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『世にも奇妙な物語』のミソジニー、制作関係者が語る「昔は良かった」の空気

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DVD『世にも奇妙な物語1』ポニーキャニオン

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 1990年に放送開始し、現在も半年に一度放送されているフジテレビ系『世にも奇妙な物語』。『とんねるずのみなさんのおかげでした』『笑っていいとも!』など人気長寿番組が相次いで放送終了した今、28年目を迎えたこの番組は数少ないフジテレビの長寿番組のひとつとなっています。

 しかし、2018512日放送された『世にも奇妙な物語’18春の特別編』の視聴率は10%ギリギリ。昨今は過去作品のリメイクや有名小説家、映画監督とコラボするなど、ネタ切れ感は否めません。

 『世にも奇妙な物語』の最近の傾向として顕著なのが、断捨離をテーマにした『捨て魔の女』(’16秋の特別編)や、不倫に不寛容な世界を極端に描いた『不倫警察』(’18春の特別編)など、現代の社会風刺ネタです。

 皮肉が効いていると面白がる視聴者もいる一方で、「制作者の偏見がひどい」「訴えたいことはわかるが同意できない」など、厳しい意見もネット上でみられます。

 たとえば『世にも奇妙な物語’18春の特別編』で放送されたうちの一作、『フォロワー』は、乃木坂46・白石麻衣さん演じる女性・ハルが、SNSでは港区のキラキラOLを装いつつ、実際は零細企業のOLであり、虚飾にまみれて狂ってしまう話でした。リアルが充実していない(と思い込んでいる)ハルは、嘘や借金を重ねてキラキラした生活を演出する愚かな若い女として描かれていました。また、前述した『不倫警察』の舞台は、不倫が重罪として裁かれるようになった社会にはじまり、失言も逮捕要件になり、すべて「世間が許さない」として罪に問われるディストピア。

 “インスタ映え”や、“不倫バッシング”、“ネット炎上と謝罪”が定番化した昨今の日本社会を風刺する内容であることはわかりますが、どこかがズレている。なぜなのでしょうか。

 実は『世にも奇妙な物語』の“ズレ”は、制作現場でも生じていました。番組制作に関わる制作会社のAさんと、若手監督のNさんに『世にも奇妙な物語』を取り巻く現状について話を聞きました。

原作はもう出尽くしている

―――まず、『世にも奇妙な物語』(以下『奇妙』)のネタはどのように決められるのでしょうか。

Aさん「回によって異なりますが、主に制作会社や脚本スクールなどに向けて、幅広く募集がかかります。まずは『奇妙』向きの原作を提案してもらう形です。採用されたら演出や脚本執筆のチャンスはありますが、歴史が長い分、原作はもう出尽くしている状態ですね」

―――オリジナルネタは別に募集があるのでしょうか。

Aさん「もちろん。ただ、まずは安全パイである原作ものをラインナップに抑えておきたいですから」

Nさん「オリジナル企画の募集もありますが、直接持ち込んだりする人や、仲の良いP(プロデューサー)と共同でストーリーを練ったり、若手を集めてネタ出し会をするPもいますね」

Aさん「毎回多くのオリジナルネタは集まりますが、正直どれも見たことのあるようなものや、展開的に『奇妙』に向いていなかったり……本当に狭き門なんです」

―――狭き門とはいいますが、過去に比べてクオリティが下がったという意見もあります。

Aさん「若手の新規ネタは狭き門ですが、大御所や実績のある人、力を持っているPD(ディレクター)の提案したネタは、通りやすい傾向がありますね」

Nさん「まさに。『ズンドコベロンチョ』や『美女缶』『イマキヨさん』など数々の名作を生みだし、若手監督や脚本家の登竜門と呼ばれていたのも今は昔ですよ。
だから、そうでない若手はどうするかというと、力を持つPDの提案に乗っかることが採用の近道となるんです。恐らく昨今の社会風刺ネタも上層部の提案やネタ会議の中で生まれたものじゃないでしょうか」

「昔はよかった」の愚痴がドラマのネタに

Aさん「この前の『不倫警察』もそうですけど、社会風刺と言うより“昔はよかった”的な中年層の愚痴が具現化された作品が多いような気がします。この前のSNS女子を揶揄した『フォロワー』や美人が多く税金を払わねばならない『美人税』は女性の目から見てミソジニーを感じざるを得ませんでした。既に撮影段階だったので口を出せませんでしたが」

Nさん「わかります。以前、会議で絶賛されていたという『奇妙』ネタのプロットを見たのですが、それが昨今の嫌煙ブームを皮肉った内容で。テレビ業界はいまだ喫煙者が多いですからね……。さすがに実現はしなかったみたいです」

―――どこか世間や時代の感覚とずれている、ということでしょうか。

Nさん「僕の口からははっきり言えません(笑)。ただ、本意でない社会風刺のために自分の名前が使われるのは嫌だなあと。だから、今はほとんどコンペには参加していません」

―――でも、このような作品が放映されても、表立って炎上しているわけではありませんよね。『万引き家族』や『幸色のワンルーム』など、反社会的な行為をモチーフにした映画や漫画は賛否を集めているのに。

Nさん「『奇妙』という枠の強さがあるんじゃないでしょうか。『奇妙』は、ゴールデンタイムの放送で一定数の視聴者がいて、長い歴史の中で様々な作品が受け入れられてきた土台がある。なにかと批判されがちなこの世の中で『奇妙』の中の作品に落とし込むことで許容されているのでは。だからこそ、若手監督の実験の場にしてほしいんですけどね」

Aさん「単純に、もう見られていないからなのかもしれない(笑)」

 名作を多く生み出し、今でもわずかながらコンスタントに珠玉の作品を生み出している『世にも奇妙な物語』。その名前に胡坐をかき、過去の栄光にすがっているフジ関係者や制作会社の愚痴の場にせず、かつて多くの鬼才が躍動したような場にしていくことが復活の道なのかもしれません。

(森ナオミ)

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