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『健康で文化的な最低限度の生活』は、偏見にまみれた生活保護への誤解を解きほぐす

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『健康で文化的な最低限度の生活』番組ホームページより

 71721時より連続ドラマ『健康で文化的な最低限度の生活』(フジテレビ系)の放送が始まる。このドラマは、区役所の生活課に配属されケースワーカーとして働くことになった義経えみる(吉岡里帆)が、様々な生活保護受給者との交流を通じて社会福祉制度の現実を知るとともに、人間としても成長していく物語。

 『健康で文化的な最低限度の生活』は、「ビッグコミックスピリッツ」(小学館)で連載中の柏木ハルコによる漫画が原作。柏木ハルコ自身が実際に福祉の現場で働くケースワーカーや支援団体の人などから話を聞き、2年半にもおよぶ綿密な取材をもとに描かれてきた作品だ。そういった取材の成果もあり、『健康で文化的な最低限度の生活』は、貧困ジャーナリズム大賞2015で特別賞を受賞。さらに、この作品をきっかけに柏木ハルコはケースワーカーの講習会に講師として招かれもしている。

 この作品が高く評価されているのは、「生活保護」につきまとう「税金が怠け者の食い扶持にされている」やら「不正受給が横行し血税が無駄に垂れ流しになっている」という偏見が完全な誤解であると伝えているからだ。

 それは、柏木ハルコがこの作品を描く動機でもあった。「SPA!」(扶桑社)201615日号掲載のインタビューで、彼女はこのように語っている。

<生活保護は母子家庭や若者の雇用の問題だったり、医療の問題や、今描いている『扶養照会編』には親子の問題があったりと、テーマがすごく多岐にわたりますよね。現場のケースワーカーさんにとっては全部“あるある”なんだけど、マスコミがあまり報じないようなことも多いんです。それを描いて伝えたいという思いはありますね>

 『健康で文化的な最低限度の生活』という作品を通して、読者は生活保護受給者ひとりひとりに固有の事情があることに気付く。巷間言われているところの生活保護のイメージがいかに偏見にまみれているかということにも思い至るだろう。

 特に、単行本2巻から3巻にわたって描かれている「不正受給」編は印象深い。

 ここで登場する日下部一家は、認知症のおじいさん、母・さとみ、兄・欣也、妹・リナの四人家族。家庭内暴力が原因で離婚しており、女手一つで介護と子育てを両立している。

 そんななか、高校生の欣也は近所の寿司屋でアルバイトを始めた。母親には内緒である。欣也の通う高校はバイト禁止の校則があるので内緒にしていたのだ。これが大問題に発展する。母に内緒にしているので日下部家の収入申告に欣也のバイト代が反映されておらず、そうなると、悪気はなかったとしても不正受給となってしまうのだ。そして、これまでバイトで得た収入60万円全額を徴収金として払うことになってしまった。

 欣也はそのような制度があるということの説明を前任のケースワーカーや母親から受けておらず把握していなかった。もしも欣也が制度を把握し、アルバイトの収入があることを事前に申告していれば、基礎控除や未成年控除でバイト代の半額は残せたかもしれないのに、結果的にバイトに費やした労力や時間はすべて無駄になってしまったのだ。

 このケースも言葉のうえでは不正受給となるのだが、一般的に不正受給という言葉から想起されるものとはずいぶん距離があるだろう。

 実は、日本の生活保護制度において不正受給の数自体とても少ない。2012年度の厚生労働省による統計によれば、不正受給の件数は4万件で、金額にして190億円。この数字だけだと多く見えるかもしれないが、世帯数ベースでは約2%、金額ベースではわずか0.5%でしかない。さらに、そのなかには日下部一家のようなケースも含まれているため、警察へ被害届を出すなどの悪質なケースは109件にとどまる。これも、ニュースなどで得られる断片的な情報のみで判断しているから起きる誤解といえるだろう。

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健康で文化的な最低限度の生活 1 (ビッグコミックス)