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今月3日、お茶の水女子大学が、2020年度から性自認が女性のトランスジェンダーの学生が入学できるようにすることを発表した。戸籍上の性別は問われないという。9日に室伏きみ子学長が記者会見を開き、受け入れ姿勢などについて説明する予定だ。同日には、奈良女子大学も同様の検討をしていることが報道された。
トランスジェンダーとは、出生時に割り当てられた性別に違和感を持つ人のこと。今回のお茶の水女子大の発表に意義があるのは、戸籍上の性別が男性であっても、性自認が女性であれば入学可能にした、という点にある。
トランスジェンダーといっても、必ずしも性別移行を希望しているとは限らない。戸籍上の性別を変更せずに生活しているトランスジェンダーもいる。また大学入学時に20歳未満であった場合、現在の法律では戸籍上の性別を変更する要件のひとつに「20歳以上であること」が定められているため、性別移行は不可能だ。お茶の水女子大の決定は、こうしたトランスジェンダーに門戸を開いた、ということになる。
詳細は9日に開かれる記者会見の中で明らかになると思われるが、ネット上では称賛の声があがる一方で、批判的な意見も多数みられた。代表的な意見のひとつに「共学にすればよい」というものがあるが、女子校が持つ、女性をエンパワメントする可能性については、畠山勝太氏の「女子校はジェンダーステレオタイプの解消を推進できるか?」を参考にしていただきたい。女子大には女子大としての存在意義があるのだ。
もうひとつは「性同一性障害とバイセクシュアルは違う」「どうやってLGBTを見分けるのか」「嘘をついて入学する男性がでてくるのではないか」「なにか事件が起きたらどうするのか」など、不正確な知識に基づく誤解や、トランスフォビアなもの。特に後者については「女子大という女性にとって安心できる空間を、トランス女性が脅かす」とでも言わんばかりの意見がみられた。
トランス女性であるというだけで、シスジェンダー(出生時に割り当てられた性別に違和感のない人)女性に危害が加わるということはない。トランス女性を「本当は男性なのではないか」と疑ってみたり、「トランス女性は女性ではない」などと糾弾することが偏見に基づいた差別に当たる。もしかしたら性自認に嘘をついて入学を希望する男性も出てくるかもしれないだろう。ゼロとは言い切れない。しかしそうした可能性を理由に、トランス女性の入学機会を奪うことを正当化はできないのだ。
お茶の水大学だけでなく、他の女子大もこの決定に追随していく可能性はある。変更によって、新たな対応やトラブルの発生などがあれば、知恵を絞って解決する方向に社会が進んで欲しい。