『焼肉ドラゴン』が出自を超えて愛される理由と、出演した大泉洋の決意

【この記事のキーワード】

 監督や出演者が言うように、『焼肉ドラゴン』は、出自を超えて人々に愛される物語となったわけだが、しかし、その一方で、『焼肉ドラゴン』は単なる綺麗事ばかり描いている映画ではない。そこには、当然2018年の現在にもつながる問題意識があり、現実の世界に突きつけるものがある。

 先に述べた哲男をはじめ、劇中の登場人物は誰もが、排他的な日本社会のなかで虐げられ、そのことに絶望と怒りを抱えて生きているが、そのなかでも末っ子の時生が受ける差別はすさまじい。

 時生は私立中学に通っているが、学校では在日であることを理由にリンチを受けるなどの激しいイジメにさらされる。「キムチ」や「朝鮮帰れ」などとも言われ、耐えきれずに不登校になってしまうが、父は転校を許さなかった。時生はこれからも日本で生きていかなくてはならず、日本で生きていく限り、差別の問題から逃げることはできないと考えているからだ。

 しかし、イジメの存在を認識していながらも学校は時生を守ろうとはせず、どころか、厄介払いのように公立中学への転校を勧める始末。結局、時生は自死に追い込まれてしまう。作中で時生が受けるイジメは周囲の人の実体験を聞き取ったうえで構成されており、映画の公式パンフレットでは、鄭義信のまわりでもイジメを苦に自殺してしまった人がいると語っている。

 言うまでもなく、こういった状況は2018年現在でもなんら変わっていないものだ。「映画芸術」(編集プロダクション映芸)20184月号のインタビューで、鄭義信は<今現在もまだ「在日」に対するヘイト・スピーチは蔓延していますし、一時期は韓流ブームが起って韓国に目が向いた時期もありましたが、でもそれはネイティヴというか、韓国のKポップであったり、韓流スターだったりで、「在日」がどういう暮らしをしている人達なのかということはやっぱり全然分かってもらえていませんでした>と語っているが、差別の構図は映画の舞台となった1969年から現在にいたるまで残り続けている。

 映画『焼肉ドラゴン』の公開はまだまだ続いている。より多くの人にこの物語が愛され、差別について考える一助になってくれることを切に願う。

(倉野尾 実)

1 2

「『焼肉ドラゴン』が出自を超えて愛される理由と、出演した大泉洋の決意」のページです。などの最新ニュースは現代を思案するWezzy(ウェジー)で。