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独立行政法人「国立女性教育会館」は今年3月、男女のキャリア観を探る調査「男女の初期キャリア形成と活躍推進に関する調査」を発表。同調査では、2015年から金融や建設業など17社に入社した新卒者を対象に、同じ質問で毎年実施されている。3年目の今年は男女合わせて1092人から回答を得た。
調査の結果、管理職を「目指したい」と考えている入社3年目の女性社員の約4割で、男性社員の半分以下だった。女性の管理職登用が叫ばれている昨今ではあるが、男女の意欲格差がここまで開いていることは衝撃だ。
また、同調査で興味深かったのが、入社1年目の女性社員の約6割が「目指したい」と回答しているのに、2年目では約5割と減少している点だ。男性社員の回答は勤続年数が増えてもほぼ横ばいのため、女性社員だけ長く働くほど、管理職への“野心”が薄れてしまう。
なぜ女性だけ管理職を目指す気持ちが、年々萎えてしまうのだろうか? その原因のひとつに、男女間の待遇格差が挙げられそうだ。転職情報サイト「リクナビNEXT」が2014年、現役管理職の男女500人(男性250人、女性250人)を対象に実施したアンケート調査によると、男性の平均が890.6万円だったのに対し、女性の平均は618.9万円と、実に250万円近い開きが見られた。
さらに、既婚の割合は男性が85.2%、女性が52.0%。子どもの有無に関しては男性の8割は子どもが1人以上いるが、女性の半数以上は子どもがいないという結果となった。入社1年目は管理職への昇進意欲があっても、働き続けることで女性管理職の冷遇や育児と両立する難しさなどを知り、次第に思いが冷めてしまうのかもしれない。
しかし状況を打破している職場もある。滋賀県にある一般財団法人「近畿健康管理センター」はここ数年、女性管理職の割合を増やすことに成功。今年4月には29.4%となった。子育てのため7時間だけ勤務する「短時間勤務管理職」や、自宅から通える範囲で働く「エリア限定管理職」など様々なポストを導入。管理職になっても柔軟に働き続けられるよう環境を整備したことが、割合を増やせた要因と言えそうだ。
カルビー株式会社は、2009年に就任した松本会長兼CEOの指揮のもと、2010年度に社員の多様な働き方を議論する場として「ダイバーシティ委員会」を設置。2013年度には管理職を対象にした「在宅勤務制度」をスタートさせ、男女関係なく活躍できるよう取り組みを進め、2010年では6%だった女性管理職の割合を、2017年4月には24.3%まで増やした。
当然、女性管理職の数を単純に増やせば良いというわけではない。ただ、管理職を目指す女性社員が、3年間で2割も減少してしまう現状は明らかに異常だ。男女ともに、「管理職を目指したい」と考え、その資質を持つ人が、心置きなく力を発揮できる社会にしていくことが、生産性の向上にもつながるだろう。