
『二階俊博―全身政治家―』(日本僑報社)
自民党の杉田水脈議員が『新潮45』(新潮社)に寄稿したコラムで「LGBTのカップルのために税金を使うことについて賛同が得られるものでしょうか…彼ら彼女らは子供を作らない、つまり『生産性』がないのです」と書き、批判が殺到している件は、各新聞社も報道するなど、新たな展開を見せている。
自民党と協働している「一般社団法人 性的指向および性同一性に関する理解増進会(通称:LGBT理解増進会」も7月23日に緊急声明を発表。杉田議員のコラムに対し、「自民党特命委員会の考え方と全く異なっている」「国選選挙で掲げた公約にも反している」「重大な懸念を表明し、善処するよう申し入れました」としていた。
自民党は現在、LGBT理解増進法の成立に向けた取り組みをしている最中で、今回の杉田議員の発言に、どのような対応を取るのか注視されていた。たびたび保守的なジェンダー観に基づいた発言や、性的マイノリティーへの誤った知識や偏見を露呈させる議員が少なくない自民党だが、流石に今回の発言は擁護できないと判断したのだろう。
……と思った矢先、二階俊博幹事長が24日の記者会見で「人それぞれ政治的立場、いろんな人生観、考えがある」とし、杉田議員の発言を問題視しない姿勢を示したという報道が流れてきた。
朝日新聞によれば二階幹事長は「右から左まで各方面の人が集まって自民党は成り立っている。(政治的立場での)そういう発言だと理解したい」と述べた一方で「当事者が社会、職場、学校の場でつらい思いや不利益を被ることがないよう、多様性を受け入れていく社会の実現を図ることが大事だ。今後も努力していきたい」とも発言していたそうだ(杉田水脈氏の寄稿、二階幹事長「人それぞれ人生観ある」)。
様々なイシューについて、問題あるものも含め、様々な価値観があるだろう。しかし差別や人権の問題は「いろいろな人生観がある」で済ませていいものではない。それではありとあらゆる差別を「いろいろ」で片付けられてしまうことになる。
同じ自民党でも武井俊輔議員は「一部の特殊な犯罪者やテロリストを除けば、生産性のない人間などいません。劣情を煽るのは政治ではなくて単なるヘイト」と杉田議員を批判するツイートをしているし(ただし、「生産性がない」と同様に「生産性がある」と語ることの危険性についてはこちらの記事を参照)、前述の通りLGBT理解増進会も緊急声明を出してはいる。そのため二階幹事長の発言が、自民党の党としての見解かどうかはわからない。
しかし、杉田議員が<自民党に入って良かったなぁと思うこと。「ネットで叩かれてるけど、大丈夫?」とか「間違ったこと言ってないんだから、胸張ってればいいよ」とか「杉田さんはそのままでいいからね」とか、大臣クラスの方を始め、先輩方が声をかけてくださること。今回も他党の議員が私が雑誌に書いた記事を切り取りネットに出したことで色々言われています。LGBTの理解促進を担当している先輩議員が「雑誌の記事を全部読んだら、きちんと理解しているし、党の立場も配慮して言葉も選んで書いている。言葉足らずで誤解される所はあるかもしれないけど問題ないから」と、仰ってくれました。自民党の懐の深さを感じます>とツイートしていたことを考えると(現在は削除済み)、少なくない自民党議員が、この発言を問題ないと考えていることは間違いないだろう。
自民党は現在、杉田議員の発言について、党としての見解は発表していない。この発言を問題視するのか、そして杉田議員に何らかの処分を下すのか、引き続き注視していく必要がある。