政治・社会

杉田水脈議員に自民党が「指導した」と発表 「問題への理解」はいかほどか

【この記事のキーワード】
杉田水脈議員に自民党が「指導した」と発表 「問題への理解」はいかほどかの画像1

杉田水脈公式サイトより

 杉田水脈衆議院議員が「新潮45」2018年8月号(新潮社)に寄稿した「LGBTカップルは生産性がないので行政が支援する必要はない」とするコラム「『LGBT』支援の度が過ぎる」について、自由民主党が「問題への理解不足と関係者への配慮を欠いた表現がある」とし「今後、十分に注意するよう指導した」と発表した。

 自民党はこれまで、杉田議員のコラムを「議員個人のもの」として問題視しない姿勢を打ち出してきた。wezzyが、自民党の「性的指向・性自認に関する特命委員会」全役員に質問状を送ったところ、事務局から「ご質問の杉田水脈衆院議員の寄稿文につきましては、議員個人としてのものと理解しております」と一括回答があったのは7月27日のこと(杉田水脈コラムについて、自民党「性的指向・性自認に関する特命委員会」全役員に質問状を送付するも…)。たった4日ほどで、立場を変えたことになる。

 今回、自民党が発表した「LGBTに関するわが党の政策について」は以下の通り。

<わが党のLGBTに関する政策については、「性的指向・性自認に関する特命委員会」において議論され、平成28年5月、「性的指向・性自認の多様なあり方を受容する社会を目指すためのわが党の基本的な考え方」が取りまとめられ、同年7月の参議院選挙及び昨年の衆議院総選挙の公約に明記されたところです。わが党は、公約に掲げたように性的な多様性を受容する社会の実現を目指し、性的指向・性自認に関する正しい理解の増進を目的とした議員立法の制定に取り組んでいます。

今回の杉田水脈議員の寄稿文に関しては、個人的な意見とは言え、問題への理解不足と関係者への配慮を欠いた表現があることも事実であり、本人には今後、十分に注意するよう指導したところです。

わが党は、今後ともこの課題について、各国の法制度等を調査研究しつつ、真摯かつ慎重に議論を進め、議員立法の制定を目指していく所存です。

皆様のご理解とご協力をお願いいたします。>

 この文書にはいくつかの疑問点がある。

 「個人的な意見とは言え」という点は自民党のこれまでの姿勢と変わりがない。しかし「問題への理解不足」や「関係者への配慮を欠いた表現」など内容の問題に触れている点は、これまでの見解より踏み込んだものになっている。なぜ立場を変更したのか、その説明がいっさいない。可能性としては、27日行われた、約5000人が参加したとされている自民党本部前での抗議デモの影響や、国内だけでなく国外メディアでも杉田議員のコラムが批判的に取り上げられつつあることなどが考えられるが、いずれにせよ「単なる火消し」として立場を変えたのか、指摘を受けたことで立場を変えたかでは、意味合いがまったく異なってくる。

 続いて「関係者への配慮を欠いた表現」という記述。「関係者」とは誰のことを指すのか。杉田議員の問題のコラムは「『LGBT』支援の度が過ぎる」という題だが、このコラムの差別性は、LGBTなど性的マイノリティだけに関わるものではない。杉田議員はコラムの中で、「子供を作らないLGBTカップルには『生産性がない』ので税金を使って支援する必要はない」という論旨の主張をしていた。杉田議員の主張に従うのであれば、「子供を作らない夫婦」も同様に「生産性がない」ということになる。

 また8月7日には、厚生労働省で「障害者と患者の尊厳ある生を守り、推進する会」(仮)が「衆議院議員 杉田水脈氏の発言は出産できない障害者や患者の人権をも踏みにじるものとして抗議します」と題した記者会見を行う予定になっている。同団体は、杉田議員のコラムは「性的マイノリティであるLGBTの人権を踏みにじるものであるばかりか、出産しない人は生産性がないから、行政的支援に値しないと断じたものであり、出産を巡り思い悩んでいる障害者(特に内部障害(難病)者)の心を深く傷つけました。社会的支援が必要な人びとに、救済の手をさしのべるべき立場にある国会議員としての適性には、大いに疑問があると言わざるを得ません」と声明文で指摘している。

 杉田議員のコラムの問題については、国民全員が「関係者」なのだ。

 さらに「配慮を欠いた表現」でなければ、同様の主張をしてもよいというわけではない。人権の問題を、あたかも表現の問題かのように誤魔化すのも不適切だ。

 最後にもう一点。今回の文書で自民党は、杉田議員に「問題への理解不足」があるとし、また「十分に注意するよう指導した」とある。杉田議員は、コラムの批判がネット上で起きた際に<「ネットで叩かれてるけど、大丈夫?」とか「間違ったこと言ってないんだから、胸張ってればいいよ」とか「杉田さんはそのままでいいからね」とか、大臣クラスの方を始め、先輩方が声をかけてくださる>とツイートしていた(現在は削除済み)。また、二階俊博幹事長も記者会見で「人それぞれ政治的立場、いろんな人生観、考えがある」と、杉田議員の発言を問題視しない姿勢を見せている。

 自民党の所属議員が意見を全員一致させている必要はない。しかし差別表現を使い、堂々と差別をした杉田議員のコラムを「問題ない」とする議員らもまた「理解不足」ではないのか。

 杉田議員は2日に所属事務所を通じて、「党性的指向・性自認に関する特命委員会 古屋圭司委員長からご指導をいただきました。真摯に受け止め、今後研鑽につとめて参りたいと存じます」とコメントを出した。

 杉田議員個人の「問題への理解不足」と「配慮を欠いた表現」という問題に矮小化するような、自民党の発表。そもそもwezzyが送付した質問状に対し、「性的指向・性自認に関する特命委員会」の古屋圭司議員からは返答がなく、事務局から一括して「議員個人としてのものと理解しております」という回答があっただけだ。つまりこれが「性的指向・性自認に関する特命委員会」の意見だということになる。いったいどんな「ご指導」があったのだろう。

 今週末には、各地で杉田議員および自民党への抗議活動が行われる予定だ。問題の本質をずらし、お茶を濁す対応に誤魔化されてはいけない。

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。