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「LGBTは生産性がない」の杉田水脈議員にあらがいたいーー「意味がなかろうと価値がなかろうと、その人がその人の人生を生きる権利を奪うことは許されない」DEATHROインタビュー

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「LGBTは生産性がない」の杉田水脈議員にあらがいたいーー「意味がなかろうと価値がなかろうと、その人がその人の人生を生きる権利を奪うことは許されない」J-ROCKに乗せて政治を歌う神奈川県央No.1ロックボーカリストDEATHRO緊急インタビューの画像1

 2018年6月、RADWIMPSの「HINOMARU」が「軍歌っぽい」との批判を受け炎上した。その2カ月前にはゆずの「ガイコクジンノトモダチ」が「愛国心扇動ソング」ではないかと物議を醸している。さらにさかのぼれば、2016年にフジロック内の脱原発イベント「ザ・アトミックカフェ」にSEALDsの奥田愛基の出演が決まった際に「音楽に政治を持ち込むな」論争が巻き起こった。このように昨今、それが右であれ左であれ、特定の政治思想と音楽が絡むと面倒なことになりがちである。

 そんなご時世に、懐かしの90年代J-ROCKのビートに乗せてプロテストソングを熱く歌い上げるアーティストがいる。“神奈川県央No.1ロックボーカリスト”の異名を持つ男、DEATHRO(デスロ)だ。彼は10年以上にわたりパンク/ハードコア・シーンで活動したのち、自らのルーツである氷室京介やBOØWY、およびその系譜に連なるビートロックやビジュアル系バンドのサウンドを現代にアップデートすべく2016年にソロデビュー。以降、ライブハウスをアリーナやスタジアムに変貌させるかのようなパフォーマンスで着実にファン層を拡大している。

 そして去る7月25日にリリースされた2ndアルバム『NEUREBELL』には反ファシズム、反レイシズムといったメッセージが読み取れるほか、26日に発生から2年を迎えた相模原障害者施設殺傷事件への言及も見られる。今あえて「J-ROCKに政治を持ち込む」意味とは? DEATHRO本人を直撃した。

「LGBTは生産性がない」の杉田水脈議員にあらがいたいーー「意味がなかろうと価値がなかろうと、その人がその人の人生を生きる権利を奪うことは許されない」J-ROCKに乗せて政治を歌う神奈川県央No.1ロックボーカリストDEATHRO緊急インタビューの画像2

酷暑にもかかわらず革ジャン着用で取材に応じてくれたDEATHRO氏。

小学生の頃に姉貴に教えてもらった氷室京介やBOØWYに憧れて

――ニューアルバム『NEUREBELL』は、これまでの作品よりも政治性や社会性が色濃く出ていると感じました。それはおいおいうかがうとして、まずDEATHROさんの簡単な経歴から聞かせてください。

DEATHRO DEATHROは1984年12月30日に神奈川県愛甲郡愛川町で生まれ、そこから動くことなく今まで活動を続けています。ちなみに愛川町っていうのは厚木、海老名、綾瀬、大和、座間、相模原の一部と共に神奈川の“県央”と呼ばれるエリアに属していて。要は同じ神奈川でも横浜、横須賀、川崎、湘南とかのベイサイドではない、イナタいほうの神奈川なんですけど、この“神奈川県央のロックボーカリスト”っていうのが自分の音楽的なアイデンティティになっていますね。

――本格的に音楽活動を始めたのは、ハードコア・バンドのANGEL O.D.から?

DEATHRO そうですね。厳密にはANGEL O.D.の前身のGOLDEN-EIGHTっていうバンドに高校1年生のとき、2000年末に加入しました。で、高3ぐらいのときにNaKaZaWa SK8 Societyっていう、Less Than TV(パンク、ハードコアの音源を中心にリリースするインディーズレーベル)周辺のバンドマンがやってるスケートチームのイベントに行って河南(有治/U.G MAN)さんたちと仲良くさせてもらって。そのうち谷ぐち(順/Less Than TV代表。「FUCKER」名義でフォークシンガーとして活動する傍らDEATHROのバックバンドでギターを務める)さんから、ANGEL O.D.を最初に東京のライブに呼んでくれたLOW VISIONとスプリットCDをリリースしないかって……この話ちょっと細かすぎません?

――細かいですけど、いいですよ。

DEATHRO で、2005年にLess Than TVからCDを出したんですけど、翌年にとある理由でANGEL O.D.を脱退しまして。その一方で、2005年にCOSMIC NEUROSEっていう別のハードコア・バンドを結成してるんですけど、そちらは10年活動を続けて、2015年10月の多摩センター三角広場のライブで無期限の活動休止を宣言。翌日からソロアーティスト「DEATHRO」として活動を始めて、2016年3月11日にデビューシングル「BE MYSELF」をリリースして現在に至るっていう感じですかね。

▼DEATHRO /BE MYSELF (Music Video)

――ソロになってから、音楽性が一変しますよね。つまり、ハードコアから90年代のJ-ROCKを志向するようになりました。

DEATHRO もともと自分の音楽の原体験って、小学生の頃に姉貴に教えてもらった氷室京介さんやBOØWYで、そこからD’ERLANGERや、元D’ERLANGERの瀧川一郎さんと菊地哲さんが結成したCRAZEといったバンドにのめり込んでいったんです。もちろんパンクやハードコアには人生でもっとも大きな影響を受けているんですけどね。それは音楽だけじゃなくて、思想・信条とかも含めて。

