配達時間帯の廃止」の見直しを実施。従業員にとってより健全な働き方ができるよう、そして顧客にとって質の高いサービスを提供できるよう模索している。

 一方で、企業側が過剰サービスを手放した結果、より客が満足するサービスを提供できるようになったケースもある。株式会社ホテルオークラ東京では、交換やクリーニングに手間がかかるため、レストランのテーブルクロスを廃止し、一部をランチョンマットに変更。ジャムの盛り付けもビンによる提供に変え、従業員がより接客に集中しやすいよう環境を整備した。従業員から直接受けられるサービスが増えたことで、顧客の満足度も上々のようだ。

 株式会社三越伊勢丹では、2018年から最大の繁忙期と言われる三が日の営業をやめ、14日から営業を開始し、営業時間の短縮も実施。同社は、売り上げの減少を覚悟していたようだが、売り上げは以前とほぼ同じ結果となった。営業時間が短くなり負担が減ったことで、従業員のサービスの質が高まり、売り上げに良い影響を与えたようだ。過剰サービスに追われクタクタな状態より、心身ともに余裕のある状態のほうがより高いサービスを提供できることは言うまでもない。過剰サービスを求めないことで得られるサービスがあるということだ。

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