30年後の年金は当てにできる? 老後までに何とかしたい4000万!

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生き延びるためのマネー/川部紀子

 こんにちは! ファイナンシャルプランナーで社会保険労務士の川部紀子です。

 最初に新刊のお知らせです。筆者の新刊が本日発売となりました。タイトルは『まだ間に合う 老後資金4000万円をつくる!お金の貯め方・増やし方」(明日香出版社)です。年齢ごとの読み方ができる本ですが、できるだけ若いうちに読んで実行していただけるととても効果が高いです。老後資金の「現実」と「対策」が書かれています。

 さて、先日お酒の場でひどく酔った30代の女性が、年金や老後不安について語り出しました。酔った勢いも相まってか、年金への不信感を爆発させていました。聞いていて感じたのは、年金についての知識はゼロに近く、対策も立てていないので何だか心配になってしまいました。

老後資金は1億円?!

 現在、60歳代の夫婦の平均的な支出は月に約29万円、70代以降は月に約23万円です。単純にこの数字を基準に、夫婦が亡くなるまでにどのくらい支出するか計算すれば老後資金の見積もりができることになります。

 ここで問題になってくるのは、何歳まで生きるのかという問題です。この答えはもちろん誰にもわかりません。

 そこで参考にするのが「平均寿命」でしょう。現在、女性87歳、男性81歳と言われているので、この数字で計算しがちです。または、勝手に「自分はそんなに長生きしないから。」と平均寿命よりも短めに見積もる人もいるでしょう。

 でも、お金のことですからもう少し慎重に考えてみましょう。

 平均寿命の定義ですが、これはゼロ歳の時の平均余命です。つまり、不幸にして幼い頃に亡くなった方も含めての平均ということになります。既にゼロ歳ではありませんから、もっと人生は長くなるということです。自分はそんなに長生きしない、などと言う人に限って長生きする、なんてこともあります。

 実際のところ、もっとも多くの人数が亡くなる年齢は男性が87歳、女性が93歳。人生100年時代と言いますが、これは流行語でも何でもなく「現実」と考えた方が良さそうです。

 ということで、老後の夫婦の平均的支出を「平均寿命」ではなく、もう少し老後が長くなるという前提で計算してみると、約1300万円になります。

年金はいくらもらえる?

 老後に夫婦で1億円!と言われると、かなり衝撃的な金額だと思います。ただ老後が始まるまでにそれだけの金額を貯めておかなければいけないというわけではありません。2人分の年金が手に入るはずです。

 データによれば夫が平均的な会社員、妻が専業主婦だったというモデル世帯の最新年金額(月換算)は夫婦で約22万円。仮に夫が亡くなって妻が1人になってからは約13万円です。これらを2人が亡くなる頃まで計算すると、約7,300万円となります。

 老後に夫婦でかかるお金が約1300万円、もらえる年金が約7,300万円であれば、差額の約3000万円が老後資金の不足額という計算になります。この金額はどのデータで計算するかで誤差はありますが、どう計算しても3,000万円から4,000万円の間となります。現状では約3,000万円を何かの形で用意しなければ、平均的な暮らしをするには足りないということです。

これからの年金は当てにできないのか

 先にお伝えした年金額は、あくまで「現状」のものですから、これからはどうなのかが問題となります。

 少子高齢化の影響で、高齢者は増えるのに、年金を支える働き手はどんどん減っていきます。これでは、当然年金額が減ることになるでしょう。2014年に厚生労働省がこんな発表をしています。

「経済成長を見込んでも、給付水準を少しずつ下げ、30年後には今より2割ほど低くしなければならない」

 先にお伝えした年金額(約7,300万円)が単純に80%に減るとすると約5,800万円。必要なお金は1300万円から変わらないとしたら、軽く4,000万円超が足りないという計算になります(新刊のタイトルに老後資金4,000万円をつくると入っているのもこの計算によるものです)。

 つまり、年金は当てにできないと切り捨てることはできないほどありがたいものですが、完全に頼れるものでもないということです。いずれにせよ、この国の年金には「払わない」という選択肢はないわけですし、仕組みや現状を知って、その対策を立てて行動を起こす必要があるのです。老後に不安を覚える人は少なくないと思います。しかし具体的な対策を考えなければ、その不安は永遠に消えることはありません。いまある制度に不信感や不満を覚えている人こそ、まず「現実」を知って、「対策」を打つことも考えてほしいと思います。

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