――パンク、ハードコアは単なる音楽ジャンルではないですからね。

DEATHRO ライフスタイルだったりカルチャーだったり、人によっていろんなとらえ方がありますよね。個人的には哲学に近いとも思っていて。いずれにせよ10代後半から30歳くらいまでそこにどっぷり浸かっていたんですけど、音楽的な興味は徐々に原点回帰していったんでしょうね。

やまゆり園・障害者大量殺人の植松聖や、「LGBTは生産性がない」の杉田水脈議員にあらがいたい

――デビューシングル「BE MYSELF」リリース後、1stアルバム『PROLOGUE』(2016年12月発売)と両A面シングル「SLEEPLESS/RHAPSODY」(2017年8月発売)を経て、このたび2ndアルバム『NEUREBELL』を発表されました。

▼DEATHRO /SLEEPLESS (Music Video)

▼DEATHRO /RHAPSODY (Music Video)

DEATHRO 英語で表記すると「NEW REBEL」。ちょっと思うところがあってドイツ語にしたんですけど、「新しい形の反逆」みたいな意味を込めてます。よく「レベルミュージック」っていいますけど、正直あんまり好きじゃないんですよ。そういう音楽ってわりと「ラブ&ピース」的な思想に着地しがちじゃないですか。もちろん俺もそうありたいとは思うんですけど、それだけでは済まないというか、社会に対して怒りをぶつけなきゃいけない場面が今はあるから。

――そのような考えに至ったきっかけは?

DEATHRO いろんなことが重なってはいるんですけど、2016年の7月26日に地元の相模原で起きた津久井やまゆり園の事件(相模原障害者施設殺傷事件)は大きかったですね。自分自身が、障害のある当事者の方たちと関わっているので。ただ、俺は今は主に東京都世田谷区の方たちと関わっているんですけど、彼らやその周りの介助者たちとは事件のとらえ方がちょっと違うのかなと。

――どういうことですか?

DEATHRO あの事件って、俺の地元が持ってるいろんな負の要素が絡み合って起きてしまった気がするんです。まず神奈川県の県央では、東京の世田谷とかと比べると、障害のある人が自立するためのモデルや制度が確立されてなくて。もちろん厚木には自立生活センターもあるし、がんばってらっしゃる方もたくさんいると思うんですけど、基本、施設に入ることがゴールになってしまっている側面がある。一方で世田谷の人たちは、24時間ないしは長時間、自分でヘルパーをつけて自立生活を続けてる。だからそういうモデルがない地域には、ものすごくイヤな言い方をあえてしますけど、ある種の収容所みたいな施設がどうしても必要になってしまう。

――なるほど。

DEATHRO 植松聖被告にしても、職を転々とした結果、やまゆり園に就職して「障害者は不幸しか生み出せない」「障害者は社会に必要ない」と考えるようになってしまったんですよね。もしかしたらそれも、決して彼を擁護するわけじゃないけど、大都市に比べて郊外では生き方のモデルが限定されてしまうことと関係しているんじゃないかって。つまり大学を卒業したら定職に就いて、ある程度の年齢になったら結婚して、家を建てて、子どもを産んで……みたいな。たとえば東京とか大都市だったらそういう生き方ができない、世間からはドロップアウトしたとみなされる人たちの受け皿となる文化があったりするじゃないですか。

――確かにそうかもしれません。

DEATHRO それがない郊外には、ドロップアウトした人間が自分より力を持たない、弱い存在に対して攻撃的になってしまうような土壌があるんじゃないかと思ってて。俺が県央に拠点を置いているのは、郊外でこういう生き方をしてる奴もいるってことを示したかったのもあるし、あの事件以来、郊外から何かを発信することの意味みたいなものをより深く考えるようになりましたね。

――アルバム収録曲「…IN CHAIN…」の歌詞には「優生思想の怪物(モンスター)」という一節がありますね。これはやまゆり園の事件を想起させますが……。

DEATHRO もちろん事件と無関係ではないんですけど、なんか最近、また新しいモンスターが現れてしまったというか……自民党の杉田水脈議員が「子供をつくらないLGBTは生産性がないから支援する必要がない」という趣旨のコラムを寄稿したじゃないですか。

――アルバムは当然その一件が発覚する前に完成していたわけですから、ある種、予言的でもあります。

DEATHRO やまゆり園の事件にも、今回の杉田議員の件にも共通しているのは、“生産性のない者を社会は必要としていない”という思想なのかな。それにあらがいたいという思いは「LOST&FOUND」という曲に込めましたね。意味がなかろうと、価値がなかろうと、その人が、その人の人生を生きる権利を奪うことは誰にも許されないと。

「LGBTは生産性がない」の杉田水脈議員にあらがいたいーー「意味がなかろうと価値がなかろうと、その人がその人の人生を生きる権利を奪うことは許されない」J-ROCKに乗せて政治を歌う神奈川県央No.1ロックボーカリストDEATHRO緊急インタビューの画像3

神奈川県央から車で約2時間かけて東京まで通っているというDEATHRO氏。

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