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「イタい女子」啓発で児童をSNS犯罪被害から守れるか? 児童に罪をなすりつける価値観の政府広報に疑問

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政府広報公式サイトより

 SNSをきっかけにした犯罪件数が増えている。警察庁と文部科学省が2018年に作成したリーフレット「ネットには危険もいっぱい」によれば、SNSを通じて児童ポルノや児童買春などの犯罪被害にあった子どもは年々増加しており、2017年には1813人と過去最多。Twitterが最も被害児童数が多いサイトで、695人。被害に遭った子どものうち、51.9%が高校生だという。

 また昨年、騙されたり脅されたりして自分の裸を撮影し、SNSなどで送信させられた「自画撮り」被害にあった子どもは515人と増加傾向にあり、被害にあった子どものうち、中学生が50.3%と半分以上を占めていた。

 SNSや「自画撮り」などによる子どもの被害はこれまでも注目を集めてきた。2017年には、東京都が「青少年の性的被害防止に向けた情報発信」として、「STOP JKビジネス!」というサイトを立ち上げていた(現在は閉鎖されている)。このサイトは、加害側の大人に対して警告をするのではなく、被害に遭う子どもに「自衛」を求めるものであったが、wezzyでも過去に指摘したように(JKビジネス「絶対にやっちゃダメ。」と啓発すべき対象は児童ではなく「大人たち」だ)、子ども側に自衛を求めることに終始していた。

 「ひとりで夜道を歩かないように」「露出の高い服を着ないように」など、被害に遭うことの多い女性に自衛を促す啓発はよく行われるものだ。こうした啓発は、被害に遭う可能性の高い人たちの行動を制限するようなもので、加害の抑制には全く至っていない。性犯罪が起きると「被害者側にも落ち度があった」という意見が必ず出てくるが、自衛を促せば促すほど、こうした風潮が強化されることにもなりかねない。被害者をさらに追い詰める啓発活動に、意味はあるのだろうか。

 それでもなぜか、性犯罪に関する政府の啓発活動といえば、被害者に向けたものばかりが量産される。さらに今年は、児童に自衛を促すどころか「イタい女子」などというレッテルまで貼りつける、とんでもない動画が政府広報のサイトにアップされた。

 問題の動画は、政府広報によるSNS利用の注意喚起をするサイト「気づいてSNS出会いにひそむワナ」の下部にある、政府広報とC CHANELがタイアップして作成したものだ。もちろんSNSを通じて素性の分からぬ相手と気軽に繋がり「出会う」ことの危険性を周知することは重要だが、この動画の演出はそれを知らしめる方法として適切とは言えないものだった。

 SNSの利用方法についての注意喚起を行うこの動画では、SNSで「イタい女子」が急増しているという前提で、「SNSがイライラのはけ口」「リアルタイム投稿は当たり前」「豪華&リッチな自分を見せたい」のどれかに当てはまっている人は、「イタい女子予備軍かも」と指摘。「SNSでの悪口は本人だけでなく色々な人も傷つけちゃうかも」「リアルタイム投稿で、あなたのモラルは筒抜け」と注意を促す。

 すでに十分余計なおせっかいなのだが、最後の項目の説明が特に酷い。豪華&リッチな自分を見せるため、LINEのようなSNSで、年上の男性にお金やプレゼントを貰うかわり、デートなどをする「パパ活」をしている女性の様子が映される。その後、入手したバッグを嬉しそうに肩に下げている女性に対して、「今そのお金や高価な品は本当にあなたにとって必要なもの?」と問うのだ。

 「パパ活」、古い言い回しでは「援助交際」が流行した当時から、大人の男を手玉に取り金品を巻き上げる女子児童の存在は問題視されてきた。しかしその背景に何があるのか、そこからおよそ20年の歳月が経過してもなお、政府広報の視点は深く入り込もうとはしていないようだ。

 件の動画は「子供は子供らしく」と要求しているにすぎず、リスクを負う責任を児童側に押し付けている。「パパ」になろうとする大人(成人男性)の責任は、相変わらず全く問われない。なぜこうした社会問題を取り上げる際に、女子児童だけを非のある存在として糾弾して終わりにしてしまうのだろうか。

 女子側が「イタくてカッコ悪いから止めよう」と思えば、SNSをきっかけにした犯罪は防止されるのか。それほど単純な問題であるならば、とっくに「パパ活」など消えて無くなっているだろう。この社会に蔓延る、児童を児童として扱わない価値観にこそメスを入れるべきだが、政府広報もまた児童を児童として扱っていないのだから、どうしようもない。この動画を啓発に効果的だと捉え、アップした政府広報こそ「イタい」政府だろう。

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