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宝塚雪組公演『忠臣蔵』に、無毛ないし“青天女性”の究極の美しさを学ぶ

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1992年宝塚大劇場で上演された『忠臣蔵〜花に散り雪に散り〜』のパンフレット(著者提供)

【ヅカヲタ女医の「アモーレ!宝塚ショー」】第2回
『忠臣蔵~花に散り雪に散り~』

 ものすごい猛暑で始まった2018年夏、みなさまいかがお過ごしでしょうか、宝塚ファンの女医、wojoです。ワールドカップで盛り上がったのもずいぶん前のことのように感じます。が、まだひと月もたっていないんですね。ワールドカップでは屈強な選手たちの腕からのぞくタトゥーが話題になりましたが、髪型もみなさま個性的でした。やはり、広いピッチ内で判別されるためには見た目においてもほかとは違った個性が求められるのでしょうか。そしてひげ! 私wojo、普段は宝塚ばかり見ていて真の男性をまじまじと見る機会があまりないので必要以上に過敏になっているのかもしれませんが、おひげもみなさま個性的で! 素敵です。世の男性もきっと、女性並みに顔から頭にかけては気を使っておられるのでしょうね。

 そんなワールドカップを見ながら思いをはせましたのが、宝塚における男役のみなさまのおしゃれ、すなわち「美」についてです。男役は男の格好をしているが男ではない……口紅の色や目じりのラインに色気を乗せ、サッカー選手とはまた違ったアピールの仕方で、男役としての魅力を振りまいておられます。『ベルサイユのばら』のオスカル様やアンドレ様といった“ザ・男役”は、誰もが憧れる存在といえましょう。スター様が宝塚歌劇団に入りたいと思ったきっかけとして、「オスカル役の誰々様に憧れて~」などといったご発言は、よく耳にするところです。

 そんな『ベルばら』等で西洋風の耽美な世界をつくり上げる宝塚には、一方で「日本物」というジャンルがあります。そこでは男役さんは、「青天(あおてん)」というかぶり物をかぶられることがあります。青天とは、いわゆるちょんまげのカツラです。ちょ、ちょんまげ! Wojo、初めて拝見したときはびっくりしました! だって、若く美しい女性がちょんまげですよ!? いいんですか!?

 そういえば冒頭で話題にしましたひげについても……。

 今や男役さんはいたって普通に付けひげを身につけられておりますが、宝塚にはかつて、「ひげ論争」なるものが存在いたしました。1977年に宝塚グランドロマン『風と共に去りぬ』の初演に際して、レット・バトラー役の榛名由梨様が映画のクラーク・ゲーブルさながらの口ひげをつけるかどうかで物議をかもした……そんなことがあったのです。結果としてひげをつけて演じられ大成功され、今では「ひげの似合う男役になりたかった」(2018年5月に退団された月組の貴澄隼人様のご発言)というスターさんも誕生するくらい、ひげはとてもメジャーな、男役さんの色気を醸し出すためのおしゃれグッズになっております。

 しかし、青天! さすがにまさか、「青天をかぶりたいから宝塚に入った」という方はおられますまい。確かに宝塚以外の世界で女性がかぶることはほとんどなく、ゆえに女性が青天をかぶろうと思えば、宝塚に入るのがもっとも近道なのかもしれませんが……。

江戸の大工を演じた天海祐希様の、とてつもなく美しい青天姿

 そう、そういえばその昔……とてもお美しい青天姿を、雑誌「歌劇」で拝見しました。伝説の男役・天海祐希様です。1990年に上演された月組『川霧の橋』新人公演で主役を演じられ、その公演評に掲載されていたお写真です。幸次郎という江戸の大工の役でした。この天海祐希様が……とてつもなくお美しかったのです。青天とお顔が、この上なくマッチされていました。

 そして青天で極めつけといえば、1992年に宝塚雪組で上演されましたグランド・ミュージカル『忠臣蔵~花に散り雪に散り~』でしょう。題材はもちろん、歌舞伎や文楽で有名な『仮名手本忠臣蔵』。杜けあき様演じられる大石内蔵助をはじめとする赤穂四十七士が、主君である浅野内匠頭の遺恨を晴らそうとするあだ討ちの物語です。

 プロローグ、青天の赤穂浪士が大階段からずらっと下りてくるところから、まず圧巻であり、その後もほとんどの男役さんは青天! 青天でないと目立ってしまうくらい、青天が基本!! 初めこそちょっとクラクラしますが、次第に目が慣れてくると、すべてが青天、青点こそスタンダード……という世界がとてもナチュラルに感じられてきて、それと共に青天をかぶった男役さんがお美しくてたまらなく思えてきます。中でも磯貝十郎左衛門を演じられた高嶺ふぶき様は、神々しささえ伴っておられ、見ていて思わずぞくっと寒気がしてしまうほどの色気。「そういえば『ベルばら』では杜けあき様はアンドレ様やオスカル様で、高嶺ふぶき様はフェルゼン様だったな……』などという邪念も、一瞬現れるもののすぐどこかに吹き飛んでしまいます。

 青天は男役さんをさらにお美しく見せ、お美しい方をよりお美しく輝かせるものなのですね。前額部から後頭部にかけてのラインがくっきりあらわになるところが美しさの源なのかもしれません。

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wojo(ヲジョ)

都内某病院勤務のアラフォー女医。宝塚ファン歴20年で、これまでに宝塚に注いだ“愛”の総額は1000万円以上。医者としての担当は内科、宝塚のほうの担当は月組。

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