
写真:ロイター/アフロ
7月15日、ニューヨークでは3,000人を超える障害者が集まり、第1回障害者プライド・パレードが開催された。パレードに参加した複数の障害者団体はそのままユニオン・スクエアにあるスターバックス前で同社の「プラスチック・ストロー廃止」への抗議集会を開く予定となっていた。
ことの起こりは7月9日にスターバックス社が、海洋の環境保全のために2020年までに世界中のスターバックスでプラスチック製ストローの使用を止めると発表したことだった。スターバックスの緑色のストローは同社のコールド・ドリンクのシンボルでもあり、大英断と言えるだろう。
スターバックスに先駆け、米国ワシントン州のシアトルでは今月1日よりプラスチック製ストローの使用が禁止されている。シアトルはスターバックス発祥の地だ。続いてニューヨーク市、サンフランシスコ、ワシントンD.C.でも同様の市条例が作られようとしている。
プラスチック製ストロー禁止が進んでいる背景には、2015年にインターネットに出回ったある映像がある。ウミガメの鼻腔からプラスチックが飛び出ている。海洋学者がペンチで引き抜こうとしても中々出てこない。鼻腔からは血が流れ、ウミガメはもがき苦しむ。最後にとうとう引き抜かれたのは、長さ20センチ近くもあるプラスチック製ストローだった。正視に耐えない痛ましい映像だった。
ニューヨーク市でストロー禁止法の導入を進めているエスピナル市議によると、米国のみに限っても年間5億本のプラスチック製ストローが使われており、リサイクルが不可能なためにほとんどが廃棄され、最終的に海に流れ出しているとのこと。海には他国で廃棄されたストローも流出しており、結果的に年間10万匹/頭もの海洋生物を死なせていると言う。
こうした背景があり、世界でもっとも大きな飲食チェーンのひとつであるスターバックスがいち早くプラスチック製ストロー全廃を決めた。スターバックスは環境問題におけるオピニオン・リーダーでもあり、マクドナルドなど他社も続く予定だと伝えられている。
スターバックス社は日曜の抗議集会の前日に障害者団体に連絡を取り、以後、団体との直接の対話によって双方にとっての打開策を探ることを伝えたため、抗議集会はキャンセルされた。
プラスチックでなければならない理由
「あなたたちにとってストローは些細な問題かもしれませんが、私たちには大問題なのです」
プラスチック製ストロー全廃の流れに対し、ニューヨーク市にある障害者団体のリーダーであり、自身も脳性麻痺患者であるシャロン・シャピロ-ラックス氏はこう語った。
スターバックスはすでに飲み口のついたコールド・ドリンク用カップを開発し、一部で使用を始めているが、カップを手で持ち、口元まで運べない障害者には使えない。こうした人々にとってストローは必需品であることからシャピロ-ラックス氏は、ストロー廃止後も「客からの要求があればストローを出す」「その告知ポスターを店内に貼る」――この2つを要求している。
その際、ストローはプラスチックでなければならないとも語っている。現在、さまざまな材質の代替ストローが販売されているが、それぞれ以下の欠点があると言う。
紙:水分を吸って弱まり、やがて崩壊する。口の中に入り、窒息を招く恐れがある。
(咀嚼や嚥下(飲み込み)機能に障害を持つ人がいる)
生分解性プラスチック:高温耐性がなく、ホットコーヒーやスープに不向き。
(とくに成人後に障害を持つこととなった人は、それ以前に温かい物を飲んでおり、引き続き楽しむ)
ステンレス、ガラス:柔軟性に欠け、曲げられない。手や口の筋肉や動作に障害がある場合、または痙攣を起こした場合、 口腔内を切る恐れがある。
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