今月2日、読売新聞の報道によって、東京医科大学が医学部医学科の一般入試で、女子受験生の得点を一律に減点していたことが発覚。2010年ころからマークシート方式の一次試験で女子受験生の点数を減点し、合格者を3割前後になるよう調整していたようだ。
同大学は、前理事長の臼井正彦氏と前学長の鈴木衛氏が、文部科学省の私立大学支援事業の対象校になるよう依頼し、その見返りとして、前科学技術・学術政策局長の佐野太氏の子供を不正合格させた件でも話題になっていたばかりだ。前理事長と前学長は在宅起訴をされている。
ネット上では、東京医科大のあからさまな女性差別に驚愕する声があがる一方で、「まことしやかにささやかれていた」「前から知っていた」という声も少なくない。また「この問題は東京医科大だけではない」という指摘も出ている。
TBSニュースでは、大学で入試業務に携わっていた元幹部が取材に対し、「どこの医大でもやっている。不正という認識はなかった」「体力的にきつく、女性は外科医にならないし、へき地医療に行きたがらない。(しかし)入試を普通にやると女性が多くなってしまう」「単なる性差別の問題ではなく、日本の医学の将来に関わる問題だ」と述べたと伝えた。
女子には「習慣的な壁」も
2017年8月に、一般社団法人・日本女性医療連合理事・種部恭子氏が「女性医師を「増やさない」というガラスの天井 ~医師・医学生の女性比率に関する分析 ①~」という記事で、この問題について分析している。
種部氏によれば、大学入試学部別合格率の男女比をみると、女性の合格率が医学部だけ顕著に低くなっている。事実、他学部では女性の合格率が男性の合格率を上回っているにもかかわらず、医学部のみ女性の合格率が、男性の合格率を下回っているのだ。種部氏は分析の最後に「大学入試の成績、面接や小論文など明確な基準がない評価の内容、試験官の男女比など、見えない部分を明らかにしていく必要がある」とまとめている。
wezzyで「女子教育が世界を救う」を連載中の畠山勝太氏は、「『女子の就学率が低いのは頭が悪いから』のウソ 優秀な女子の潜在能力を活かせ!」で、日本の女子学生の理数科課目での学力は、世界的にも高く、また男女の学力を比較しても有意な差は存在していないのにもかかわらず、理系学部の女子学生が少ないのは「女子に対する習慣的な壁」が存在するのではないか、と考察している。
今回のニュースによって、種部氏の分析、そして畠山氏のいう「習慣的な壁」が、はっきりとした女性差別という形で浮き彫りになったのだ。医師たちからは「医大全体の問題」という声もあがっている。本件について、まだ調査中だという東京医科大学だけではなく、関係機関によって日本のあちこちで入試での差別が行われていないかを検証する必要があるだろう。