「価値観が揺らぐのも大事よね?」阿佐ヶ谷姉妹と“おじさん・おばさん”の距離感/インタビュー

カルチャー 2018.07.18 14:15

おばさんトガりしていた時期もあったとのこと(写真=北川泉)

「価値観が揺らぐのも大事よね?」

――阿佐ヶ谷姉妹のネタは、自分たちを「おばさん」として扱うものが多いですよね。女性芸人のなかでも、珍しいように思います。自分のことを「おばさん」と認識して受け止めたのはいつ頃からなんでしょうか?

美穂 30代後半くらいからだんだん受け入れはじめましたね。コンビを組んだ頃は30代前半だったので「まだおばさんじゃないでしょう」って思ってたんですけど、今となっては忘れっぽくなったり腰が痛かったり、「あ、ほんとにおばさんになってきたんだな」って感じられるので、地でいけてます。

――じゃあ最初は抵抗があったんですね。

美穂 ありましたよ。はたから見たらその頃から十分おばさんだったんでしょうけど、やっと今身についてきたというか、自然体でおばさんになりました。

江里子 じゃあ30代の頃はまだトガってたんだ。“おばさんトガり”してたのね。

――江里子さんはそういう時期はなかったんですか?

江里子 私はもう18歳のときから、近所の八百屋さんに「奥さん」って呼ばれるくらい見た目が老けてたんです。だから結成の段階から、そこの関しては抵抗がなくて、美穂さんよりは「おばさん」を受け入れていました。「30代だからおばさん」「40代だからおばさん」ということではなくて、「見え方がおばさんならおばさん」っていう受け取り方をしています。今も、50代くらいでおきれいにしている方が「同世代、がんばりましょうね!」って言ってくださった後に私たちの実年齢が40代だと知って「えっ……! すごいショック!」って言われるんですよ。おばさんの定義ってすごく難しいんですけど、私は幅広くひっくるめて「おばさん」だと受け止めています。今は美穂さんもおばさんを受け入れてくれてまろみが出てきて、ちょうどよくなったのかもしれません。

――「おばさん」を受け入れて楽になったことってありますか?

美穂 楽になった気はします。近所の方に挨拶されて、こっちも挨拶できるようになりました。

――若い頃は無視してたんですか?(笑)

江里子 あ、でもそれはそうなんですよ。同居を始めた頃、美穂さんはご近所の方にもあんまりにこやかじゃなくて、挨拶されても会釈くらいでやり過ごしていたのが、今はちゃんとご挨拶しますよね。

美穂 見知らぬ方ともおしゃべりしやすくなりましたね。

江里子 おばさんならではの、当たり障りのない会話が路上でできるようになったわよね。

美穂 自然にしゃべれるようになりましたね。40代になったからなのかしら。

――ところで最近、ニュースサイト「NewsPicks」が広告で「さよなら、おっさん」というコピーを打ち出して、物議を醸しました。「おっさん」を「新しいことを学ばない存在」と定義して、そうならないようにしよう、とうたったものなのですが、「そんなに“おっさん”は悪なのか」「“おっさん”を仮想敵にしすぎでは」と批判が出たんです。それについて「おばさん」はどう思うのか、ぜひお聞きしたいのですが……

江里子 私たちはおばさんネタを多くやらせてもらってるんですけど、それを見た同世代の方から「自分で『おばさん』って言ってほしくないわ」と言われることもあるんです。「そう言っちゃうと、本当におばさんになっちゃうから」って。いろんな「おばさん」の使い方があって、私もよくわからなくなっちゃうときがあるんですけど、「私おばさんだから」「ババアだから」って言っちゃうと、それが言霊になって自分を老けさせる、っていう話はありますよね。それで若さを保ってご自身を保っていられるのはいいと思うんですけど、抗うことの大変さもあると思います。私達は受け入れたことで楽になっちゃったので、選択肢はいろいろありますけど、そういう生き方もあっていいかな、って。「おじさん」も、「おじさんだ、ゲヘヘ」って言ってる人がよく見えるときも悪く見えるときもあるから難しいですよね……あっ、美穂さん、今何話してるか全然わかってないわね。

美穂 でも私は、そんなにおじさんイヤじゃないですけどね。

江里子 それは美穂さんがおじさん好きだからでしょう。同世代の男性でも、若くあろうと頑張ってらっしゃる方は私たちを見て混乱するみたいですよ。「これが同い年……?」って、価値観が揺らぐらしいです。でも揺らぐのも大事よね?(笑) 考え方はひとつじゃないよ、っていうひとつの提起だと思ってもらえればいいですね。

(取材・構成=斎藤岬/写真=北川泉)

阿佐ヶ谷姉妹さん、素敵なおしゃべりありがとうございました(写真=北川泉)

阿佐ヶ谷姉妹(あさがやしまい)
1972年生まれの渡辺江里子(姉)と73年生まれの木村美穂(妹)による、歌って踊れるピンクのドレスの妙齢二人組。劇団東京乾電池研究所にて知り合い、仲を深める。本当の姉妹ではないけれど、顔が似ているということでコンビを組むことに。2016年、『とんねるずのみなさんのおかげでした』(フジテレビ)の「第22回細かすぎて伝わらないモノマネ選手権」優勝。現在、数々のバラエティ番組で活躍中。今秋、全国4都市で単独ライブ「ドアーを開けて」開催予定。

『阿佐ヶ谷姉妹ののほほんふたり暮らし』

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斎藤岬

2018.7.18 14:15

月刊誌「サイゾー」編集部を経て、2017年からフリーランス。編集担当書に『オタク女子が、4人で暮らしてみたら。』(著:藤谷千明/幻冬舎)、「別冊サイゾー『想像以上のマネーとパワーと愛と夢で幸福になる、拳突き上げて声高らかに叫べHiGH&LOWへの愛と情熱、そしてHIROさんの本気(マジ)を本気で考察する本』」など。

twitter:@msken019

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