エンタメ

「VTuber」はバーチャルアイドルブームの再来か? 急成長したVTuber業界

【この記事のキーワード】
「VTuber」はバーチャルアイドルブームの再来か? 急成長したVTuber業界の画像1

独立行政法人国際観光振興機構の、キズナアイ紹介ページより

 今年3月、独立行政法人国際観光振興機構(いわゆる「日本政府観光局」)ニューヨーク事務局が次のような発表をし、一部IT業界の話題をさらった。「訪日促進アンバサダー」に「キズナアイ」が就任し、「日本の食と魅力を発信する」というのだ。

 告知サイトを見てみると、このキズナアイは実在する人物ではなく、二次元の美少女キャラクター。彼女が海外に向けて、日本のおもてなしの心や、寿司、らーめん、和菓子等を紹介するということのようで、いわゆる「クールジャパン」的なキャンペーンのようにも見受けられる。

 しかし実はこの二次元キャラクター、この種のキャンペーンに登場しがちなアニメやマンガのキャラクターではない。ではなんなのか? 「バーチャルユーチューバー」(以下、VTuber)といわれる、昨今インターネット上で話題となっている、IT技術の進化が生んだ新しい存在なのだ。

 一般にYouTuber(ユーチューバー)といえば、ご存じHIKAKIN(ヒカキン)に代表される、商品レビューやゲーム実況、“やってみた動画”をYouTubeにアップロード、チャンネル登録者数を稼ぎ、企業から広告収入を得る人物のこと。2018年4月に日本ファイナンシャル・プランナーズ協会が発表した「小学生の『将来なりたい職業』」では第6位にランクインするなど、昨今注目度が上がっているのは周知の通りだ。

 ところがこのVTuberは、同じYouTuberはYouTuberでも、その名の通り存在がバーチャル。活動の実態は雑談、ゲームの実況プレイや商品レビューなど通常のYouTuberと大きく違うところはないが、あくまでも配信者は美少女キャラクターや動物などの架空のキャラクターだということになっている。“中の人”は表には姿を見せず、あくまでもそのキャラクターになりきって配信をしているというわけだ。

 かつて、アイドルブームにあやかった“架空のアイドル”として「バーチャルアイドル」なる存在が話題を集めたことがあり、1990年代後半には、当時の美少女キャラクターと声優アイドルらをまとめて扱う情報誌「Virtual IDOL」が徳間書店より発行されていたこともある。また、インターネットの普及と共に出現したネットアイドルに対し、2000年代初頭には“ちゆ12歳”などに代表される「バーチャルネットアイドル」がという存在が現れたことも。かように、IT技術の発展と共に、リアルなものに対して“バーチャル”をうたった存在が現れるのは、いわばお約束ともいえる現象ではあろう。

 しかし、今回のVTuberについては、そうしたこれまでの“バーチャル”とは、いささか様相を異にしているようなのである。

「VTuber」はバーチャルアイドルブームの再来か? 急成長したVTuber業界の画像2

2018年6月30日にYouTube上に公開された、キズナアイ2歳の誕生日イベント「A.I. Party! ~Birthday with U~」の模様。ニコファーレ六本木にて開催された。

VTuber「キズナアイ」の活躍

 日本政府観光局によって「訪日促進アンバサダー」に起用された、先述の「キズナアイ」は、「文化領域でイノベーションを起こす」を標榜するIT系スタートアップ企業「Active8」(アクティベート)により、2016年11月末にYouTube上に公開されたYouTuber。自らを人工知能(A.I)と称しており、”中の人”の存在やその目的については、基本的になんら公開されていない。バーチャルな存在でありながら、リアルな人間と同等のタレントとして世間が求める理想の存在を生み出していこうーーそうした運営会社の意図も感じられ、現在活発に活動中である。

 まず、YouTubeでのチャンネル公開からほぼ毎日動画を更新、瞬く間にチャンネル登録数を増やし、2018年6月現在では190万人を越える人気を誇る。

 取り扱うテーマはさまざまで、「友達について真剣に考えてみた。」「ホワイトデーに欲しいものTOP5」などYouTuber的な身近なものがある一方で、Apple社が提供するSiri、あるいはMicrosoft社が運営する女子高生AI「りんな」との“対談”といったような、IT技術を前面に出したものもある。

