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東京医科大学の入試不正に現役医師の6割が理解示す 医療現場の働き方改革に「期待していない」ことも理由か

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Thinkstock/Photo by Sergey Tinyakov

 東京医科大学が一般入試の点数を操作し、女子受験生らの合格者数を抑えていた問題は、医療現場の深刻な疲弊をも浮き彫りにした。現場で働く医師の間では「確かに差別はいけないが、そうは言っても、本当に女性医師は途中離脱してしまうから……」という葛藤もあるようだ。

▼西川史子「東京医大に限らないです。全部がそうです」

 株式会社エムステージは8月8日、男女103名の医師に対して「東京医科大学の女子一律減点に関するアンケート調査」を実施。その結果、女子の一律減点を「理解できる」(18.4%)、「ある程度は理解できる」(46.6%)と、6割以上の医師が理解を示していることがわかった。

▼医師の65.0%が東京医科大学の女子一律減点に「理解できる」

「許容はできないが、やっぱりこういうこともあるのかという気持ち」
「妊娠出産での欠員を埋めるようなバックアップシステムが不十分であることも事実です」
「我々男性医師が深夜12時過ぎまで働いたり、当直の肩代わりなど、現実の負担増を考えると東京医大がやったことも必要悪として気持ちはわかる」

 このように、「理解できる」と回答した医師は、女性差別は良くないとしつつも、今回の騒動は“必要悪”と捉え“仕方なさ”や“諦め”を感じているようだ。

期待されていない医療現場の働き方改革

 今回の騒動は、大学側の明らかな不正であり、人権侵害でもある。にもかかわらず、なぜ6割以上の医師が“理解できてしまう”のだろうか? その答えは、医療現場で働き続ける中で植え付けられた、“無力感”が影響しているのかもしれない。

 同社は先月、医師101人を対象に「医師の働き方改革に関するアンケート調査」を実施しており、「医療現場に働き方改革は必要か」という設問に、「非常に必要」(20%)、「必要ではある」(52%)と7割が回答していた。ただ、「働き方改革が労働環境に良い影響を与えるか」と聞くと、「とても期待している」(2%)、「まあ期待している」(19%)は2割にとどまり、「全く期待していない」(20%)、「それほど期待していない」(41%)と6割の医師が働き方改革に期待感を抱いていないことがわかった。

▼7割の医師が「医師の働き方改革」は必要と回答。一方、8割の医師が“期待していない”

 医療現場の改善を求める医師は多いが、それと同じくらい、改善を期待できないと諦めている医師もいるようだ。「医療現場の改善は必要だけど、どうせ無理」という“無力感”が医療現場に蔓延していることが伺える。

 厚生労働省が先月に発表した「医師の働き方改革に関する意見書」の中には、

「女性医師の仕事と家庭の両立を支援し、ライフイベントで離職することなくキャリアを継続できるような効果的な施策が必要である」

という記載がある。東京医科大学のやったことは見事なまでに、この内容と逆行する“愚行”だ。

 日本医師会は<事実であるとすれば、入試の段階で男女差別が行われていたことになり、受験生に対する公平性、平等性を欠く行為><女性が働きやすい環境整備を進めることが大事>との見解を発表し、東京医科大学による真相究明と、所管省庁である文部科学省にも徹底した調査を求めている。東京医科大学は内部調査を進めており、どのような報告がなされるかが非常に注目される。

 この問題を解決に導く過程で、女性差別だけでなく、医師の過剰労働、医療者に対する患者側の過度な要求や、専門医制度の是非などなど、議論しなければならない事項は山ほど出てくるだろう。この不正発覚が、医療現場の働き方改革を前進させるものとなってほしい。

宮西瀬名

フリーライターです。ジェンダーや働き方、育児などの記事を主に執筆しています。
“共感”ではなく“納得”につながるような記事の執筆を目指し、精進の毎日です…。

twitter:@miyanishi_sena

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