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『あさイチ』の性教育特集で強調された「日々の積み重ねこそ大事」

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Thinstock/Photo by Oko_SwanOmurphy

 18日の『あさイチ』(NHK)で特集「どうする?子どもへの“性教育”」が組まれていた。性教育は、今年3月の東京都議会文教委員会で、自民党の古賀俊昭都議が足立区の中学校で行われていた性教育の授業が学習指導要領にそぐわないものだと指摘し、それを受けて東京都教育委員会が足立区教育委員会に指導する、という出来事があって以来、様々なメディアで取り上げられるようになっている。

 『あさイチ』では、2000年に全国平均より高かった10代の人工妊娠中絶の実施率を、県をあげた性教育の実施によって全国平均より下回ることに成功した秋田県の事例を紹介したうえで、「性教育が重要なのはわかっているけれど、どう教えればいいのかわからない」という親の不安に応える特集となっていた。

 秋田県の性教育には2本の柱があるという。ひとつは地域の産婦人科医による性教育講座。秋田県は、中学3年生にコンドームの使い方など避妊法や性感染症の予防方法について具体的な解説を行うなど、より踏み込んだ授業を医師会と連携し年間68校で実施しているそうだ。こうした取り組みは、18年前に、中絶や性感染症に悩む子どもたちを見てきた産婦人科医が件に申し入れをしたことで始まったという。

 もうひとつの柱が、教師たちへの性教育研修だ。研修の中では、「保健体育」だけではない様々な機会で子どもたちが性について意識できるように年間計画を作っている。例えば、音楽の授業で、変声期について、身体の変化に関連して話をしたり、理科や社会で、生殖活動や男女の違いを性に関することとして教えるなどしている。北海道教育大学の渡部基教授は「秋田県の性教育がうまく行ったのは、医師による性教育講座だけでなく、教師への研修があったからこそ。性教育が大事なのは日々の積み重ねであり、どこかでドンと大きくやれば済むということではない」という。『あさイチ』でも、この「日々の積み重ねこそ大事」というポイントが繰り返し言及されていた。

 ゲストの産婦人科医・上村茂仁氏は「学習指導要領はあっても、プリントを配るだけの学校から、ひとつひとつの項目について詳しく話す学校など多種多様で、先生の熱意と現状をどれだけ理解しているかにかかっている」と話す。また「学習指導要領で決められている内容をすべてちゃんとやっていれば、大きな問題はなく、高校生になった時点ですべてが話せるけれど(後述)、中学までは行われていても高校で性教育の授業がちゃんと行われていないとか、高校ではちゃんと出来たけど、中学まで出来ていないなどがある」ともいう。

 これは渡部教授の「性教育が大事なのは日々の積み重ね」という指摘に重なるところがある。結局、ある一時点で、集中的に性教育を行ったとしても、適切に理解する準備ができていなかったり、そこで得られた知識がきちんと活かされるとは限らないわけだ。なお、上村氏がいう「高校生になった時点で全て話せる」というのは、学習指導要領では、中学生までは「妊娠の経過を扱わない」とされていることを言っているのだと思われる。冒頭で紹介した、古賀都議が足立区立中学校の授業を問題視したのも、授業の中で「避妊」などの「妊娠の経過」を扱っていたからこそだった。ただし、過去の裁判で、学習指導要領には「一言一句に拘束力を有することは困難」「教育実践者に広い裁量が委ねられる」という判決がでており、必ずしも「妊娠の経過」を扱ってはいけない、というわけではない。

 とはいっても、踏み込んだ性教育を行えば、必ずと言っていいほど、保護者から文句がでてくると上村氏はいう。保護者にこそ性教育の授業を見に来てほしいが、忙しくてなかなかできない。保護者から文句が出ると、学校としてもやりづらくなってしまうというジレンマもあるようだ。学校でもカバーしきれない現状があるとすれば、家庭で何ができるか、という問題が浮かび上がってくるだろう。

 決して性教育に反対はしないのだけれど、どのように教えればいいのか、むしろ性的な関心を促してしまうのではないか、などの不安を抱く保護者は少なくない。番組内でも、交際している中3の息子に、コンドームを渡すか悩んでいたという親や、彼氏のいる娘に「ゴムをつけなさい」といったら、引いた顔をされて言い過ぎたのかと困惑した親、小5の娘が出会い系アプリを使って男子高校生と会っていたことを知ったが、どこから話せばいいのかわからない、という親などが紹介されていた。

 こうした例への感想として、身体がどうなっているのか、セックスをどうとらえればいいのか、段階を踏まえて教えないといけない。性は犯罪に巻き込まれることもある。いろはの順番を教えないと、いきなりコンドームを渡しても意味がないし、犯罪の話をいきなり初めても何がリスクなのかわからないと思う、と述べる小島慶子氏の指摘も、やはり「日々の積み重ねこそ大事」という問題を提示するものだろう。

 また小島氏は「何を言うかより、親の態度が大事。『あの、ほら、かの、かのじょと……』みたいな話し方をするとそれ自体が嫌らしくなる。真剣に話す態度が大事」と指摘もする。上村氏も同意しつつ「友達に相談されたときに、いい友達になって欲しいから、と間接的に話す形で、子どもに知識を与えるのもあり」という。話し方のコツもいろいろだ、ということだろう。しかしそれでも、子どもには反抗期もある。いつから話始めればいいのか、どこまで親の言葉を素直に聞いてくれるか、何が正解なのかわからない中で、家庭内で性教育を実践していくのはやはりハードルが高いのではないだろうか。

 番組の中では、いつから性の話をすればいいのかを悩む家庭があるとした上で、幼児期から性教育を使用とする取り組みを行っている助産師の在川有美子氏が紹介されていた。在川氏がすすめるのは「性に先入観がないうちから教える」ということだ。その中で「自分の性器を大切に扱うこと」を伝えるのも大事なポイントだという。例えば、在川氏は、講座に参加した保護者に、男性器の具体的な洗い方を子供に教えるように伝えている。幼児期に男性器の洗い方を教えることで、それが習慣になる、と考えているからだ。これもやはり「日々の積み重ねこそ大事」のひとつだろう。

 冒頭で紹介した通り、古賀都議の指摘以降、性教育についての関心が高まっている。これを機に、性教育についてより高い次元での議論が行われることが望ましいのは間違いない。しかし、忘れてはいけないのは今から15年前の2003年に「性教育バッシング」が行われ、やはり性教育への関心が高まっていた時期があった、ということだ。番組内で繰り返されていたように、性教育は「日々の積み重ねこそ大事」なものだ。いま行われている性教育に関する議論が一時的なものではなく、継続的に考えていくこと、そしてそれらへの意見をみなで発することが、「性を語ること」をより望ましいものに発展させていくのではないだろうか。

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