 中でも特に人気なのが、ゲーム実況。さまざまなゲームをプレイして視聴者と共に一喜一憂するという、リアルYouTuberであればよくあるスタイルなのだが、A.I.Gamesという独立したチャンネルにもなっている。ホラーゲーム『INSIDE』の実況においては、かわいがっている豚に襲われ「ふぁっきゅー!」と絶叫する場面が話題となり、100万回を越える再生数を叩き出してみせたのだ。100万再生といえば、“ライバル”ヒカキンにも引けを取らない再生回数であり、その人気の高さがうかがいしれよう。

 こうした人気もあってか、キズナアイは日本のみならず世界も注目。公式チャンネル「A.I.Channel」の配信動画を英語や韓国語に翻訳する者も現れ、それらもまた高評価を受けるという好循環を生み出している。A.I.Channelのチャンネル登録者数は、2018年年2月頃を境に海外からの登録者数も急増、現在も増え続けているのである。

 先述の訪日促進アンバサダーへの起用も、ネット界におけるこうした世界的な認知度の高さが評価されたものと思われ、今後、日本の文化を世界に広める立役者としての活躍が期待されているわけだ。

技術革新がもたらした、VTuberの爆発的増加

 さて、ではVTuberの新しさの“本質”について見ていこう。

「VR元年」と称された2016年を境に、世界のVR技術は急速に進化を遂げた。バーチャル空間内を歩き回り、両手に持つコントローラーを自身の手のごとく自由に動かすーー。こうしたことが、数万円のデバイス経由で容易に可能な時代が到来したのだ。この技術を活用して出現したのが、“日本初のVTuber”キズナアイなのであり、実際、「バーチャルユーチューバー」という言葉も、このキズナアイの出現によって初めて登場したといわれている。

 キズナアイの人気を追って、今年に入ってから多くのVTuberが出現。前述の“ちゆ12歳”も、今年2月からVtuber化している。その背景にあるのは、誰でも簡単にVTuberになれる技術の開発と、そのノウハウの公開であろう。

 特に、PCに搭載されたカメラで自分の顔を写し、顔の動きを認識してキャラクターにリアルタイムに反映するというソフトウェア「Facerig」が、2Dのキャラクターを動かす技術「Live2D」に対応。人間の動きに合わせ、比較的簡単にキャラクターを動かせるようになった。さらに、スマートフォンのカメラで撮影した表情をキャラクターに反映するソフトウェア「ホロライブ」がリリースされたことも大きかった。

「VTuber」はバーチャルアイドルブームの再来か? 急成長したVTuber業界の画像3

「VTuberになれるアプリ」を謳うソフトウェア「ホロライブ」iPhoneアプリのトップページ。

 こうした動きにあやかろうと、VTuberとしての配信方法を詳しく指南するウェブサイトが立ち上がり、書籍まで出版されているのだから驚きだ。

 こうして、当初のキズナアイにおいてはあくまでも企業によって運営されていたVTuberは、個人でも運用できるレベルにまで参入障壁が一気に下がっていく。取り扱うジャンルを特化したものや、YouTubeではないほかの動画サイトで活躍するものなども出現し、その数は爆発的に増えているのである。「バーチャルユーチューバー」という言葉も、かつては「キズナアイ」そのものとほぼ同義であったが、現在では本来の意味である仮想的なYouTuberの総称となり、誰にでもできる表現方法のひとつとなっているといってもよいだろう。

 こうして多様化したVTuberは、それぞれひとりのYouTuberとして人格を持ち、互いに関係を築く例さえ出てきている。下図は、VTuber同士の関係性を表す壮大な相関図で、著名VTuberである「バーチャル百合お嬢様白鳥天羽」がTwitter上で発表して話題となったもの。ここに取り上げられているVTuberは、チャンネル登録数が1000を越えるものに限定されているのだが、それでも、おのおのが小さなコミュニティ形成しながら増殖を続けているのが見て取れよう。

「VTuber」はバーチャルアイドルブームの再来か? 急成長したVTuber業界の画像4

著名VTuber「バーチャル百合お嬢様白鳥天羽」(@Shiratori_Amaha)がTwitter上で発表し話題となった、“VTuber相関図”

 2018年5月には、VTuber配信者が3000人を越えたと「バーチャルYouTuberランキング」を運営する株式会社ユーザーローカルが報じた。まさしくいま、VTuber ブームが到来しようとしているのである。

1 2

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。

[amazonjs asin=”4791703510″ locale=”JP” tmpl=”Small” title=”ユリイカ 2018年7月号 特集=バーチャルYouTuber”]