エンタメ

宇多田ヒカルが『プロフェッショナル 仕事の流儀』で号泣した理由とは?

【この記事のキーワード】

 昨年12月、彼女は自身の歌詞を一冊の本にまとめた『宇多田ヒカルの言葉』(エムオン・エンタテインメント)という歌詞集を出版している。その「まえがき」のなかで彼女は、キャリアを通して歌詞の捉え方が変わっていったと自己分析し、自ら三つの時期に分類しているが、前述した作業過程を見た後にその文章を読むと、その意味がよりクリアに理解できる。『宇多田ヒカルの言葉』で彼女はこのように書いている。

<初期は「自分の無意識にあるものを表面にすくい上げる行為」を無意識にしていた。それを意識的に行うようになり、すくい上げるというより潜りに行くようになったのが第二期で、表現の密度も増して物書きとして新しい段階に入った手応えがあった。第三期では、活動休止とともに一個人としての止まっていた時計が動き出し、自らに課していたさまざまな検閲を取り払うことで表現の幅が広がり、それまでになく己をさらけ出すような作品もそれまでになくフィクション性の高い作品も登場する>

 「自分の無意識にあるものを表面にすくい上げる行為」というのは、すなわち「地獄のフタを開ける」ということである。難産だった「Ghost」は特にその傾向が顕著だったのかもしれないが、大なり小なり、ここで見られたような作業を彼女はずっと続けてきたのだろう。

 仕事とはいえ、精神的にかなりつらい作業に思える。しかし、彼女にとってそれは生きるためにやり続けなくてはいけない作業のようだ。番組のなかで宇多田はこのようにも語っている。

<好きでやるとか、楽しいっていうのとは、また全然違う感覚なので。苦しいときもあるけど、やらないことの方が苦しい。でも、たぶん続けないと生きていけないだろうなという気もするので>

 今回の『プロフェッショナル 仕事の流儀』で初めて宇多田ヒカルの楽曲制作風景が明かされたわけだが、その姿を見てから改めて彼女の楽曲を聴き直せば、また違った味わい方ができるだろう。

(倉野尾 実)

1 2

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。