「価値観が揺らぐのも大事よね?」阿佐ヶ谷姉妹と“おじさん・おばさん”の距離感/インタビュー

カルチャー 2018.07.18 14:15

(写真=北川泉)

老後のことを考えると優しくなれる

――でも、血のつながりのない人間が二人共同生活を送るって、実は結構難しいことですよね。常に部屋に人がいることで「嫌だな」と思う瞬間はなかったんですか?

江里子 「同じ顔がいるな~」と思っていたときはないこともなかったですが、もともと弟と一緒に住んでいた時期もありましたし、上京してきたときも下宿でしたし、共同生活には慣れていたんです。それと、いい年した大人が言うのはなんですけど、私はちょっと寂しがりなところがあって、誰かがそばにいて一緒に何かしたり、それぞれ別々のことをしたりする感覚が嫌いじゃなかったのはあるかもしれません。

美穂 やっぱり、自分の家があって別宅のように通っていたときのほうが気は楽でしたね。好きなときに泊まって、ちょっと嫌になったら自分の家に帰って。

江里子 そりゃそうでしょうよ。「好きなときに」って……。

美穂 同居すると、仕事も一緒ですから、朝も江里子、夜も江里子で、「エリコ過多」になったところはありますね。でも「エアコンの設定温度が高い」とか「布巾が嫌い」とか、一緒に住んでいるからこそ気づくことがあって、それは楽しいです。

江里子 家に帰ってきて、仕事先でのちょっとしたエピソードをああでもないこうでもないって、ケラケラ笑いながら、しかも寝っ転がりながら話し合えるのは、二人暮らしならではの良さですね。その日あったことをすぐに共有して楽しめる。夜中に二人で、犬の鳴き真似とかカエルの鳴き真似をしてヘラヘラしたり。そういうしょうもないことで笑い合えるのは、同じ感覚で面白いと思える人ならではなので、そこはありがたいと思います。

――同居を続けてこられたコツはあるんでしょうか?

美穂 忍耐力……?

江里子 あら、我慢していらっしゃる。

美穂 この前、「分担をはっきり決めなかったのがよかったんじゃないか」って話になったのよね。

江里子 共同生活ではどうしても決めごとをつくらないとガチャガチャになってしまうんですけど、厳密に決めすぎてしまうと、守られなかったときに発生する相手へのもやもやした思いのほうが、意外と負荷がかかるような気がするんです。実際私たちも、ゴミ捨てとかお風呂に入る順番とか決めようとしてたんですけど、お互い守れないことが多々ありました。そのときに、どちらかが譲って折り合いをつけていかないと、壊れてしまうところがあるのかな、と。ガチガチにしないことが、なんとか長続きさせるコツなのかもしれません。

美穂 二人ともきっちりしてなかったのがいいのかな。ちゃんとしてる人だったら、すぐ二人暮らし解消になってたかもしれません。「おねえさんは掃除が苦手だけど、私もお風呂の順番守れないからしょうがないな」とか、譲り合いで保っていたような気がします。

――年齢を重ねて寛容になったという面もあるんでしょうか?

江里子 どうでしょう……でも、確かにちょっとあるかも。私が野垂れ死んだときに、骨も拾ってもらえないんじゃ寂しいな、と。いざってときに見捨てられるのは困るから、悪いことはしないでおこう、というのはあるかもしれません。

美穂 40代に入ると老後のことを考えますし、このまま独り身だろうなと思うと、似たような人がいてくれないと困るなって。そういう気持ちが働いて、優しくなれるところはあるかもしれません。

老後に思いを馳せれば…(写真=北川泉)

シティボーイズは3人横並びで座ってる

――一方で、40代の女性同士が同居していると、外野から何か言われませんか? 「いつまで二人で住んでるんだ」とか「結婚しないの?」とか。

江里子 言われます、言われます。

美穂 「二人で住んでるから結婚できないんだ」とか、よく言われますね。

――そういうときはどう対応するんですか?

江里子 「そうなんですよねぇ〜」って。

――そんなこと言われたら腹立ちませんか?

江里子 まぁねぇ、たしかにねぇ(笑)。でも、自分たちで選択してこうなっているわけじゃないからあまり強いことが言えないところもあって。もっと「確固たる意志でこの生き方をしてるんです」って言えたらいいんですけどね。

美穂 流れ流れてこうなっちゃってるので(笑)。

江里子 もちろん、ご家族を持ってらっしゃる方や、逆にひとりでも独立されている方がうらやましいと思うところは多々あるんですけど、結果自分たちはこうなっていて、わりとこの関係が楽しいんです。

美穂 のんきだし、気楽に生きてるかもしれませんね。

江里子 この気楽さを声高に言ってもねぇ。

――最近は少し変わってきていますが、お笑いの世界では、「相方同士で仲がいいのはかっこ悪い」という考え方があったと思います。阿佐ヶ谷姉妹のお二人は、コンビを組んでから同居を始めて仲良くなって、真逆ですよね。

美穂 仲が悪い方はどうしてるんですかねぇ。でも、普段は全然しゃべらなくても、芸の上ではつながっているんだと思いますよ。

江里子 男性の場合は「かっこ悪い」という言葉の奥に「照れくさい」というような感覚がある気はしますね。男性社会は――と言ってしまうとよくないかもしれませんが――どうしても上下関係というか、優劣で自分の立ち位置を把握しようとするところがあるから、「俺たちは並列(仲良し)でも大丈夫です」みたいな関係が「かっこ悪い」と思うのかもしれません。
でも、今はコンビで仲がいい方たちのほうがみんなから受け入れられてたり、息が長かったりしますよね。私も、そういう方たちのほうが見ていて親近感がわきますし。シティボーイズさんが事務所の大先輩なんですが、今でも必ず打ち上げや会合の席では当たり前のように3人横並びで座ってらっしゃるんですよ。それで自然と掛け合いのように話をされていて、すごくうらやましいというか、憧れですね。そういう形でずっと続けてこられた方は強いのかなと思います。

美穂 確かに、お互い尊敬し合っていて仲がいいというあの形は、ひとつの理想ですね。

江里子 「仲悪かろうが、板の上でバチコン合えばええんや」って、それが実践できる方はそれはそれですごいなと思いますけど、私たちはシティボーイズさんのような形が好きですし、自分たちもそうなれたらいいなと思います。

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斎藤岬

2018.7.18 14:15

月刊誌「サイゾー」編集部を経て、2017年からフリーランス。編集担当書に『オタク女子が、4人で暮らしてみたら。』(著:藤谷千明/幻冬舎)、「別冊サイゾー『想像以上のマネーとパワーと愛と夢で幸福になる、拳突き上げて声高らかに叫べHiGH&LOWへの愛と情熱、そしてHIROさんの本気(マジ)を本気で考察する本』」など。

twitter:@msken019

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