社会

「若者の性交に伴う妊娠や性感染症に関する知識や自覚を促す性教育」のどこが問題か?

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古賀都議「裁判には99%勝っている」

 316日の東京都文教委員会で古賀都議が行った質問は3つある。ひとつは「北朝鮮による拉致問題の啓発授業について」もうひとつが「東京都の都内小中高校生の体力の件について」そして最後が問題の「性教育の件について」だ。全文引用は長くなるため、東京都議会のサイトに掲載されている「文教委員会速記録第三号」から、該当箇所を要約したものを以下にまとめる(黒字強調は引用者による)。

  古賀都議は最初に、七生養護学校事件について、「“人間と性”教育研究協議会という過激性教育を熱心に推進する団体の季刊誌の中で、成果が上がっているという七生養護学校の視察をした。その視察が教育に対する不当介入と訴えられ、99%勝っている』『ちょっとだけ訴えた側に花を持たせるような判決』がでた。『肝心な点は私たちの主張がほぼ100%認められた』」と振り返っている。つまり、古賀都議はあの裁判を「負け」と認識していないようだ。

 続けて古賀都議は区立中学校の授業について言及する。「若年層の性行動を伴う妊娠、人工妊娠中絶、性感染症の拡大などが社会問題となっている、全体の人工妊娠中絶の件数は減っているものの、十代の割合が高く、特に中学校を卒業すると急激にふえている現状である。…若者の性行動をあおるような情報が氾濫する一方で、性に関する学習不足から、性交に伴う妊娠や性感染症に関する知識も自覚もないというのが大きな要因」であり「ヤンママといわれる十代の妊娠、出産の率が他区に比べて非常に高く、まさに貧困と隣り合わせである、高校へ行ってもやめてしまう生徒が多い、妊娠、中絶についてのアンケートを見ると云々…足立区の特殊性(がある)」と、学校側から配られたという資料の内容を古賀都議が話す。

 なぜ区立中学校で性教育が行われたのか、納得的な説明がなされているが、古賀都議はそう思わないようだ。具体的な授業内容には触れることなく、「不適切な性教育の指導が行われているのではないかと思う。授業内容について把握していたのか」と、都の担当者に説明を求めはじめるのだ。

 担当者が「授業内容は把握していた」と答えると、「東京都教育委員会の性教育の手引、中学校編」「文部科学省の中学校の学習指導要領、学校における性教育の考え方、進め方」という基準に照らして授業内容に問題点はあるのか、と再度質問。

 担当者は「該当授業には課題がある」と答え、「性に関する指導を総合的な学習の時間における人権教育の学習としているがその根拠が不明確。小中高等学校のいずれの学習指導要領にも示されていない性交について扱ったり、避妊、人工妊娠中絶といった学習指導要領上、高等学校で指導する内容を取り上げたりしている。保健の指導においては、発達の段階を踏まえることや、学校全体で共通理解を図ることに加え、保護者の理解を得ることが重要とされているが、十分な理解を得ないまま授業が実施された」という。この回答は、426日の定例会で示された「中学校における性教育のあり方」と内容にほぼ変わりはない。これが現時点での東京都の考え方ということなのだろう。

積極的な性教育は子供たちの将来に禍根を残す

 気になるのは古賀都議がどういう考え方を持って、区立中学校の授業を問題視するのか、という点だ。

 古賀都議は質問の中で、「結婚の意義」や「家庭を築くことの意義」、「生命が誕生することに関する伝統的な価値観」を強調している。また「結婚や家庭を築くことによって新しい生命を生み出すということは非常に神聖なこと」「文部省時代には純潔教育なんかという言葉も使われていた」「動物的な結びつきによる人間における性行動というものを100%認めてしまうということは、あってはならない」「ですから、責任を伴う行動を子供たちにも促さなきゃいけない」「授業の内容を記したものをいろいろ見ますと、避妊するためにピルの入手方法とか、コンドームの使い方とか…果たして今の中学三年生に、授業で取り上げて、そういう指導をすることがふさわしいのかどうか」「日本をこれから支えていく大事な人材でもある子供たちに…特定の一つの価値観に基づいて…取り返しのつかない、子供たちの将来に禍根を残すようなことにもなりかねない」ともいう。

 ざっくりと言えば「結婚や家族こそが大事。快楽のための性行為はダメ。コンドームとかピルとか中学三年生に教えたら、動物みたいに性行為しかねない。伝統的な家族観も壊されてしまう」といったあたりのことを考えているのだろう。

 生徒たちは事前アンケートで「高校生になったらセックスしてもよい」と44%が回答している。20代未満の中絶率が高いというデータもある。性教育をしようがしまいが、現実にセックスをする子供たちがいて、その中には正しい避妊や性感染予防を知らず、望まない妊娠や性感染症にかかる子どもたちもいるわけだ。性教育が充実している国ほど性行動がより慎重になる、というデータもある(積極的な性教育は男子によりインパクトを与えるという前向きなデータ)。「結婚の意義」やら「家族の意義」やら特定の価値観に基づいて、子どもの将来に禍根を残すような性教育バッシングを行うよりも、子どもたちに正しい知識を与える性教育を促進するべきではないだろうか。

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